【本編完結】幸福のかたち【R18】

2章

58 アリシアたちの後悔②

「アリシアは休みの日をほとんど寝て過ごすようになりました。僕はアリシアが目を覚ました時に誰も傍にいないのは可哀想で、アリシアの傍を離れることができませんでした」

「私は寝てばかりいたのですから、お兄様にジェーンのところへ行くようお願いすれば良かったのです。それなのに私は甘えてしまって…。目が覚めた時にお兄様がいてくださるのが嬉しくて、お兄様にジェーンのところへ行って欲しいと言うことができませんでした」

　同じ部屋で過ごしていても、アリシアは寝ているのだから一緒に何かをしていたわけではない。
　ただレオナルドは、アリシアが目を覚ました時にベッドの上から目に入る場所にいつも居てくれた。
　本を読んでいたり勉強をしていたりしていたレオナルドは、アリシアが目を覚ますとすぐに気がついてくれて、水を飲ませてくれたり楽しいお話をしてくれた。
　そのお話を聞きながらアリシアはまた眠るのだ。

　だけどアリシアやレオナルドがそうして過ごしていることで、ロバートも侯爵邸へ訪れることができなくなっていた。

　デミオンやアンジュは伯爵家の息子であるロバートを格下の相手として見下している。
　アリシアとレオナルドがいる時はそんな素振りを見せないが、ロバートが1人で訪れても蔑んだ目で見られるだけで、ロバートの存在がジェーンを守ることはできなかった。
　身分差を出されてしまえば、ロバートがデミオンに逆らうことはできない。
　また、ジェーンにはジョッシュという婚約者がいる為、たとえ従兄といえども異性であるロバートが度々1人で侯爵邸を訪れるのは憚られた。
　こうして４人の距離が少し離れてしまったのだ。

　それでも全く訪問しなくなったわけではない。
　ロバートと連絡を取り合い、アリシアに外出をする余裕がある時は、これまでと同じように３人で訪れていた。

　そしてアリシアは、ジェーンがサイズの合わないドレスを着ていることに気がついた。
　エミリーが興味を示さなかったことでジェーンの元に残っていた僅かなドレスも、ジェーンの成長と共にサイズが合わなくなっていたのだ。

　裾が短くなっていたり、背中のボタンが留まりきらずに開いているところを変にリボンで隠したりしていた。
　それはアリシアたちの目を誤魔化すための悪あがきだ。
　アリシアたちがいない時はどんな格好をさせられているのかと思うと胸が痛んだ。

　当然それはアリシアからアダムへ伝えられ、デミオンはアダムに叱責される。
　アダムはデミオンに、ジェーンとエミリーを比べることなく平等に育てるよう厳しく言い渡し、デミオンもその場では頷くのだが、ジェーンへの対応が変わることはなかった。

　同様のことが何度も繰り返され、アダムは一時的に諦めた。
　アダムが叱責した時だけ一時的に改善されたり、アリシアたちが訪れる時だけ表面的に繕われても意味がないのだ。

　アダムはもっと根本的な改善を迫れる機会を待つことにし、ジェーンにはオレリアからエミリーの興味を引かないような質素なドレスが届けられるようになった。