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2章
67 ジェーンの決意②
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「私は、自分が被害を受けるのは我慢をすればいいと思っていました。すべては爵位を受け継ぐ為です。母や祖母が受け継いできた爵位と領地を、私も受け継ぎ子どもに受け渡す為に、これまですべてのことに耐えてきました。ですがアリシア様は違います。アリシア様は私の大切な従妹。そのアリシア様が私の為に傷を負い、一人で重い決断をして、今までその正否を悩んで苦しんでいたのでしょう。そのすべてを父は裏切った。いえ、あんな男はもう父ではありません。絶対に許さない…!!」
ジェーンの慟哭を全員が静かに聞いていた。
胸中に浮かぶのは同じことだ。
デミオンを断罪すれば爵位が無くなる。
これまで耐えてきたことが無駄になる。
それをどうすればいい?
「…とにかくこれ以上この屋敷にジェーンを置いておくわけにはいかない。取り敢えず公爵邸に移ろう」
「いや、待ってくれ」
レオナルドをレイヴンが止めた。
ジェーンを公爵邸へ移し、通常の手順でデミオンやアンジュを告発すれば、爵位や領地を失くすことになる。
「…王宮へ連れて行き、父上と母上に相談しよう。父上も母上もジェーン嬢のことを心配している。悪いようにはしないだろう」
レオナルドがジェーンを見ると、しっかりと頷いた。
デミオンとアンジュと決別する。
しっかりと決意した眼差しだった
木戸の前までロバートがジェーンを横抱きにして進んだ。
あまり歩かせない方が良いという配慮だが、対策が決まるまでデミオンたちに警戒されない方が良い。
だから木戸から馬車まではロバートのエスコートで歩くことにした。
ジェーンがそうしたいと主張したのだ。
「なにか持っていく物はない?」
もう二度とこの屋敷に戻ることはないかもしれない。
そう思ったジェーンは、ブローチを取りに戻った。
ルトビア公爵家のブローチである。
大切な物なので外に出てくる前に部屋へ戻していた。
あの時は当然のことだと思っていたが、今は失敗だったと思う。
ジェーン1人で取りに行くのは心配なので、ロバートと護衛が3人ついて行くことになった。
アリシアはレイヴンにずっと横抱きにされていた。
アリシアは怪我をしていないし、自分で歩けると主張したが、顔を見ると泣いていたのがわかってしまう。
「アリシアの泣き顔を誰にも見せたくないんだ」
レイヴンのこれは独占欲だが、「人前で感情を露わにするなんて王太子妃として失格だ」と教えられて育ったアリシアは従うしかない。
かくしてアリシアはレイヴンの胸に顔を埋めたまま馬車まで運ばれた。
屋敷に戻ったジェーンとロバートを待つ間、レイヴンが騎乗の護衛1人を先に王宮へ戻して侍医を準備させておくよう命じていた。
そしてもう1人の護衛に、レオナルドが書いた文をルトビア公爵邸へ届けるよう命じている。
「ごめんね、アリシア。僕が知った以上、父上に知らせないわけにはいかないんだ」
そう言って謝るレオナルドを止めることはできない。
本当はあの時、アリシアが話さなければいけなかった。
そう思うとまた涙が溢れてしまう。
「ごめんなさい、お兄様。どうかマリアンのことを叱らないで。マリアンに罰を与えないで」
「…それは父上と相談しよう」
レイヴンに横抱きにされたアリシアの頬に手を伸ばし、涙を拭う。
大切に、大切にしていた妹に傷を負わせていたなんて許せない。
アリシアの涙を優しく拭いながら、レオナルドはふつふつと湧いてくる怒りを抑え込んでいた。
帰りの馬車はレイヴンとアリシアの2人と、レオナルド、ロバート、ジェーンの3人にわかれて乗った。
馬車の中でもレイヴンはアリシアを離さない。
「マリアンのことは僕も公爵にお願いするから大丈夫だよ」
アリシアの髪を撫でながらそう言い聞かせる。
レイヴンはこれまで知らなったアリシア付きの侍女の名前をやっと知ったのだ。
ジェーンの慟哭を全員が静かに聞いていた。
胸中に浮かぶのは同じことだ。
デミオンを断罪すれば爵位が無くなる。
これまで耐えてきたことが無駄になる。
それをどうすればいい?
「…とにかくこれ以上この屋敷にジェーンを置いておくわけにはいかない。取り敢えず公爵邸に移ろう」
「いや、待ってくれ」
レオナルドをレイヴンが止めた。
ジェーンを公爵邸へ移し、通常の手順でデミオンやアンジュを告発すれば、爵位や領地を失くすことになる。
「…王宮へ連れて行き、父上と母上に相談しよう。父上も母上もジェーン嬢のことを心配している。悪いようにはしないだろう」
レオナルドがジェーンを見ると、しっかりと頷いた。
デミオンとアンジュと決別する。
しっかりと決意した眼差しだった
木戸の前までロバートがジェーンを横抱きにして進んだ。
あまり歩かせない方が良いという配慮だが、対策が決まるまでデミオンたちに警戒されない方が良い。
だから木戸から馬車まではロバートのエスコートで歩くことにした。
ジェーンがそうしたいと主張したのだ。
「なにか持っていく物はない?」
もう二度とこの屋敷に戻ることはないかもしれない。
そう思ったジェーンは、ブローチを取りに戻った。
ルトビア公爵家のブローチである。
大切な物なので外に出てくる前に部屋へ戻していた。
あの時は当然のことだと思っていたが、今は失敗だったと思う。
ジェーン1人で取りに行くのは心配なので、ロバートと護衛が3人ついて行くことになった。
アリシアはレイヴンにずっと横抱きにされていた。
アリシアは怪我をしていないし、自分で歩けると主張したが、顔を見ると泣いていたのがわかってしまう。
「アリシアの泣き顔を誰にも見せたくないんだ」
レイヴンのこれは独占欲だが、「人前で感情を露わにするなんて王太子妃として失格だ」と教えられて育ったアリシアは従うしかない。
かくしてアリシアはレイヴンの胸に顔を埋めたまま馬車まで運ばれた。
屋敷に戻ったジェーンとロバートを待つ間、レイヴンが騎乗の護衛1人を先に王宮へ戻して侍医を準備させておくよう命じていた。
そしてもう1人の護衛に、レオナルドが書いた文をルトビア公爵邸へ届けるよう命じている。
「ごめんね、アリシア。僕が知った以上、父上に知らせないわけにはいかないんだ」
そう言って謝るレオナルドを止めることはできない。
本当はあの時、アリシアが話さなければいけなかった。
そう思うとまた涙が溢れてしまう。
「ごめんなさい、お兄様。どうかマリアンのことを叱らないで。マリアンに罰を与えないで」
「…それは父上と相談しよう」
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大切に、大切にしていた妹に傷を負わせていたなんて許せない。
アリシアの涙を優しく拭いながら、レオナルドはふつふつと湧いてくる怒りを抑え込んでいた。
帰りの馬車はレイヴンとアリシアの2人と、レオナルド、ロバート、ジェーンの3人にわかれて乗った。
馬車の中でもレイヴンはアリシアを離さない。
「マリアンのことは僕も公爵にお願いするから大丈夫だよ」
アリシアの髪を撫でながらそう言い聞かせる。
レイヴンはこれまで知らなったアリシア付きの侍女の名前をやっと知ったのだ。
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