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2章
92 ルビーの首飾り①
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1日が経つのは早く、あっという間にデミオンとアンジュを処断する日になった。
着替えを済ませたアリシアは、ふとバルコニーの向こうへ目を移す。
朝食を摂っていた時はいなかった庭師たちが花の移し替えをしているようだ。
扉を叩く音がして、レイヴンがアリシアを迎えに来た。
処断が行われるのは謁見の間だが、その前に集まることになっている。
「アリシア」
アリシアの姿を見たレイヴンは眩し気に目を細めた。
「そのドレス、よく似合っている。すごく綺麗だ」
「ありがとうございます」
今日の為にレイヴンが用意してくれたドレスだ。
アリシアがお願いをしたのは昨日なのに、よく間に合ったと思う。
レイヴンのことだから前から用意をしていてくれたのかもしれない。
レイヴンにエスコートされながら、アリシアは片手で持つには大きいケースを持っていた。
レイヴンが不思議そうに見ているが、後ろをついて来ているエレノアであっても預けるつもりはない。
部屋に入るとアダム、レオナルド、ジェーン、ロバートが待っていた。
「まあ、アリシア様………」
「美しいよ、アリシア」
アリシアの姿を見たジェーンが感嘆の溜息を吐く。
アダムとレオナルド、ロバートも目を細めている。
「ありがとうございます」
アリシアは微笑んだ。
アリシアが着ているのは紫色のドレスだ。
高貴な色とされている紫は、王族でないと着ることが出来ない。
王族でも紫を身につけることはほとんど無く、重要な式典の時だけだ。
アリシアはレイヴンに、紫色のドレスが着たいとは言っていない。
ただ、「デミオン殿に、己が誰を傷つけたのかを一目で自覚させられるようなドレスが着たい」と言っただけだ。
そうしたら今朝、朝食の前にこのドレスが届けられた。
「ロイ兄様、いらっしゃったのね」
ロバートを見たアリシアの声が弾む。
ロバートはこの2日、王宮に顔を見せなかった。
だけどロバートの所在を気にするアリシアに、レオナルドが「今はロバートが一番大変だと思うよ」と言うので、ロバートも何かこの件のことで動いているのだと思っていた。
やはり大変だったようでロバートの顔には疲労が滲んでいる。
扉を叩く音がして国王夫妻の訪れが告げられた。
アリシアたちは立ち上がり、頭を下げて2人の入室を待った。
——ノティス殿下?
許しを得て頭を上げたアリシアは、2人の後ろにいるノティスを見て驚いた。
「お待たせしてごめんなさいね」
にこやかな表情で挨拶を受けていたマルグリットが、アリシアに目を止める。
「素敵なドレスね、アリシア。とてもよく似合っているわ」
マルグリットに話し掛けられたアリシアは、ノティスからマルグリットへ意識を移す。
マルグリットが着ているドレスも、全体的には白色だが差し色に紫色が使われている。
国王とレイヴンも紫色が入ったシャツだ。
国王夫妻を差し置いてアリシアだけが紫色を着るわけにはいかない。
このドレスを用意してくれたレイヴンが、予め伝えてくれたのだろう。
「王太子殿下、妃殿下。ご挨拶が遅れて申し訳ありません」
「ノティスがジェーン嬢に会ってみたいと言うので連れて来たのよ」
国王夫妻の後ろにいたノティスが、レイヴンとアリシアの前に出てきて頭を下げる。
微笑むマルグリットは、驚いているジェーンへ顔を向けた。
「ジェーン嬢、申し訳ないけれど、ノティスにあなたのことを話したの。陛下と私が、ノティスとあなたの婚約を望んでいることや、あなたの身の上に起こったこと、あなたの体にある傷のことをね。そしてあなたが陛下や私、ノティスのことを思い遣って婚約を辞退したことも。そうしたらノティスがあなたと会ってみたいと言うの。だから紹介させてちょうだい」
その言葉に合わせて、ノティスがジェーンの方へ進み出る。
「ノティス・アナトリアです。初めまして」
「ジェーン・キャンベルと申します。お会いできて光栄です、殿下」
互いに頭を下げる2人を見て王と王妃が微笑みを浮かべる。
