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3章
49 突然の訪問者③
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「大丈夫だよ、アリシア。大丈夫だから落ち着いて」
レイヴンはアリシアの髪を撫でながら何度もそう繰り返した。
腕の中のアリシアは、もう膝から降りることは諦めたようで大人しくなったけれど、体は震えている。
カナリーからは見えない様に体勢を変えてアリシアの姿を完全に隠す。
そうするとカナリーの姿は見えなくなるが、甘い態度を見せるつもりはない。
「ノティスも先触れを出さなかったというし、君たちの礼儀はどうなっているんだ。これは母上に抗議しなければならないな」
レイヴンの呆れたような言葉に、腕の中のアリシアがビクリと体を動かす。
アリシアが言いたいことはわかるけれど、これは譲ることが出来ない。
髪を撫でながら優しく言い聞かせる。
「子どもが無礼を働いたら、その親に抗議するのは当然のことだろう?」
親と言っても国王と王妃だ。
普通の貴族は王女が多少無礼を働いたところで抗議なんてしない。
だけどアリシアはもう公爵令嬢ではなく王太子妃だ。
王女だからと目こぼしされて良い存在ではない。
それに同母の妹が無礼を働き、それをレイヴンが見逃したとなると、アリシアが国王一家に蔑ろにされているという話になり、2人が不仲だという噂に信ぴょう性を与えることになる。
カナリーもそれはわかっているようで、改めて謝罪の言葉を口にした。
「お兄様の仰る通りです。大変申し訳ございませんでした」
レイヴンからは見えていないけれど、カナリーは先程から頭を下げたままだ。
自分より身分が高い者へ謝罪する時は、相手の許しがあるまで頭を上げることはできない。
そこは弁えているようで少しホッとする。
「どうかな?カナリーを許しても良いと思う?」
レイヴンが問いかけるとアリシアは胸に顔を埋めたまま何度も頷いた。
大事にしたくないという気持ちが滲み出ている。
「そう。…カナリー、アリシアは許すそうだよ。アリシアが優しくて良かったね」
「…ありがとうございます、妃殿下」
「頭を上げて良い。全くこんな時に問題を起こさないでくれ」
「はい。申し訳ありません。お兄様」
それがレイヴンの本音だとわかるカナリーは謝ることしかできなかった。
レイヴンが最近の噂で疲弊していることは知っている。
元々カナリーは、レイヴンに迷惑を掛けるつもりもなければ、アリシアを貶めようというつもりもない。
マルグリットは、アリシアがマルグリットたちとの関りを公務と捉えていると言っていた。
確かにカナリーにとっての父と母は国王と王妃で、自分や弟妹たちは王子と王女だ。公爵令嬢のアリシアが気安く接するのは難しい。
それならば一度に全員と接するのではなく、まずカナリーが仲良くなって他の家族との間に立てば良いと思った。
晩餐に来た時もレイヴンの他にもう1人、心を許せる相手がいれば違うだろうと思ったのだ。
だけど間違えてしまった。
カナリーが仲良くなろうと決めただけで、まだ2人は親しくない。
そしてカナリーには、王族である家族の中に公爵令嬢のアリシアを入れてあげようという気持ちがあったのだ。
だから先触れを出すことなど考え付きもしなかった。
アリシアが王太子妃として認められていることを何より望んでいると知っているのに。
レイヴンの背中越しに僅かに見えるアリシアは震えている。
レイヴンはアリシアの髪を撫でながら何度もそう繰り返した。
腕の中のアリシアは、もう膝から降りることは諦めたようで大人しくなったけれど、体は震えている。
カナリーからは見えない様に体勢を変えてアリシアの姿を完全に隠す。
そうするとカナリーの姿は見えなくなるが、甘い態度を見せるつもりはない。
「ノティスも先触れを出さなかったというし、君たちの礼儀はどうなっているんだ。これは母上に抗議しなければならないな」
レイヴンの呆れたような言葉に、腕の中のアリシアがビクリと体を動かす。
アリシアが言いたいことはわかるけれど、これは譲ることが出来ない。
髪を撫でながら優しく言い聞かせる。
「子どもが無礼を働いたら、その親に抗議するのは当然のことだろう?」
親と言っても国王と王妃だ。
普通の貴族は王女が多少無礼を働いたところで抗議なんてしない。
だけどアリシアはもう公爵令嬢ではなく王太子妃だ。
王女だからと目こぼしされて良い存在ではない。
それに同母の妹が無礼を働き、それをレイヴンが見逃したとなると、アリシアが国王一家に蔑ろにされているという話になり、2人が不仲だという噂に信ぴょう性を与えることになる。
カナリーもそれはわかっているようで、改めて謝罪の言葉を口にした。
「お兄様の仰る通りです。大変申し訳ございませんでした」
レイヴンからは見えていないけれど、カナリーは先程から頭を下げたままだ。
自分より身分が高い者へ謝罪する時は、相手の許しがあるまで頭を上げることはできない。
そこは弁えているようで少しホッとする。
「どうかな?カナリーを許しても良いと思う?」
レイヴンが問いかけるとアリシアは胸に顔を埋めたまま何度も頷いた。
大事にしたくないという気持ちが滲み出ている。
「そう。…カナリー、アリシアは許すそうだよ。アリシアが優しくて良かったね」
「…ありがとうございます、妃殿下」
「頭を上げて良い。全くこんな時に問題を起こさないでくれ」
「はい。申し訳ありません。お兄様」
それがレイヴンの本音だとわかるカナリーは謝ることしかできなかった。
レイヴンが最近の噂で疲弊していることは知っている。
元々カナリーは、レイヴンに迷惑を掛けるつもりもなければ、アリシアを貶めようというつもりもない。
マルグリットは、アリシアがマルグリットたちとの関りを公務と捉えていると言っていた。
確かにカナリーにとっての父と母は国王と王妃で、自分や弟妹たちは王子と王女だ。公爵令嬢のアリシアが気安く接するのは難しい。
それならば一度に全員と接するのではなく、まずカナリーが仲良くなって他の家族との間に立てば良いと思った。
晩餐に来た時もレイヴンの他にもう1人、心を許せる相手がいれば違うだろうと思ったのだ。
だけど間違えてしまった。
カナリーが仲良くなろうと決めただけで、まだ2人は親しくない。
そしてカナリーには、王族である家族の中に公爵令嬢のアリシアを入れてあげようという気持ちがあったのだ。
だから先触れを出すことなど考え付きもしなかった。
アリシアが王太子妃として認められていることを何より望んでいると知っているのに。
レイヴンの背中越しに僅かに見えるアリシアは震えている。
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