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3章
41 噂の真相①
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「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………殿下がレイヴン様のことを、…間接的にはジェーンのことも、考えて下さっているのはよくわかりました。ですが正直なところ、この一連の噂に対して、私は何もする気がありませんの」
「え?」
「殿下が今仰った噂は私も知っております。…おかしいとは思われませんか?」
「…おかしい、ですか?」
「表向きレイヴン様とジェーンの仲を騒ぎ立てているのは、女性に継承権を認めることを反対している者たちです。彼らは、『王太子殿下は情婦に惑わされている』と、レイヴン様を非難しています。ですが、ノティス殿下が仰る噂では…『ジェーンは形だけの結婚をして夫に侯爵位を継承させ、その後王太子殿下の公妾になる』と言われていますね。ジェーンの為に女性の継承権を認めさせたいレイヴン様が、ジェーンの夫に侯爵位を継承させるなんておかしいでしょう。それでは何の為に女性の継承権を認めるのかわかりません」
「あっ!!」
ノティスは声を上げた。
ノティスは2人に関する噂を様々聞いた。どれもが2人を、そしてアリシアを貶めるような内容だった。
話を聞いていく内に「何とかしなければ」という思いだけが強くなり、それ以外のことに目が向かなくなっていた。
1つ1つの内容を深く考えることはなかったのだ。
「2人の噂を言い立てているのは女性の継承権に反対する者たちです。皆がそのことを知っています。なのでどうしてもそちらに目を奪われがちになりますが、その者たちに紛れて別の目的をもって噂を広めている者たちがいる。私はそう思っています」
アリシアは扇を広げ、口元を隠して笑う。
優雅、というよりは挑戦的な笑顔だ。
「その者たちにとっては女性の継承権などどうでもいいのです。それよりも噂がセンセーショナルであればあるほど良い。だから公妾などという言葉を使ったのでしょう。ではその者たちの目的は?」
問われてノティスは息を飲んだ。
噂の表面しかみていなかったノティスは、裏に隠された目的など考えたこともなかった。
頭をフル回転させて考えてみても何も浮かんでこない。
焦っているから尚更である。
「…レイヴン殿下とアリシア様の仲を引き裂くことですわ」
暫く沈黙が続いた後、それまで黙って聞いていたジェーンが答えた。
アリシアが頷く。
「そうでしょうね。私とレイヴン様が普通の夫婦であれば、レイヴン様が私と仲の良い従姉と関係を持っているなんて許せないでしょう。きっとレイヴン様を責めるでしょうし、否定されたとしてもこれだけ噂になっていれば信じるのは難しいわ。口では信じると言ったとしても、疑心暗鬼になったでしょう。レイヴン様の行動ひとつひとつに口を出すようになったかもしれないわね。そしてレイヴン様も、そんな私にやがて嫌気がさしていく。そもそも私たちはつい最近まで上手くいってなかったのですもの」
今ならまだ2人の仲を壊すのは容易い。
そう考えた者がいるのだろう。
呆然とするノティスに、アリシアは苦笑して言い聞かせる。
「殿下、覚えておくとよろしいわ。社交界には同じことを話していても違う思惑を持った者が大勢います。彼らは今ある状況を自分の都合が良い様に最大限利用するのです」
「自分の都合が良い様に…」
「殿下は先程、ジェーンと婚約をしたらジェーンを大切にして下さると仰ったわね。いい関係を築いて、噂は間違いだったと周りの者に認めさせると仰った。殿下が仰るように、婚約をしても結婚するまでに4年あります。いつかはそうなるかもしれませんし、そうなれば良いと私も思いますわ。ですがまず世間の人たちが知るのは、殿下とジェーンが婚約をした、ということのみです。それでは先程の噂を立てていた者たちはこう言うでしょうね。『ジェーンを公妾とする為に、後ろ盾が無く立場の弱い異母弟に夫の座を押し付けた』とね」
