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3章
13 お茶会②
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あちらこちらのテーブルから和やかな話声が聞こえている。
王太子の突然の乱入があったが、お茶会は何事もなかったかのように続いていた。
「まあ、さすがは王妃様ですわ」
そんな声が聞こえる。
そのテーブルではマルグリットが優雅に微笑んでいた。
抱き合う王太子夫妻と頭を下げて礼の形を取る貴族たち。
そんな奇妙な姿のまま固まったように動かない――動けないアリシアたちを救ってくれたのは、いつから見ていたのか、どこから見ていたのかわからないが、マルグリットだった。
「あなたたち、随分と仲が良いわね」
そんな言葉と共に現れたマルグリットに、流石のレイヴンも驚いてアリシアから離れる。
慌てて礼をするアリシアにマルグリットは楽しそうに笑いながら、「私もお茶会に入れて頂けるかしら?」と言ったのだった。
結局レイヴンもそのままお茶会に参加することになった。
今はマルグリット、レイヴン、アリシアが其々違うテーブルについて談笑している。
情報通の夫人方は先日レイヴンとアリシアが歌劇を観に行ったことも知っていた。
アリシアはテーブルを移るたびにレイヴンとの仲の良さを羨まれることになった。
その中で様子が違う令嬢が1人いた。
キャロル・グーリッド伯爵令嬢である。
アリシアやレイヴンより2つ年上のキャロルはまだ結婚しておらず、今日は伯爵夫妻と共に参加していた。
グーリッド伯爵夫妻は大袈裟にアリシアを誉め称え、滑稽な程アリシアを持ち上げる。
夫妻と並んで座るキャロルの顔色は冴えない。
それを見ていたアリシアは、キャロルがレオナルドの婚約者候補であると悟った。
娘をレイヴンの側妃にすることを諦めた両親が、今度は娘をレオナルドの正妻にしようと狙っているのだ。
その為に妹であるアリシアの後押しが欲しいのだろう。アリシアとレオナルドの仲の良さは有名である。
だがそんな両親とは違い、キャロルの表情は沈んでいた。
キャロルは側妃の地位や権力目当ての両親とは違い、本心からレイヴンを慕っているのだろう。
だからレイヴンの側妃となることを望んでいた。
それなのに今日はレイヴンが自らアリシアを抱き締めるところを見せつけられた。
仲睦まじく2人が歌劇鑑賞をしていたことが話題になり、両親を含めた参加者たちは口々にアリシアとレイヴンの仲を羨んでいる。
キャロルが暗くなるのも仕方がない。
両親からはレイヴンを諦め、アリシアに気に入られるよう振舞えと言われているはずだ。
本来なら今日レイヴンは姿を見せないはずだった。
レイヴンがいなければキャロルももっと上手く振舞えたかもしれない。
アリシアはキャロルの様子に気がつかない振りをして次のテーブルに移った。
アリシアがしてやれることはそれだけである。
お茶会が始まってから時間が経つとテーブルを移る者が出てきた。
其々に交流を深めている。
気がつくとアリシアの隣にはマルグリットが座っていた。
アリシアが妃教育を受けていた頃は月に数回マルグリットのお茶会に呼ばれていた。
今は王妃の仕事を引き継ぐ為に月に数回マルグリットの執務室で一緒に仕事をしている。
その仕事が終わった後に一緒にお茶を飲むようになった。だけど公務のお茶会は其々で開催しているので一緒になるのは久しぶりだった。
マルグリットは優しい笑顔で色々と話し掛けてくれる。
はっきりとは口に出さないが、アリシアとレイヴンの仲を案じていたようだ。
アリシアはそれを感じ取ることが出来るようになっていた。
ふと楽し気な笑い声が耳に入った。
視線を向けるとレイヴンの隣にキャロルが座っている。
先程とは違う上気した顔でキャロルが熱心にレイヴンに話し掛けている。
レイヴンは穏やかな顔でそれに応えていた。
完璧な王太子としての顔だった。
王太子の気を引こうとする令嬢と、そつなく応える王太子。
よく目にする光景だ。
それなのに、なぜかアリシアは視線を外すことが出来なかった。
