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21.水溜まりダンジョン

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「ふんふん、なるほどー」

 エラさんから一通りの展開を聞き終わって、ギルド長が俺たちを見ながら呟く。

 なんかこの人ふわふわしてるっていうか、強そうな感じじゃないんだよなあ。
 ギルド長ってもっと怖そうなイメージだった。

 ただその雰囲気に反して、強さは本物だと思う。

 一回剣を止められただけだけど、この辺でラクしてる冒険者たちとは違って、しっかり命懸けの戦闘をしてきた感じ。
 もとは他の島とか巡って戦ってたんだろうな。

「じゃあ、ダミアンに罰金課そうか」

「は!?なんで俺だけなんですか?」

「え、だってダミアンから喧嘩ふっかけて、先に剣抜いたのもダミアンなんでしょ?しかも君は冒険者で彼は一般人。これじゃ悪いのはダミアンの方でしょ。ねえ、エラちゃん?」

「まぁそうなりますね」

「…ぐぬ」

 客観的な状況を伝えられると、本人も自分に非があることに納得してしまったようで口ごもる。

 よかった。
 俺には罰はなさそうだね。

「でもテオくんも、言い返したくなる気持ちもわかるけど、あんまり挑発するようなこと言っちゃダメだよ」

「はーい」

 これで今回の件は終わりってことになった。
 あんまりめんどくさいことにならなくて良かった。


 ◇ ◇ ◇


 揉め事も早く解決してもらえて、今日はまだ時間かあるので、ダンジョンに潜ることにする。

 ちなみに今回は、グリズリーの追加クエストのおかげで鍵のランクが2になった。

 1と2で何か違うのか、それともただ難易度によってランク付けされてるだけなのかは分からないが、とりあえずいつもより食料とか薬草の準備は多めにしておく。

 アイテムボックスがあるからいくら持ってっても、重さとかで邪魔になるってことはないからね。

 一週間はもちそうな大量の食糧を買い込んで、人気のない裏路地で鍵を使った。


 ◇ ◇ ◇


 ダンジョン内は薄暗かった。
 今回は、最初のスライムダンジョンと同じ、洞窟タイプっぽいな。
 周りを土に囲まれた一本道だ。

 こっちの方が進んでけばいいだけだから分かりやすくていいな。
 一本道だから迷うこともないしね。

 しかし、進んでいくと前とちょっとだけ違うところがあることに気づく。
 ところどころに水溜まりがあるのだ。

 だからといって何かあるわけじゃないんだけど、なんとなく気になる。

 靴ビショビショにしたくないから、避けながら先に進む。


 ――ピチャン。

 ん?
 それまでより少し大きめの水溜まりの脇を通ろうとすると、何か音が聞こえたような気がした。

 水っぽい音だったので、水溜まりを見る。
 しかし、別になんの姿も見えない。

 気のせいかな?
 もう一度通ろうとしてみる。

 ――ピチャン、ピチャン。

 …やっぱり音してるな。
 それでも相変わらず姿は確認できないため、そのまま通り過ぎようとする。

 ――ピチャピチャピチャ。

 すると水の中から、三つの影が飛び出してきた。

 うわっ。
 とっさにアクションゲームのような前転でかわす。
 あー、服に泥ついちゃったよ。
 …そんなこと気にしてる場合じゃないか。

 飛び出してきたのは、体長80センチほどの生物。
 体の長さの半分近くある青くて長い尻尾を持ち、体は黒く光沢がある。

 でかいトカゲだ。
 それが三体、舌を出してこっちを見てる。


『ステータス』

 《種族》 ミズトカゲ

 《HP》 160/160
 《MP》 240/240
 《物攻》 200
 《物防》 160
 《魔攻》 240
 《魔防》 200

 《スキル》水弾



 三対一でこのステータスはキツイな。
 魔攻高いし。

 多分水弾メインで戦ってくるだろうから、動きまわっといた方がいいな。
 止まった状態からかわすのは難しそうだ。

 てことで、走り回って狙いを絞りにくくする、

 すると、予想通り距離は詰めて来ずに三体同時に水弾で攻撃してきた。
 瞬間的に加速してそれをかわす。

 攻撃力高くなってきて、脚力も上がったのか前より避けられるようになった気がする。
 電狼剣の補正が脚力にもかかってくれたらもっと良かったんだけどな。

 三つともかわしてから、今度はこっちが斬撃を飛ばして反撃する。

 しかし、俺の攻撃も三体ともにジャンプでかわされた。
 動きもそこそこ素早い。

 だが効果がなかったわけじゃない。
 おかげで、かわす時に左に避けたやつと右に避けたやつで二体と一体に分かれた。

 このチャンスを生かし、孤立した方に近づく。

 無駄にトカゲのジャンプ力が高い分、着地までに時間がかかる。
 俺の間合いに入るまでに水弾を撃てる体勢を整えることはできなかったようだ。
 先に俺の剣が届く。

 スパッ。

 とりあえず一体目。
 すぐさま残りの二体の方に目を向ける。

 するとまた水弾を飛ばしてきた。
 毒弾と電気弾で迎撃する。

 練習してきたおかげで、だいぶ魔法系の扱いも上達してきた。

 同じ種類の魔法弾はインターバルの関係で同時発動できないけど、別種のだったら可能だった。
 結構難しくて、上手くできるようになるまで時間かかったけどね。

 相手の水弾のインターバルがある間に接近戦に持ち込む。

 ――スパッ、スパッ。

 飛びついてはきたが、ステータス的にも物理的戦闘は得意じゃないんだろう。
 あっさりと二体とも倒せた。
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