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2章
24 侯爵位簒奪計画①
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ジョッシュが侯爵家の跡取りとして婿入りすることに決まっていても、結婚するまでは他家の人間である。
それなのにジョッシュは、もうこの家の当主にでもなったかのように振舞い、レイヴンたちをもてなそうとしている。
その振る舞いに不快感が湧き上がるけれど、この部屋に留まっていても不愉快なのは変わりない。
アリシアたちは応接間へ移ることにした。
アリシアはレイヴンに繋がれたままの手に力を込めた。レイヴンも何かを感じたようで、ぎゅっと握り返してくれる。
そのまま手を繋いで歩く。
応接間では、ジョッシュが当然の様にジェーンの隣に座った。
テーブルを挟んで2人と向かい合う位置にレイヴンとアリシアが座り、レオナルドとロバートは側面のソファに座座る。
5人の護衛たちは、レイヴンとアリシアの後ろに並んでいた。
護衛が放つ威圧感にジョッシュは気圧されたようだ。
しばらくは誰もが無言でお茶を口に運んでいた。
「ジェーン、あなたにお願いがあるの」
重苦しい沈黙を破ったのはアリシアだった。
思い詰めたような顔をしている。
「エミリーが使節団から抜けて欠員ができてしまったの。今から新しい人を選考している時間は無いわ。だからあなたにお願いしたいの。学園での成績は知っているわ。あなたなら今から研修に入ってもついていけるでしょう」
「アリシア様、それは…」
ジェーンが戸惑いの表情を浮かべた。
結婚式は2か月後に迫っている。アリシアは当然それを知っていて言っているのだ。
言葉にされた以上の理由があるのだと察せられた。
「お願いよ、ジェーン。あなたにしか頼めないの」
アリシアが頭を下げると、ジェーンは驚いて声を上げた。
「おやめください、アリシア様!妃殿下が私などに頭を下げてはいけません!」
それでもアリシアは頭を下げたままだった。
レイヴンたちは言葉を挟まず、成り行きを見守ってくれている。
「ちょっと待ってくださいよ!ジェーンはもうすぐ僕と結婚するんです!アルスタになんて行けませんよ!」
言葉を挟んだのは、やはり己の立場を理解していないジョッシュだった。
「――君は誰に許可を得て発言しているのかな?」
レイヴンの冷ややかな声にジョッシュはビクッと体を震わせたが、自分に非があるとは思わなかったようだ。
不満そうな顔で言い募ろうとする。
「ですが、妃殿下が仰るのはあまりにも勝手なことでーー」
「まだ勝手に喋るのか」
レイヴンの怒気を含んだ声に遮られて、ジョッシュは今度こそ口を噤んだ。
頭を上げたアリシアは冷ややかにジョッシュを見る。
アリシアが今日ジョッシュに視線を向けたのはこれが初めてだった。
「あなた、どなたかしら」
アリシアの言葉にジョッシュは顔を赤くする。
馬鹿にされているのは感じ取れるらしい。
「カルヴィエ伯爵家のジョッシュ・カルヴィエです!ジェーンの婚約者ですよ!」
「そんなはずはないわ」
「何おかしなことを言っているの?」と、アリシアはさも驚いたように目を丸くする。
ここで止めておけば良かったのに、察しの悪いジョッシュは顔を歪めて笑った。
「妃殿下には何度もお目に掛っていますのに、覚えていただけませんでしたか」
「ええ。あなたがジェーンの婚約者であるはずがないわ。エミリーの恋人にしか見えないもの」
「!!」
ジョッシュは息をのんだ。
レイヴンたちの態度が冷たい理由に初めて気がついたのだ。
玄関ホールでレイヴンたちを出迎えたジョッシュは、エミリーの肩を抱いていた。
この男は、この邸でいつもああして過ごしているのだろう。
普段の振る舞いが自然と出ていて、それがおかしなことだと思わないのだ。
「確かにとてもジェーン嬢の婚約者には見えなかったな」
「あれはーー王宮で辛い目にあった挙句処罰を受けたエミリー嬢を、姉君の婚約者として慰めていただけですよ」
レイヴンの視線から逃れるようにジョッシュが視線を逸らす。