そんなアリシアの横顔を見てマルグリットがくすっと笑ったことにアリシアは気がつかなかった。
王太子の突然の乱入があったが、お茶会は何事もなかったかのように続いていた。
「まあ、さすがは王妃様ですわ」
そんな声が聞こえる。
そのテーブルではマルグリットが優雅に微笑んでいた。
抱き合う王太子夫妻と頭を下げて礼の形を取る貴族たち。
そんな奇妙な姿のまま固まったように動かない――動けないアリシアたちを救ってくれたのは、いつから見ていたのか、どこから見ていたのかわからないが、マルグリットだった。
「あなたたち、随分と仲が良いわね」
そんな言葉と共に現れたマルグリットに、流石のレイヴンも驚いてアリシアから離れる。
慌てて礼をするアリシアにマルグリットは楽しそうに笑いながら、「私もお茶会に入れて頂けるかしら?」と言ったのだった。
結局レイヴンもそのままお茶会に参加することになった。
今はマルグリット、レイヴン、アリシアが其々違うテーブルについて談笑している。
情報通の夫人方は先日レイヴンとアリシアが歌劇を観に行ったことも知っていた。
アリシアはテーブルを移るたびにレイヴンとの仲の良さを羨まれることになった。
その中で様子が違う令嬢が1人いた。
キャロル・グーリッド伯爵令嬢である。
アリシアやレイヴンより2つ年上のキャロルはまだ結婚しておらず、今日は伯爵夫妻と共に参加していた。
グーリッド伯爵夫妻は大袈裟にアリシアを誉め称え、滑稽な程アリシアを持ち上げる。
夫妻と並んで座るキャロルの顔色は冴えない。
それを見ていたアリシアは、キャロルがレオナルドの婚約者候補であると悟った。
娘をレイヴンの側妃にすることを諦めた両親が、今度は娘をレオナルドの正妻にしようと狙っているのだ。
その為に妹であるアリシアの後押しが欲しいのだろう。アリシアとレオナルドの仲の良さは有名である。
だがそんな両親とは違い、キャロルの表情は沈んでいた。
キャロルは側妃の地位や権力目当ての両親とは違い、本心からレイヴンを慕っているのだろう。
だからレイヴンの側妃となることを望んでいた。
それなのに今日はレイヴンが自らアリシアを抱き締めるところを見せつけられた。
仲睦まじく2人が歌劇鑑賞をしていたことが話題になり、両親を含めた参加者たちは口々にアリシアとレイヴンの仲を羨んでいる。
キャロルが暗くなるのも仕方がない。
両親からはレイヴンを諦め、アリシアに気に入られるよう振舞えと言われているはずだ。
本来なら今日レイヴンは姿を見せないはずだった。
レイヴンがいなければキャロルももっと上手く振舞えたかもしれない。
アリシアはキャロルの様子に気がつかない振りをして次のテーブルに移った。
アリシアがしてやれることはそれだけである。
お茶会が始まってから時間が経つとテーブルを移る者が出てきた。
其々に交流を深めている。
気がつくとアリシアの隣にはマルグリットが座っていた。
アリシアが妃教育を受けていた頃は月に数回マルグリットのお茶会に呼ばれていた。
今は王妃の仕事を引き継ぐ為に月に数回マルグリットの執務室で一緒に仕事をしている。
その仕事が終わった後に一緒にお茶を飲むようになった。だけど公務のお茶会は其々で開催しているので一緒になるのは久しぶりだった。
マルグリットは優しい笑顔で色々と話し掛けてくれる。
はっきりとは口に出さないが、アリシアとレイヴンの仲を案じていたようだ。
アリシアはそれを感じ取ることが出来るようになっていた。
ふと楽し気な笑い声が耳に入った。
視線を向けるとレイヴンの隣にキャロルが座っている。
先程とは違う上気した顔でキャロルが熱心にレイヴンに話し掛けている。
レイヴンは穏やかな顔でそれに応えていた。
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王太子の気を引こうとする令嬢と、そつなく応える王太子。
よく目にする光景だ。
それなのに、なぜかアリシアは視線を外すことが出来なかった。
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