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2章
97 疑問と答え①
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「カルヴィエ伯爵、伯爵夫人。お2人はジョッシュ殿とジェーンの関係がうまくいっていないことを知っていたはずよ。ジョッシュ殿とエミリーの噂もね。だけど息子の行いを諫めなかったのね」
「申し訳ありません」
アリシアから指摘を受けて、伯爵夫妻は身を縮ませる。
カルヴィエ伯爵夫妻は悪い人たちではない。
ただジョッシュは三男だった。
跡取りである長男、その予備となる次男の教育や動向には気を配っていたが、三男のジョッシュに対しては関心が薄く、婚約者への対応についても破談になる可能性が極めて低い相手なだけに注意を払っていなかった。
だけどこのエミリーの反応でわかったことがある。
それはこの合法的に侯爵家を簒奪しようとする企みを、エミリーが知らなかったということだ。
ジョッシュも知らなかった。
つまり侯爵家簒奪を目論むデミオンとアンジュが、2人を利用しようとしたということである。
「夫婦が望んでも、子ができないことはあるわ。だから養子をとることは法で認めています。やむを得ず、夫が他所で作った子を跡取りとすることもあるでしょう。だけど、そうなるよう意図的に仕向けるなど、とんでもないことよ。この企みは確かに違法ではないわ。今の制度上では認められてしまうことよ。だけど社会的道義に反することです。キャンベル侯爵、侯爵夫人。あなたたちは貴族としての誇りも矜持も失くしてしまったみたいね?」
マルグリットは決して声を荒げていない。
だけどその言葉には身を竦ませるような怒りが込められていた。
呆然とするエミリーへ、レイヴンが話し掛ける。
「エミリー嬢、君の耳に入っているかはわからないけど、君が使節団に選ばれた時に、僕はデミオン殿にこう言ったんだ。『彼女は未だに婚約者も決まっていないというし、学園を卒業した後どうするつもりなんだ?何か職について生活をしていくあてがあるのか?』とね」
エミリーは呆然とした表情のままレイヴンを見ている。
何を言われているのか、理解できていないようだ。
「思い返してみるといい。学園で君と同じ年代の子は、ほとんど婚約者がいるだろう?決まった相手がいない子は、学園にいる間に相手を見つけようと必死になっているはずだ。もちろん決まった相手がいない人をね。だけど君や君のご両親はどうかな?君は婚約者のいるジョッシュ殿に夢中になった。ジョッシュ殿と関係を続けていても、ジェーン嬢がいる限り君は愛人にしかなれない。本来なら現実を見るよう諭し、結婚できる相手を見つけるよう勧めるのが両親だ。だけど彼らはそれをしなかった。それは君がジョッシュ殿の愛人になることを望んでいたからだ」
「嘘よ…そんなわけないわ…」
エミリーはそう呟いたが、その言葉には既に力がなかった。
そんなエミリーにアリシアは語りかける。
「ねえエミリー。あなたはジェーンに随分辛く当たったわね。何より父親に愛されないジェーンに、父親の愛をひけらかしていたわ。私は何よりそれが許せなかった。だけど今回のことでそれは間違いだったと気がついたの。デミオン殿はあなたを愛しているふりをしていたけれど、本当は少しも愛していなかったのね」
「な、なにを言っているの…?」
エミリーの瞳が揺れた。
「申し訳ありません」
アリシアから指摘を受けて、伯爵夫妻は身を縮ませる。
カルヴィエ伯爵夫妻は悪い人たちではない。
ただジョッシュは三男だった。
跡取りである長男、その予備となる次男の教育や動向には気を配っていたが、三男のジョッシュに対しては関心が薄く、婚約者への対応についても破談になる可能性が極めて低い相手なだけに注意を払っていなかった。
だけどこのエミリーの反応でわかったことがある。
それはこの合法的に侯爵家を簒奪しようとする企みを、エミリーが知らなかったということだ。
ジョッシュも知らなかった。
つまり侯爵家簒奪を目論むデミオンとアンジュが、2人を利用しようとしたということである。
「夫婦が望んでも、子ができないことはあるわ。だから養子をとることは法で認めています。やむを得ず、夫が他所で作った子を跡取りとすることもあるでしょう。だけど、そうなるよう意図的に仕向けるなど、とんでもないことよ。この企みは確かに違法ではないわ。今の制度上では認められてしまうことよ。だけど社会的道義に反することです。キャンベル侯爵、侯爵夫人。あなたたちは貴族としての誇りも矜持も失くしてしまったみたいね?」
マルグリットは決して声を荒げていない。
だけどその言葉には身を竦ませるような怒りが込められていた。
呆然とするエミリーへ、レイヴンが話し掛ける。
「エミリー嬢、君の耳に入っているかはわからないけど、君が使節団に選ばれた時に、僕はデミオン殿にこう言ったんだ。『彼女は未だに婚約者も決まっていないというし、学園を卒業した後どうするつもりなんだ?何か職について生活をしていくあてがあるのか?』とね」
エミリーは呆然とした表情のままレイヴンを見ている。
何を言われているのか、理解できていないようだ。
「思い返してみるといい。学園で君と同じ年代の子は、ほとんど婚約者がいるだろう?決まった相手がいない子は、学園にいる間に相手を見つけようと必死になっているはずだ。もちろん決まった相手がいない人をね。だけど君や君のご両親はどうかな?君は婚約者のいるジョッシュ殿に夢中になった。ジョッシュ殿と関係を続けていても、ジェーン嬢がいる限り君は愛人にしかなれない。本来なら現実を見るよう諭し、結婚できる相手を見つけるよう勧めるのが両親だ。だけど彼らはそれをしなかった。それは君がジョッシュ殿の愛人になることを望んでいたからだ」
「嘘よ…そんなわけないわ…」
エミリーはそう呟いたが、その言葉には既に力がなかった。
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「ねえエミリー。あなたはジェーンに随分辛く当たったわね。何より父親に愛されないジェーンに、父親の愛をひけらかしていたわ。私は何よりそれが許せなかった。だけど今回のことでそれは間違いだったと気がついたの。デミオン殿はあなたを愛しているふりをしていたけれど、本当は少しも愛していなかったのね」
「な、なにを言っているの…?」
エミリーの瞳が揺れた。
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