「!!」
「その時殿下はどうされますか?」
「…………………」
「…………………」
「…………殿下がレイヴン様のことを、…間接的にはジェーンのことも、考えて下さっているのはよくわかりました。ですが正直なところ、この一連の噂に対して、私は何もする気がありませんの」
「え?」
「殿下が今仰った噂は私も知っております。…おかしいとは思われませんか?」
「…おかしい、ですか?」
「表向きレイヴン様とジェーンの仲を騒ぎ立てているのは、女性に継承権を認めることを反対している者たちです。彼らは、『王太子殿下は情婦に惑わされている』と、レイヴン様を非難しています。ですが、ノティス殿下が仰る噂では…『ジェーンは形だけの結婚をして夫に侯爵位を継承させ、その後王太子殿下の公妾になる』と言われていますね。ジェーンの為に女性の継承権を認めさせたいレイヴン様が、ジェーンの夫に侯爵位を継承させるなんておかしいでしょう。それでは何の為に女性の継承権を認めるのかわかりません」
「あっ!!」
ノティスは声を上げた。
ノティスは2人に関する噂を様々聞いた。どれもが2人を、そしてアリシアを貶めるような内容だった。
話を聞いていく内に「何とかしなければ」という思いだけが強くなり、それ以外のことに目が向かなくなっていた。
1つ1つの内容を深く考えることはなかったのだ。
「2人の噂を言い立てているのは女性の継承権に反対する者たちです。皆がそのことを知っています。なのでどうしてもそちらに目を奪われがちになりますが、その者たちに紛れて別の目的をもって噂を広めている者たちがいる。私はそう思っています」
アリシアは扇を広げ、口元を隠して笑う。
優雅、というよりは挑戦的な笑顔だ。
「その者たちにとっては女性の継承権などどうでもいいのです。それよりも噂がセンセーショナルであればあるほど良い。だから公妾などという言葉を使ったのでしょう。ではその者たちの目的は?」
問われてノティスは息を飲んだ。
噂の表面しかみていなかったノティスは、裏に隠された目的など考えたこともなかった。
頭をフル回転させて考えてみても何も浮かんでこない。
焦っているから尚更である。
「…レイヴン殿下とアリシア様の仲を引き裂くことですわ」
暫く沈黙が続いた後、それまで黙って聞いていたジェーンが答えた。
アリシアが頷く。
「そうでしょうね。私とレイヴン様が普通の夫婦であれば、レイヴン様が私と仲の良い従姉と関係を持っているなんて許せないでしょう。きっとレイヴン様を責めるでしょうし、否定されたとしてもこれだけ噂になっていれば信じるのは難しいわ。口では信じると言ったとしても、疑心暗鬼になったでしょう。レイヴン様の行動ひとつひとつに口を出すようになったかもしれないわね。そしてレイヴン様も、そんな私にやがて嫌気がさしていく。そもそも私たちはつい最近まで上手くいってなかったのですもの」
今ならまだ2人の仲を壊すのは容易い。
そう考えた者がいるのだろう。
呆然とするノティスに、アリシアは苦笑して言い聞かせる。
「殿下、覚えておくとよろしいわ。社交界には同じことを話していても違う思惑を持った者が大勢います。彼らは今ある状況を自分の都合が良い様に最大限利用するのです」
「自分の都合が良い様に…」
「殿下は先程、ジェーンと婚約をしたらジェーンを大切にして下さると仰ったわね。いい関係を築いて、噂は間違いだったと周りの者に認めさせると仰った。殿下が仰るように、婚約をしても結婚するまでに4年あります。いつかはそうなるかもしれませんし、そうなれば良いと私も思いますわ。ですがまず世間の人たちが知るのは、殿下とジェーンが婚約をした、ということのみです。それでは先程の噂を立てていた者たちはこう言うでしょうね。『ジェーンを公妾とする為に、後ろ盾が無く立場の弱い異母弟に夫の座を押し付けた』とね」
「!!」
「その時殿下はどうされますか?」
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