246 / 697
3章
100 現状確認①
しおりを挟む
「バルコニーから見ていた時も美しいと思っていましたけれど、こうして見ると本当に素晴らしい庭園ですわ。お兄様もお義姉様の為なら中々やりますわね」
カナリーの言葉にアリシアは苦笑する。
ここはアリシアやレイヴンの部屋に面した庭園である。
カナリーは王女なので王宮のほとんどの場所へ好きに出入りすることができるが、王太子宮だけはそうはいかない。レイヴンかアリシアの許可が無ければ、ここへ立ち入ることはできないのだ。
レイヴンはクラーク伯爵家の夜会へ行った頃から連日国王の執務室へ詰めることは無くなった。
その代わりに今度は週に数回の頻度で夜会や紳士クラブへ顔を出すようになっている。
アリシアと同行できる夜会はともかく、紳士クラブへ行くのは不本意なようだがそれも社交として必要なのだから仕方がない。
それでもアリシアが起きている内に必ず帰ってくるので親しい者からは「恐妻家」やら「尻に敷かれている」やら言われているらしい。
レイヴンはアリシアに嫌われるのを何より恐れているのは間違いないし、アリシアの尻に敷かれるのなら大歓迎である。だから席を立った後に何を言われていても気にしていない。
レイヴンが夜の時間も帰ってこれる様になったので、ジェーンとのお茶会をすべて夜の時間にする必要もなくなった。
今日は明るい時間に庭園で実践形式のお茶会である。
王太子妃が主催するお茶会に招待を受け、会場に着いたところから帰るところまで、実際に必要な礼儀作法が身に着いているのか確認するのだ。
とはいえ、ジェーンは以前から必要な礼儀作法は身につけていた。問題は美しい所作を保ったまま、それが行えるのかということである。
少なくとも今のジェーンは足が上がらずに何もないところで躓いたり、手の痛みでティーカップを落とすことはない。
実践形式のお茶会で練習を積んだ後は、実際にアリシアが毎月開いているお茶会へ招待し、アルスタへ行く前に経験を積んでもらうつもりでいる。
ただ、昼間のお茶会はカナリーが学園へ通っている為参加出来ない。
ガーデンパーティーに倣ったこのお茶会にはどうしても参加したいというので、初回だけは休日にすることにした。
それはレイヴンのお気に召さず、バルコニーから恨みがましい目でこちらを見ている…。
「お兄様がグーリッド伯爵家に?」
「ええ。最近何度か訪問されたそうですわ。キャロル嬢の醜聞はあまり知られていませんが、レオナルド殿の婚約者候補から外れたことは知られていますから、その目的に皆関心を寄せているようです」
カナリーは今年学園の3年生である。
グーリッド伯爵家のディアナは1年生で学年が違う為、詳しい様子を知っているわけではないが、噂が全く耳に入ってこないわけでもない。
カナリーが聞いた話では、レオナルドが伯爵家を度々訪れていると聞きつけた級友に、どういうことかと教室で詰め寄られていたらしい。ただディアナもレオナルドの意図を理解しておらず、詰め寄ってくる級友に困るばかりだという。
伯爵家としては爵位が上の、しかも以前のことで不興を買っている公爵子息の訪問を断ることはできないのだ。
「そうなのですね。レイヴン様なら何かご存知でしょうから、後程訊いてみますわ」
アリシアは聞いたばかりの話に戸惑いながら、バルコニーのレイヴンへ視線を向ける。
アリシアと視線が合ったレイヴンは、嬉しそうに手を振っていた。
カナリーの言葉にアリシアは苦笑する。
ここはアリシアやレイヴンの部屋に面した庭園である。
カナリーは王女なので王宮のほとんどの場所へ好きに出入りすることができるが、王太子宮だけはそうはいかない。レイヴンかアリシアの許可が無ければ、ここへ立ち入ることはできないのだ。
レイヴンはクラーク伯爵家の夜会へ行った頃から連日国王の執務室へ詰めることは無くなった。
その代わりに今度は週に数回の頻度で夜会や紳士クラブへ顔を出すようになっている。