婚約のことはまた別の話として、実の親のことで苦労をした2人だ。分かり合えるところもあるだろう。
親交を持つのは悪いことではない。
着替えを済ませたアリシアは、ふとバルコニーの向こうへ目を移す。
朝食を摂っていた時はいなかった庭師たちが花の移し替えをしているようだ。
扉を叩く音がして、レイヴンがアリシアを迎えに来た。
処断が行われるのは謁見の間だが、その前に集まることになっている。
「アリシア」
アリシアの姿を見たレイヴンは眩し気に目を細めた。
「そのドレス、よく似合っている。すごく綺麗だ」
「ありがとうございます」
今日の為にレイヴンが用意してくれたドレスだ。
アリシアがお願いをしたのは昨日なのに、よく間に合ったと思う。
レイヴンのことだから前から用意をしていてくれたのかもしれない。
レイヴンにエスコートされながら、アリシアは片手で持つには大きいケースを持っていた。
レイヴンが不思議そうに見ているが、後ろをついて来ているエレノアであっても預けるつもりはない。
部屋に入るとアダム、レオナルド、ジェーン、ロバートが待っていた。
「まあ、アリシア様………」
「美しいよ、アリシア」
アリシアの姿を見たジェーンが感嘆の溜息を吐く。
アダムとレオナルド、ロバートも目を細めている。
「ありがとうございます」
アリシアは微笑んだ。
アリシアが着ているのは紫色のドレスだ。
高貴な色とされている紫は、王族でないと着ることが出来ない。
王族でも紫を身につけることはほとんど無く、重要な式典の時だけだ。
アリシアはレイヴンに、紫色のドレスが着たいとは言っていない。
ただ、「デミオン殿に、己が誰を傷つけたのかを一目で自覚させられるようなドレスが着たい」と言っただけだ。
そうしたら今朝、朝食の前にこのドレスが届けられた。
「ロイ兄様、いらっしゃったのね」
ロバートを見たアリシアの声が弾む。
ロバートはこの2日、王宮に顔を見せなかった。
だけどロバートの所在を気にするアリシアに、レオナルドが「今はロバートが一番大変だと思うよ」と言うので、ロバートも何かこの件のことで動いているのだと思っていた。
やはり大変だったようでロバートの顔には疲労が滲んでいる。
扉を叩く音がして国王夫妻の訪れが告げられた。
アリシアたちは立ち上がり、頭を下げて2人の入室を待った。
——ノティス殿下?
許しを得て頭を上げたアリシアは、2人の後ろにいるノティスを見て驚いた。
「お待たせしてごめんなさいね」
にこやかな表情で挨拶を受けていたマルグリットが、アリシアに目を止める。
「素敵なドレスね、アリシア。とてもよく似合っているわ」
マルグリットに話し掛けられたアリシアは、ノティスからマルグリットへ意識を移す。
マルグリットが着ているドレスも、全体的には白色だが差し色に紫色が使われている。
国王とレイヴンも紫色が入ったシャツだ。
国王夫妻を差し置いてアリシアだけが紫色を着るわけにはいかない。
このドレスを用意してくれたレイヴンが、予め伝えてくれたのだろう。
「王太子殿下、妃殿下。ご挨拶が遅れて申し訳ありません」
「ノティスがジェーン嬢に会ってみたいと言うので連れて来たのよ」
国王夫妻の後ろにいたノティスが、レイヴンとアリシアの前に出てきて頭を下げる。
微笑むマルグリットは、驚いているジェーンへ顔を向けた。
「ジェーン嬢、申し訳ないけれど、ノティスにあなたのことを話したの。陛下と私が、ノティスとあなたの婚約を望んでいることや、あなたの身の上に起こったこと、あなたの体にある傷のことをね。そしてあなたが陛下や私、ノティスのことを思い遣って婚約を辞退したことも。そうしたらノティスがあなたと会ってみたいと言うの。だから紹介させてちょうだい」
その言葉に合わせて、ノティスがジェーンの方へ進み出る。
「ノティス・アナトリアです。初めまして」
「ジェーン・キャンベルと申します。お会いできて光栄です、殿下」
互いに頭を下げる2人を見て王と王妃が微笑みを浮かべる。
婚約のことはまた別の話として、実の親のことで苦労をした2人だ。分かり合えるところもあるだろう。
親交を持つのは悪いことではない。
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