さすがに自身の行いが不味かったのだと気づいたようだ。
「皆さま、既にすべてをご存知なのですね。そしてこのまま結婚しても、幸せにはなれないと思ってらっしゃるのですね」
「ジェーン、なにを!」
「わかりますわ。だって私が一番、そう思っていますもの」
それなのにジョッシュは、もうこの家の当主にでもなったかのように振舞い、レイヴンたちをもてなそうとしている。
その振る舞いに不快感が湧き上がるけれど、この部屋に留まっていても不愉快なのは変わりない。
アリシアたちは応接間へ移ることにした。
アリシアはレイヴンに繋がれたままの手に力を込めた。レイヴンも何かを感じたようで、ぎゅっと握り返してくれる。
そのまま手を繋いで歩く。
応接間では、ジョッシュが当然の様にジェーンの隣に座った。
テーブルを挟んで2人と向かい合う位置にレイヴンとアリシアが座り、レオナルドとロバートは側面のソファに座座る。
5人の護衛たちは、レイヴンとアリシアの後ろに並んでいた。
護衛が放つ威圧感にジョッシュは気圧されたようだ。
しばらくは誰もが無言でお茶を口に運んでいた。
「ジェーン、あなたにお願いがあるの」
重苦しい沈黙を破ったのはアリシアだった。
思い詰めたような顔をしている。
「エミリーが使節団から抜けて欠員ができてしまったの。今から新しい人を選考している時間は無いわ。だからあなたにお願いしたいの。学園での成績は知っているわ。あなたなら今から研修に入ってもついていけるでしょう」
「アリシア様、それは…」
ジェーンが戸惑いの表情を浮かべた。
結婚式は2か月後に迫っている。アリシアは当然それを知っていて言っているのだ。
言葉にされた以上の理由があるのだと察せられた。
「お願いよ、ジェーン。あなたにしか頼めないの」
アリシアが頭を下げると、ジェーンは驚いて声を上げた。
「おやめください、アリシア様!妃殿下が私などに頭を下げてはいけません!」
それでもアリシアは頭を下げたままだった。
レイヴンたちは言葉を挟まず、成り行きを見守ってくれている。
「ちょっと待ってくださいよ!ジェーンはもうすぐ僕と結婚するんです!アルスタになんて行けませんよ!」
言葉を挟んだのは、やはり己の立場を理解していないジョッシュだった。
「――君は誰に許可を得て発言しているのかな?」
レイヴンの冷ややかな声にジョッシュはビクッと体を震わせたが、自分に非があるとは思わなかったようだ。
不満そうな顔で言い募ろうとする。
「ですが、妃殿下が仰るのはあまりにも勝手なことでーー」
「まだ勝手に喋るのか」
レイヴンの怒気を含んだ声に遮られて、ジョッシュは今度こそ口を噤んだ。
頭を上げたアリシアは冷ややかにジョッシュを見る。
アリシアが今日ジョッシュに視線を向けたのはこれが初めてだった。
「あなた、どなたかしら」
アリシアの言葉にジョッシュは顔を赤くする。
馬鹿にされているのは感じ取れるらしい。
「カルヴィエ伯爵家のジョッシュ・カルヴィエです!ジェーンの婚約者ですよ!」
「そんなはずはないわ」
「何おかしなことを言っているの?」と、アリシアはさも驚いたように目を丸くする。
ここで止めておけば良かったのに、察しの悪いジョッシュは顔を歪めて笑った。
「妃殿下には何度もお目に掛っていますのに、覚えていただけませんでしたか」
「ええ。あなたがジェーンの婚約者であるはずがないわ。エミリーの恋人にしか見えないもの」
「!!」
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「確かにとてもジェーン嬢の婚約者には見えなかったな」
「あれはーー王宮で辛い目にあった挙句処罰を受けたエミリー嬢を、姉君の婚約者として慰めていただけですよ」
レイヴンの視線から逃れるようにジョッシュが視線を逸らす。
さすがに自身の行いが不味かったのだと気づいたようだ。
「皆さま、既にすべてをご存知なのですね。そしてこのまま結婚しても、幸せにはなれないと思ってらっしゃるのですね」
「ジェーン、なにを!」
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