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24.群れ
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ダンジョンから出てきて早速、さっき手に入れたばかりの服を羽織る。
新しい装備ゲットするとすぐ着たくなっちゃうタイプなんだよね。
着てみると思ったより重さは無かった。
裏路地を出て冒険者ギルドに向かう。
こないだ色々あったせいで、グリズリー討伐の三万リル受け取ってなかったことにさっき気づいた。
結構危ない思いしたんだから、ちゃんと報酬はもらわないとね。
◇ ◇ ◇
「テオさん!」
ギルドのドアを開けた途端、中にいたヒルデさんに声をかけられる。
いつも落ち着いてるイメージのヒルデさんが慌ててるなんてよっぽどだ。
「どうしたんですか?」
「グリズリーが森の奥で30体以上大量発生してて、そこにギルド長が一人で乗り込んで行っちゃったんです!」
??
何をそんなに焦ってるのかが分からない。
あのギルド長の強さならグリズリー30体くらい余裕だと思うけどな…。
鑑定してない、っていうかできなかったから、詳しいステータスは分からないけど、少なくともグリズリーに遅れをとるようなレベルじゃない。
ヒルデさん、ギルド長の強さ把握してないのかな。
鑑定が失敗したのは、レベル差がありすぎるからだと思う。
だいたい自分の三倍以上高いとできないみたいだから、あの時の俺のレベルで鑑定できないってことは、まあギルド長はレベル500は超えてる。
普通戦闘職で500ってなると、ステータスがだいたい一万だ。
グリズリー30体程度で何か起きるはずもない。
…けど、それを言うわけにもいかないんだよなあ。
俺は普通にしちゃってるけど、人のステータスを勝手に鑑定するのはマナー違反ってことになってる。
ギルド長がそれほど強くないと思って焦ってるなら、心配ないってことを何とか伝えたいけど、鑑定のこと黙ったままで言っても根拠がないからな…。
「あの、テオさん」
俺が悩んでると、ヒルデさんに声をかけられた。
「これは個人的なお願いになってしまうのですが、ギルド長のサポートをお願いできないでしょうか?」
「サポートですか…」
個人的なお願いって言ったのは、ギルドからの特別報酬とかは出せないってことだろう。
うーん。
この島来たばかりの頃だったら確実に断ってだけど、もう顔なじみ程度には親しくなっちゃったからなあ。
今なら防御も前より上がってるし…。
「やっぱり駄目ですかね…?」
あー、そんな言い方されたら断れないじゃん。
いいや、やろう。
どうせあのギルド長といれば死ぬことはないでしょ。
「分かりましたよ、行ってきます」
「! 本当ですか!? ありがとうございます!」
そんなわけで、またグリズリーに会いに森に行くことになった。
俺ってチョロいな…。
◆ ◆ ◆
「探知」
スキルの探知を使って周囲を確認する。
探知は周辺の生体反応を捉えるスキルだ。
その生物の種類や強さは分からず、位置だけが把握できる。
周りにも魔物が多いため至る所に反応があるが、その中でも目立つ異常な反応が確認できる。
森の中心部に、他の魔物とは違い不自然に密集した40体ほどの反応。
多分これがグリズリーの群れだろう。
それと、もう一つ。
後方から、こちらに向かって直線的に常に動き続ける反応がある。
明らかに魔物の動きじゃない。
「テオくんかな?」
大方、ヒルデさんが僕のサポートでも頼んだんだろう。
大丈夫だって言ってるのに。
まあ仕方ないか。
この島のレベル的に、ここに配属されるギルド長はそんなに強くないことが多い。
グリズリー三体同時に倒せればいいくらいだろう。
そんなギルド長たちを見てきたヒルデさんからすれば、30体以上の群れに突っ込んでくのは無謀に感じるのかもね。
でも自分で言うのもなんだけど、僕はこの島の歴代ギルド長の中で群を抜いて強いからね。
全く問題なしだ。
◇ ◇ ◇
「そろそろだね」
グリズリーらしき生体反応のすぐ近くまで到達した。
テオくんが追いつく前に着いちゃったな。
まあもうすぐ着くだろうし、先に始めちゃいますか。
少し歩くと、グリズリーが目でも確認できるようになった。
気配を遮断するスキル「隠密」を使って気づかれないように一番近くのグリズリーの背後に回り込む。
そして、腰にさした二本の剣のうち一本を抜き、首元を一瞬で斬り裂く。
「グオオオオ」
斬られたグリズリーが声を上げる。
これで他のグリズリーたちが異変に気付いた。
けど、ほとんどはまだ何が起こったかは理解できてないみたいだ。
僕のこと認識したのはすぐ近くにいた二体だけかな。
すぐにもう片方の剣も抜き、一瞬でその二体を片付け、他のグリズリーに見つかる前にまた隠密で気配を消す。
そしてまた、敵の姿が見えなくてキョロキョロしてるグリズリーを背後から仕留める。
それを繰り返していくと、あっという間にグリズリー三分の一が減った。
「これはテオくん来る前に終わっちゃうかもな~」
そう呟いた瞬間、奥から大きな雄叫びが聞こえてきた。
「グオオオオオオ」
「!?」
さっきまでのグリズリーの声とは違い、恐怖を感じる声。
その声の主が、だんだんこちらに近づいてくる。
「なんでここにこんなのが出るんだよ!」
現れたのは、高さ五メートル近くある巨大なクマの魔物だった。
新しい装備ゲットするとすぐ着たくなっちゃうタイプなんだよね。
着てみると思ったより重さは無かった。
裏路地を出て冒険者ギルドに向かう。
こないだ色々あったせいで、グリズリー討伐の三万リル受け取ってなかったことにさっき気づいた。
結構危ない思いしたんだから、ちゃんと報酬はもらわないとね。
◇ ◇ ◇
「テオさん!」
ギルドのドアを開けた途端、中にいたヒルデさんに声をかけられる。
いつも落ち着いてるイメージのヒルデさんが慌ててるなんてよっぽどだ。
「どうしたんですか?」
「グリズリーが森の奥で30体以上大量発生してて、そこにギルド長が一人で乗り込んで行っちゃったんです!」
??
