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33.オアシス
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…ゴクッゴクッ。
コローナの喉が大きく鳴る。
「ハーッ、生き返るー!」
盗賊たちが乗ってた馬車の荷台には、大量の水と食料が積まれていた。
おそらく全部盗品だと思うが、この際少しくらいもらってもバチは当たらないだろう。
失敬して二人分いただく。
限界まで渇いた体に水分が染み渡る。
「こんなに普通の水が美味しいと思ったの初めてだよ」
さっきまで静かだったコローナも、たちまち元気になってしゃべりだした。
もうエネルギー消費を抑える必要もなくなったしね。
馬車がまるごと手に入ったから、ここからは馬車に乗って街を目指せる。
速いし、その辺に出てくる魔物との戦闘時以外動かなくていいしで、移動が一気にラクになった。
「とりあえず盗賊たちが来た方に戻ってみればいいよね?」
「うん、そうだねー」
この辺りで盗賊たちが水とか食料とかを調達できるとしたら、街か運送中の業者みたいな人から奪ったくらいしかないだろう。
だから盗賊たちの来た方に向かえば、街に到着できる確率は上がる。
仮に業者から奪ってた場合でも、運搬業者が通るルートみたいのを見つけられれば、人と遭遇できる可能性は高い。
まぁどっちにしろ、今俺たちが街を目指す唯一の手がかりがコレだけなので、ひとまずは向かってみることに決めた。
◇ ◇ ◇
「お、あれ街っぽくない?」
途中途中で魔物を倒しながら、しばらく馬車に揺られていると、ついに街らしきものが見えてきた。
近づいていくと、どっちかと言うと街というより村って感じだけど、やっぱり人のいる場所だった。
「ああーーーっ!!!」
馬車のまま街に入ろうとすると、突然、馬車の外から大声で叫ぶ声が聞こえた。
「あの馬車あたしたちのじゃないか! みんな、何でか知らないけど盗賊どもが戻ってきたぞー!」
「なにーっ!」
若い女性の声がかかったと思うと、一瞬のうちに20人ほどに馬車の周りを囲まれる。
「やい、盗賊ども。何考えて戻ってきたのか知らんけど、あたしたちは自分の馬車くらい見分けつかんだよ。大人しく出てきな」
あー、だいたい理解した。
この人たちがこの馬車の元の持ち主ってことか。
あの盗賊たち、中身だけかと思ったら馬車ごと盗んでたのね。
「テオくん、どうしよう?」
「まぁひとまず外出て説明するしかないね」
両手を上げて抵抗する気がないのをアピールしながら幕の外に出る。
「あの、俺たち……」
「あれ、この人たちさっきの盗賊たちじゃないな」
どうやら声を出してた女性がさっきの盗賊たちの顔を覚えてたみたいだ。
まだ俺たちが盗賊の仲間って懸念は残ってるだろうけど、それなら話くらいは聞いてもらえそうだ。
「俺たち、砂漠でさまよってたらこの馬車に乗った盗賊たちと遭遇したんですけど……」
それから数分間、ここまでの状況を説明していく。
「……なるほど、話の筋は通ってるね。盗賊どもの仲間だったら、わざわざ戻ってくる意味もないし……」
よかった、とりあえずは信じてもらえたようだ。
「疑って悪かったね。取り返してくれてありがとう」
「いえいえ、中の食料とかもらっちゃってすみません」
「いやいや、全然いいよ。そもそも取り返してもらえてなかったら、それも含めて全部戻ってこなかったんだもの。むしろもっとお礼しなきゃいけないくらいだよ」
そう言うと、女性が紙を取り出し何やら地図みたいなものを書き出した。
「そこ、あたしたちがやってる店。暇だったら今日の夜9時あたりに来てよ。ご馳走するからさ」
おー、ありがたい。
お言葉に甘えて行かせてもらおう。
「ありがとうございます」
「あたしの名前ベルタってんだけど、着いたら近くにいるやつにベルタ呼べって言ってくれれば出てくから」
「分かりましたー」
「うん、じゃあね、また今晩」
そうして、ベルタさんたちと別れて街の中に入る。
……ザワザワ、ガヤガヤ。
「買った買った、安くしとくよー!」
「水気たっぷりのスイカ、今が買い時だよー!」
街は思った以上に活気があった。
市場って感じだ。
見たところ、しっかりした建物は半分もない。
多くの店がテントの下に台座があって、そこに商品が並んでるような簡単な店だ。
「ベルタさんのとこ行くまで、その辺の店でも見て回ろうか」
9時まであと三時間弱。
これだけ店があれば退屈しなさそうだ。
「あ、でも一応その前にギルド行って、森の中で会った不審者の情報伝えに行かなきゃだね」
「あーそうだった」
ここ来るまでに色々大変なことありすぎて、幻視使いのこと完全に忘れてた。
まだあいつも島にいるだろうから、早めに伝えとくべきだよな。
