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2章
13 招かざる客①
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仮初めの平穏はひと月しかもたなかった。
デミオンとアンジュが面会を求めて王宮へ来ているという。
その知らせをアリシアはレイヴンから聞いた。
アリシアの周囲を常に警戒しているレイヴンは、不審な来客があった場合、すぐに報告するよう命じていたらしい。
デミオンはアリシアの叔父なのだが、王宮では危険人物だと認識されているということか。
「どうする?嫌なら会わなくていい」
「大丈夫です。会いますわ」
心配そうなレイヴンに、アリシアはにっこり笑って答えた。
多少嫌な思いをすることになるが、それは仕方のないことだ。
レイヴンは2人を王太子宮には入れずに、執務棟にある応接間で待たせていた。
2人の用件は分かり切っている。エミリーを使節団から外せというのだ。
応接間で待っていた2人は、相変わらず趣味の悪いゴテゴテした衣装を身につけていた。
大きな石がついた指輪を両手にいくつもつけているし、髪飾りも首飾りも腕輪まで、太い金色の細工に色のはっきりした大きな石がついている。
値の張るものなのだろうが、悪趣味としか思えない。
ルトビア公爵家では、両親も祖父母も質のいいシンプルなものを好んでいた。
デミオンは仮にも同じ公爵家出身なのに、なぜこうも悪趣味なのか。
昼間なのに大きく胸元が開いた派手な柄のドレスは、品のないアンジュによく似合っているのだが。
「それで、僕の妃になんの用かな?」
当然の様についてきたレイヴンが訊いた。
表情はにこやかなのに凄みがある。
「今日は慈悲を乞いに参りました。可哀想なエミリーは過度な講義を受け憔悴しています。どうか使節団から抜けさせてください」
デミオンが哀れっぽく頭を下げる。
使節団は他国との交流、友好関係維持を目的に国から派遣される外交官で、国としても重要なものだ。
その国から任じられた役目を、「研修が辛い」という理由で辞退できると本当に思っているのだろうか。
辞退が許されるのは遅くても研修が始まるまでだ。
これが侯爵夫妻なのかと思うと溜息が出る。
「おかしなことを仰いますのね?殿下の慈悲があってこそ使節団へ加入できましたのに、慈悲をもって辞めさせてほしいだなんて」
おかしそうにアリシアが笑うと、アンジュが睨みつけてきた。
礼儀を知らない女である。
「あの子は苦しんでいます!研修と称して酷い扱いを受けていると泣いていました!何時間もダンスのレッスンをさせられて足がぼろぼろになったり、何時間もの勉強で休む暇もないとか!アルスタ語にアルスタの歴史など、何の役に立つのです!」
「…エミリー嬢はアルスタへ行くのだが?」
アルスタへ行く使節団がその国の言葉も話せず、歴史も知らないなど話にならない。
同時にアナトリアの代表でもあるので、それに相応しく振舞えるよう礼儀やマナーの時間もある。当然アナトリアの歴史の講義もある。
「あの子は勉強が嫌いなのです!それなのに何時間も監禁状態で勉強を強要するなんて!」
「…研修を受けているのはエミリー嬢だけではない。使節団に選ばれた者は皆同じ部屋で勉学に励んでいる」
レイヴンの声は冷たく、硬い。
友好的な振りをするのは止めたようだ。
デミオンとアンジュが面会を求めて王宮へ来ているという。
その知らせをアリシアはレイヴンから聞いた。
アリシアの周囲を常に警戒しているレイヴンは、不審な来客があった場合、すぐに報告するよう命じていたらしい。
デミオンはアリシアの叔父なのだが、王宮では危険人物だと認識されているということか。
「どうする?嫌なら会わなくていい」
「大丈夫です。会いますわ」
心配そうなレイヴンに、アリシアはにっこり笑って答えた。
多少嫌な思いをすることになるが、それは仕方のないことだ。
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2人の用件は分かり切っている。エミリーを使節団から外せというのだ。
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大きな石がついた指輪を両手にいくつもつけているし、髪飾りも首飾りも腕輪まで、太い金色の細工に色のはっきりした大きな石がついている。
値の張るものなのだろうが、悪趣味としか思えない。
ルトビア公爵家では、両親も祖父母も質のいいシンプルなものを好んでいた。
デミオンは仮にも同じ公爵家出身なのに、なぜこうも悪趣味なのか。
昼間なのに大きく胸元が開いた派手な柄のドレスは、品のないアンジュによく似合っているのだが。
「それで、僕の妃になんの用かな?」
当然の様についてきたレイヴンが訊いた。
表情はにこやかなのに凄みがある。
「今日は慈悲を乞いに参りました。可哀想なエミリーは過度な講義を受け憔悴しています。どうか使節団から抜けさせてください」
デミオンが哀れっぽく頭を下げる。
使節団は他国との交流、友好関係維持を目的に国から派遣される外交官で、国としても重要なものだ。
その国から任じられた役目を、「研修が辛い」という理由で辞退できると本当に思っているのだろうか。
辞退が許されるのは遅くても研修が始まるまでだ。
これが侯爵夫妻なのかと思うと溜息が出る。
「おかしなことを仰いますのね?殿下の慈悲があってこそ使節団へ加入できましたのに、慈悲をもって辞めさせてほしいだなんて」
おかしそうにアリシアが笑うと、アンジュが睨みつけてきた。
礼儀を知らない女である。
「あの子は苦しんでいます!研修と称して酷い扱いを受けていると泣いていました!何時間もダンスのレッスンをさせられて足がぼろぼろになったり、何時間もの勉強で休む暇もないとか!アルスタ語にアルスタの歴史など、何の役に立つのです!」
「…エミリー嬢はアルスタへ行くのだが?」
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同時にアナトリアの代表でもあるので、それに相応しく振舞えるよう礼儀やマナーの時間もある。当然アナトリアの歴史の講義もある。
「あの子は勉強が嫌いなのです!それなのに何時間も監禁状態で勉強を強要するなんて!」
「…研修を受けているのはエミリー嬢だけではない。使節団に選ばれた者は皆同じ部屋で勉学に励んでいる」
レイヴンの声は冷たく、硬い。
友好的な振りをするのは止めたようだ。
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