何をそんなに焦ってるのかが分からない。
あのギルド長の強さならグリズリー30体くらい余裕だと思うけどな…。
鑑定してない、っていうかできなかったから、詳しいステータスは分からないけど、少なくともグリズリーに遅れをとるようなレベルじゃない。
ヒルデさん、ギルド長の強さ把握してないのかな。
鑑定が失敗したのは、レベル差がありすぎるからだと思う。
だいたい自分の三倍以上高いとできないみたいだから、あの時の俺のレベルで鑑定できないってことは、まあギルド長はレベル500は超えてる。
普通戦闘職で500ってなると、ステータスがだいたい一万だ。
グリズリー30体程度で何か起きるはずもない。
…けど、それを言うわけにもいかないんだよなあ。
俺は普通にしちゃってるけど、人のステータスを勝手に鑑定するのはマナー違反ってことになってる。
ギルド長がそれほど強くないと思って焦ってるなら、心配ないってことを何とか伝えたいけど、鑑定のこと黙ったままで言っても根拠がないからな…。
「あの、テオさん」
俺が悩んでると、ヒルデさんに声をかけられた。
「これは個人的なお願いになってしまうのですが、ギルド長のサポートをお願いできないでしょうか?」
「サポートですか…」
個人的なお願いって言ったのは、ギルドからの特別報酬とかは出せないってことだろう。
うーん。
この島来たばかりの頃だったら確実に断ってだけど、もう顔なじみ程度には親しくなっちゃったからなあ。
今なら防御も前より上がってるし…。
「やっぱり駄目ですかね…?」
あー、そんな言い方されたら断れないじゃん。
いいや、やろう。
どうせあのギルド長といれば死ぬことはないでしょ。
「分かりましたよ、行ってきます」
「! 本当ですか!? ありがとうございます!」
そんなわけで、またグリズリーに会いに森に行くことになった。
俺ってチョロいな…。
◆ ◆ ◆
「探知」
スキルの探知を使って周囲を確認する。
探知は周辺の生体反応を捉えるスキルだ。
その生物の種類や強さは分からず、位置だけが把握できる。
周りにも魔物が多いため至る所に反応があるが、その中でも目立つ異常な反応が確認できる。
森の中心部に、他の魔物とは違い不自然に密集した40体ほどの反応。
多分これがグリズリーの群れだろう。
それと、もう一つ。
後方から、こちらに向かって直線的に常に動き続ける反応がある。
明らかに魔物の動きじゃない。
「テオくんかな?」
大方、ヒルデさんが僕のサポートでも頼んだんだろう。
大丈夫だって言ってるのに。
まあ仕方ないか。
この島のレベル的に、ここに配属されるギルド長はそんなに強くないことが多い。
グリズリー三体同時に倒せればいいくらいだろう。
そんなギルド長たちを見てきたヒルデさんからすれば、30体以上の群れに突っ込んでくのは無謀に感じるのかもね。
でも自分で言うのもなんだけど、僕はこの島の歴代ギルド長の中で群を抜いて強いからね。
全く問題なしだ。
◇ ◇ ◇
「そろそろだね」
グリズリーらしき生体反応のすぐ近くまで到達した。
テオくんが追いつく前に着いちゃったな。
まあもうすぐ着くだろうし、先に始めちゃいますか。
少し歩くと、グリズリーが目でも確認できるようになった。
気配を遮断するスキル「隠密」を使って気づかれないように一番近くのグリズリーの背後に回り込む。
そして、腰にさした二本の剣のうち一本を抜き、首元を一瞬で斬り裂く。
「グオオオオ」
斬られたグリズリーが声を上げる。
これで他のグリズリーたちが異変に気付いた。
けど、ほとんどはまだ何が起こったかは理解できてないみたいだ。
僕のこと認識したのはすぐ近くにいた二体だけかな。
すぐにもう片方の剣も抜き、一瞬でその二体を片付け、他のグリズリーに見つかる前にまた隠密で気配を消す。
そしてまた、敵の姿が見えなくてキョロキョロしてるグリズリーを背後から仕留める。
それを繰り返していくと、あっという間にグリズリー三分の一が減った。
「これはテオくん来る前に終わっちゃうかもな~」
そう呟いた瞬間、奥から大きな雄叫びが聞こえてきた。
「グオオオオオオ」
「!?」
さっきまでのグリズリーの声とは違い、恐怖を感じる声。
その声の主が、だんだんこちらに近づいてくる。
「なんでここにこんなのが出るんだよ!」
現れたのは、高さ五メートル近くある巨大なクマの魔物だった。
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