アリシアと同行できる夜会はともかく、紳士クラブへ行くのは不本意なようだがそれも社交として必要なのだから仕方がない。
それでもアリシアが起きている内に必ず帰ってくるので親しい者からは「恐妻家」やら「尻に敷かれている」やら言われているらしい。
レイヴンはアリシアに嫌われるのを何より恐れているのは間違いないし、アリシアの尻に敷かれるのなら大歓迎である。だから席を立った後に何を言われていても気にしていない。
レイヴンが夜の時間も帰ってこれる様になったので、ジェーンとのお茶会をすべて夜の時間にする必要もなくなった。
今日は明るい時間に庭園で実践形式のお茶会である。
王太子妃が主催するお茶会に招待を受け、会場に着いたところから帰るところまで、実際に必要な礼儀作法が身に着いているのか確認するのだ。
とはいえ、ジェーンは以前から必要な礼儀作法は身につけていた。問題は美しい所作を保ったまま、それが行えるのかということである。
少なくとも今のジェーンは足が上がらずに何もないところで躓いたり、手の痛みでティーカップを落とすことはない。
実践形式のお茶会で練習を積んだ後は、実際にアリシアが毎月開いているお茶会へ招待し、アルスタへ行く前に経験を積んでもらうつもりでいる。
ただ、昼間のお茶会はカナリーが学園へ通っている為参加出来ない。
ガーデンパーティーに倣ったこのお茶会にはどうしても参加したいというので、初回だけは休日にすることにした。
それはレイヴンのお気に召さず、バルコニーから恨みがましい目でこちらを見ている…。
「お兄様がグーリッド伯爵家に?」
「ええ。最近何度か訪問されたそうですわ。キャロル嬢の醜聞はあまり知られていませんが、レオナルド殿の婚約者候補から外れたことは知られていますから、その目的に皆関心を寄せているようです」
カナリーは今年学園の3年生である。
グーリッド伯爵家のディアナは1年生で学年が違う為、詳しい様子を知っているわけではないが、噂が全く耳に入ってこないわけでもない。
カナリーが聞いた話では、レオナルドが伯爵家を度々訪れていると聞きつけた級友に、どういうことかと教室で詰め寄られていたらしい。ただディアナもレオナルドの意図を理解しておらず、詰め寄ってくる級友に困るばかりだという。
伯爵家としては爵位が上の、しかも以前のことで不興を買っている公爵子息の訪問を断ることはできないのだ。
「そうなのですね。レイヴン様なら何かご存知でしょうから、後程訊いてみますわ」
アリシアは聞いたばかりの話に戸惑いながら、バルコニーのレイヴンへ視線を向ける。
アリシアと視線が合ったレイヴンは、嬉しそうに手を振っていた。
0
お気に入りに追加
1,727
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
冷徹御曹司と極上の一夜に溺れたら愛を孕みました
せいとも
恋愛
旧題:運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
神楽坂グループ傘下『田崎ホールディングス』の創業50周年パーティーが開催された。
舞台で挨拶するのは、専務の田崎悠太だ。
専務の秘書で彼女の月島さくらは、会場で挨拶を聞いていた。
そこで、今の瞬間まで彼氏だと思っていた悠太の口から、別の女性との婚約が発表された。
さくらは、訳が分からずショックを受け会場を後にする。
その様子を見ていたのが、神楽坂グループの御曹司で、社長の怜だった。
海外出張から一時帰国して、パーティーに出席していたのだ。
会場から出たさくらを追いかけ、忘れさせてやると一夜の関係をもつ。
一生をさくらと共にしようと考えていた怜と、怜とは一夜の関係だと割り切り前に進むさくらとの、長い長いすれ違いが始まる。
再会の日は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる