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3章
19 医師との再会①
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アリシアは王都の病院へ慰問に来ていた。
レイヴンに手を取られて馬車から降りる。
アリシアが町へ慰問に出るのは、あの揉めた時から数えて2回目だ。
前回はクロノスとは別の孤児院へ行ったのだが、その時もレイヴンが一緒に来てくれた。
アリシアの慰問にレイヴンが同行したのはそれが初めてであり、レイヴンが町へ出ること自体があまりないようだ。
孤児院へ行くというアリシアに、レイヴンは「これまで慰問活動はアリシアに任せていたけど、僕も彼らの暮らしや町の様子を知っていた方が良いと思うんだ」と言ったが、本当の目的にアリシアは気がついている。
孤児院へは先触れを出した時にレイヴンが同行することを伝えていた。
護衛には言われた通り王室騎士団から15人を連れて行く。
出迎えてくれたシスターたちは、それを当然のこととして受け入れていた。
子どもたちとクッキーを食べる時には当然毒見も行われる。
「疑っているわけではないけれど、決まりなんだ」
「アリシア様、申し訳ありませんでした。もっと早くに気がつくべきでした」
申し訳なさそうな様子のレイヴンに、シスターたちが恐縮している。
傍へ寄ってきた院長がアリシアへ謝罪した。
シスターたちはアリシアが結婚し、王太子妃となったことを当然知っている。成婚時のパレードも沿道から少し離れた所で子どもたちと一緒に見ていた。
だけど孤児院に現れるアリシアがそれまでのアリシアとあまりにも変わらないので、パレードで見た華やかで眩しく、遠い存在の王太子妃の姿と上手く重ならなかったのだ。
レイヴンにエスコートされるアリシアを見て、シスターたちの中で初めてアリシアと王太子妃の姿が一致した。
今後は護衛の数や飲食時の毒見も当然のこととして彼女たちは受け入れるだろう。
「ありがとうございます」
アリシアが小声で礼を言うとレイヴンは何も言わず、ただ微笑んだ。
レイヴンはアリシアが普段慰問している施設へ一通り同行するつもりでいる。
だがこの病院への同行は少し意味が違っていた。
アリシアがこの病院を訪れるのは、これが初めてだ。出迎えの者に案内されて院長室へと向かう。
院長室では院長のダンテが待っていた。
ダンテはデミオンに鞭で打たれたジェーンとアリシアを密かに治療した医師である。
当時は小さな診療所の医師だったが、アリシアが口止めの為にとアダムに多額の寄付をさせた。
そのお金でダンテは診療所を夜間も医師が常駐するような大きな病院へと改築したのだ。
院長室へ入ると、まずはダンテから出迎えに出なかったことを謝罪された。
ダンテが常に忙しくしていることを知っている2人は、気にしない様にと答える。
一息ついたところでアリシアが切り出した。
「今日はお礼を言いたくて来ました。あの時の証言をしてくださったこと、感謝しています。ありがとうございました」
頭を下げるアリシアにダンテは慌てたように腰を浮かせた。
「おやめください、妃殿下!わたしは本当のことを話しただけです。妃殿下に礼を言われるようなことはしていません!」
アリシアが頭を上げるとダンテはホッとしたように座りなおす。
「…わたしはキャンベル侯爵令嬢…ジェーン様のあの酷い状態を見て、通報するべきだと思いました。妃殿下に口外しない様にと言われた時、この様な酷い暴力を隠蔽するのかと密かに憤っていましたよ。ですが、妃殿下とマリアン様の話を聞いて、妃殿下が庇われたのが侯爵ではないことを知りました。妃殿下はご自身も怪我を負わされたのに、ジェーン様の為に隠し通すことを決め、ジェーン様のことも1人で背負われる覚悟をされていた。わたしはその妃殿下の覚悟に打たれたのです」
レイヴンに手を取られて馬車から降りる。
アリシアが町へ慰問に出るのは、あの揉めた時から数えて2回目だ。
前回はクロノスとは別の孤児院へ行ったのだが、その時もレイヴンが一緒に来てくれた。
アリシアの慰問にレイヴンが同行したのはそれが初めてであり、レイヴンが町へ出ること自体があまりないようだ。
孤児院へ行くというアリシアに、レイヴンは「これまで慰問活動はアリシアに任せていたけど、僕も彼らの暮らしや町の様子を知っていた方が良いと思うんだ」と言ったが、本当の目的にアリシアは気がついている。
孤児院へは先触れを出した時にレイヴンが同行することを伝えていた。
護衛には言われた通り王室騎士団から15人を連れて行く。
出迎えてくれたシスターたちは、それを当然のこととして受け入れていた。
子どもたちとクッキーを食べる時には当然毒見も行われる。
「疑っているわけではないけれど、決まりなんだ」
「アリシア様、申し訳ありませんでした。もっと早くに気がつくべきでした」
申し訳なさそうな様子のレイヴンに、シスターたちが恐縮している。
傍へ寄ってきた院長がアリシアへ謝罪した。
シスターたちはアリシアが結婚し、王太子妃となったことを当然知っている。成婚時のパレードも沿道から少し離れた所で子どもたちと一緒に見ていた。
だけど孤児院に現れるアリシアがそれまでのアリシアとあまりにも変わらないので、パレードで見た華やかで眩しく、遠い存在の王太子妃の姿と上手く重ならなかったのだ。
レイヴンにエスコートされるアリシアを見て、シスターたちの中で初めてアリシアと王太子妃の姿が一致した。
今後は護衛の数や飲食時の毒見も当然のこととして彼女たちは受け入れるだろう。
「ありがとうございます」
アリシアが小声で礼を言うとレイヴンは何も言わず、ただ微笑んだ。
レイヴンはアリシアが普段慰問している施設へ一通り同行するつもりでいる。
だがこの病院への同行は少し意味が違っていた。
アリシアがこの病院を訪れるのは、これが初めてだ。出迎えの者に案内されて院長室へと向かう。
院長室では院長のダンテが待っていた。
ダンテはデミオンに鞭で打たれたジェーンとアリシアを密かに治療した医師である。
当時は小さな診療所の医師だったが、アリシアが口止めの為にとアダムに多額の寄付をさせた。
そのお金でダンテは診療所を夜間も医師が常駐するような大きな病院へと改築したのだ。
院長室へ入ると、まずはダンテから出迎えに出なかったことを謝罪された。
ダンテが常に忙しくしていることを知っている2人は、気にしない様にと答える。
一息ついたところでアリシアが切り出した。
「今日はお礼を言いたくて来ました。あの時の証言をしてくださったこと、感謝しています。ありがとうございました」
頭を下げるアリシアにダンテは慌てたように腰を浮かせた。
「おやめください、妃殿下!わたしは本当のことを話しただけです。妃殿下に礼を言われるようなことはしていません!」
アリシアが頭を上げるとダンテはホッとしたように座りなおす。
「…わたしはキャンベル侯爵令嬢…ジェーン様のあの酷い状態を見て、通報するべきだと思いました。妃殿下に口外しない様にと言われた時、この様な酷い暴力を隠蔽するのかと密かに憤っていましたよ。ですが、妃殿下とマリアン様の話を聞いて、妃殿下が庇われたのが侯爵ではないことを知りました。妃殿下はご自身も怪我を負わされたのに、ジェーン様の為に隠し通すことを決め、ジェーン様のことも1人で背負われる覚悟をされていた。わたしはその妃殿下の覚悟に打たれたのです」
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