てことで、まず最初にギルド行って報告を済ませて、それから店を見て回って、約束の9時まで時間を潰した。
コローナの喉が大きく鳴る。
「ハーッ、生き返るー!」
盗賊たちが乗ってた馬車の荷台には、大量の水と食料が積まれていた。
おそらく全部盗品だと思うが、この際少しくらいもらってもバチは当たらないだろう。
失敬して二人分いただく。
限界まで渇いた体に水分が染み渡る。
「こんなに普通の水が美味しいと思ったの初めてだよ」
さっきまで静かだったコローナも、たちまち元気になってしゃべりだした。
もうエネルギー消費を抑える必要もなくなったしね。
馬車がまるごと手に入ったから、ここからは馬車に乗って街を目指せる。
速いし、その辺に出てくる魔物との戦闘時以外動かなくていいしで、移動が一気にラクになった。
「とりあえず盗賊たちが来た方に戻ってみればいいよね?」
「うん、そうだねー」
この辺りで盗賊たちが水とか食料とかを調達できるとしたら、街か運送中の業者みたいな人から奪ったくらいしかないだろう。
だから盗賊たちの来た方に向かえば、街に到着できる確率は上がる。
仮に業者から奪ってた場合でも、運搬業者が通るルートみたいのを見つけられれば、人と遭遇できる可能性は高い。
まぁどっちにしろ、今俺たちが街を目指す唯一の手がかりがコレだけなので、ひとまずは向かってみることに決めた。
◇ ◇ ◇
「お、あれ街っぽくない?」
途中途中で魔物を倒しながら、しばらく馬車に揺られていると、ついに街らしきものが見えてきた。
近づいていくと、どっちかと言うと街というより村って感じだけど、やっぱり人のいる場所だった。
「ああーーーっ!!!」
馬車のまま街に入ろうとすると、突然、馬車の外から大声で叫ぶ声が聞こえた。
「あの馬車あたしたちのじゃないか! みんな、何でか知らないけど盗賊どもが戻ってきたぞー!」
「なにーっ!」
若い女性の声がかかったと思うと、一瞬のうちに20人ほどに馬車の周りを囲まれる。
「やい、盗賊ども。何考えて戻ってきたのか知らんけど、あたしたちは自分の馬車くらい見分けつかんだよ。大人しく出てきな」
あー、だいたい理解した。
この人たちがこの馬車の元の持ち主ってことか。
あの盗賊たち、中身だけかと思ったら馬車ごと盗んでたのね。
「テオくん、どうしよう?」
「まぁひとまず外出て説明するしかないね」
両手を上げて抵抗する気がないのをアピールしながら幕の外に出る。
「あの、俺たち……」
「あれ、この人たちさっきの盗賊たちじゃないな」
どうやら声を出してた女性がさっきの盗賊たちの顔を覚えてたみたいだ。
まだ俺たちが盗賊の仲間って懸念は残ってるだろうけど、それなら話くらいは聞いてもらえそうだ。
「俺たち、砂漠でさまよってたらこの馬車に乗った盗賊たちと遭遇したんですけど……」
それから数分間、ここまでの状況を説明していく。
「……なるほど、話の筋は通ってるね。盗賊どもの仲間だったら、わざわざ戻ってくる意味もないし……」
よかった、とりあえずは信じてもらえたようだ。
「疑って悪かったね。取り返してくれてありがとう」
「いえいえ、中の食料とかもらっちゃってすみません」
「いやいや、全然いいよ。そもそも取り返してもらえてなかったら、それも含めて全部戻ってこなかったんだもの。むしろもっとお礼しなきゃいけないくらいだよ」
そう言うと、女性が紙を取り出し何やら地図みたいなものを書き出した。
「そこ、あたしたちがやってる店。暇だったら今日の夜9時あたりに来てよ。ご馳走するからさ」
おー、ありがたい。
お言葉に甘えて行かせてもらおう。
「ありがとうございます」
「あたしの名前ベルタってんだけど、着いたら近くにいるやつにベルタ呼べって言ってくれれば出てくから」
「分かりましたー」
「うん、じゃあね、また今晩」
そうして、ベルタさんたちと別れて街の中に入る。
……ザワザワ、ガヤガヤ。
「買った買った、安くしとくよー!」
「水気たっぷりのスイカ、今が買い時だよー!」
街は思った以上に活気があった。
市場って感じだ。
見たところ、しっかりした建物は半分もない。
多くの店がテントの下に台座があって、そこに商品が並んでるような簡単な店だ。
「ベルタさんのとこ行くまで、その辺の店でも見て回ろうか」
9時まであと三時間弱。
これだけ店があれば退屈しなさそうだ。
「あ、でも一応その前にギルド行って、森の中で会った不審者の情報伝えに行かなきゃだね」
「あーそうだった」
ここ来るまでに色々大変なことありすぎて、幻視使いのこと完全に忘れてた。
まだあいつも島にいるだろうから、早めに伝えとくべきだよな。
てことで、まず最初にギルド行って報告を済ませて、それから店を見て回って、約束の9時まで時間を潰した。
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