上 下
18 / 33

18.グリズリー③

しおりを挟む
「しょ、少々お待ちくださいね」

 そう言って受付嬢は奥に入っていった。
 多分、上の人に対応を求めにいったんだろう。
 大ネズミの時と同じ流れだ。

 2分ほど待つと、30歳前後の女性が出てきた。

「受付嬢のヒルデと申します。本来はギルド長が対応するところですが、あいにく不在のため、私が対応させていただきます」

 あ、この人がギルド長ではないのね。
 別にこっちとしては何も問題ない。

 このヒルデさんには、どのあたりにいたとか、いつ頃だとか詳しいことを聞かれた。
 わかる範囲でそれらに答えた。

「…以上で終了です。後はこちらで対応させていただきますね。ご協力ありがとうございました。」

「あ、それと魔石の換金もお願いしたいんですが」

「承知しました。エラちゃん、換金お願いね」

 最初にいた受付嬢と担当が交代する。

「はい、魔石の換金ですね。じゃあ出してください」

「ここにですか?」

 明らかにこのカウンターじゃ幅が足りない。
 …あ、俺が何にも持ってないからか。

「あの、俺アイテムボックスのスキル持ってるんで、結構量あるんですよ」

「あ、そうでしたか、失礼しました。ではこちらにお願いします」

 そう言って別の部屋に案内される。
 中央に大きなテーブルが一つあるだけのシンプルな部屋だ。
 そのテーブルに淡々と魔石を出していく。

「…………まだあるんですか!?」

 半分を過ぎたくらいで、痺れを切らした受付嬢が声をあげた。
 やっぱ多かったみたいだ。

「ずっと溜めてたんで」

 まだ先もあるので、軽く答えて続きを出す。

 そして5分ほどかかってようやく全て出し終わった。

「……これで全部ですか?鑑定に時間がかかるので椅子に座ってお待ちください」

 座ると目の前で鑑定が始められた。
 顕微鏡みたいな機械で魔石を見ていく。
 ペース的にしばらくかかりそうなので仮眠でもとるとしますか。



 ◇ ◇ ◇



「あの、すみません!」

 受付嬢の興奮したような声で起こされる。
 どうしたんだろ。

「あ、起きられましたか!あの、これってグリズリーの魔石ですよね!?どうやってこれを?」

 ああ、その話か。
 そういえばこっちでは話してなかったな。

「さっき出てきたって言ったグリズリー倒したんですよ。そいつの魔石です」

「あ、あなたが倒したんですか!?」

「そうですよ」

「それなら早く言って下さいよ~!それによってこっちのこの問題の対応が変わってくるんですから」

「ああ、すみません」

 またもやさっきのヒルデさんが呼ばれて出てくる。

「あなたグリズリー倒せるほど強かったんですか。すみません、その強さを見込んでお願いがあるんですが、あと二体グリズリーを狩ってきていただけないでしょうか?」

「二体ですか?」

「ええ、あなたから報告いただいたすぐ後、他の冒険者の方からも報告いただいたんです。それによると、どうやら後二体外に出てきてるみたいなんです」

 …まじか。
 倒すの結構きつかったんだけどな。

「他にグリズリー倒せる冒険者の方いないんですか?」

 誰かしらいそうなもんだけど…。

「…それが、ステータスにはグリズリー以上の方もいらっしゃるのですが、危険だからということで受けていただけないんです。一定のランク以上の冒険者の方への強制クエストというのもあるのですが、それにはギルド本部の承諾が必要なので、数日時間がかかるんですよ…」

 それまで待ってると街に被害が出る可能性もあるから、早めに倒しておきたいってことか。

「…はあ、報酬は」

 やっぱり報酬次第かな。

「魔石の買取価格に加えて、3万リルでどうです?普通に倒した時の7倍以上ですよ」

 三万リルか…。
 今の収入じゃ冒険者になるまで持つか怪しいからなあ。

 …受けるしかないか。

「分かりました。やりますよ」

「ありがとうございます!よろしくお願いしますね」

 そんなわけで明日またグリズリーを倒しに行かなきゃいけなくなった。
 冒険者たちは何してんのかね。

 ダンジョンキーの追加クエストも後二体だったし、まあいいか。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

モブです。静止画の隅っこの1人なので傍観でいいよね?

紫楼
ファンタジー
 5歳の時、自分が乙女ゲームの世界に転生してることに気がついた。  やり込んだゲームじゃ無いっぽいから最初は焦った。  悪役令嬢とかヒロインなんてめんどくさいから嫌〜!  でも名前が記憶にないキャラだからきっとお取り巻きとかちょい役なはず。  成長して学園に通うようになってヒロインと悪役令嬢と王子様たち逆ハーレム要員を発見!  絶対お近づきになりたくない。  気がついたんだけど、私名前すら出てなかった背景に描かれていたモブ中のモブじゃん。  普通に何もしなければモブ人生満喫出来そう〜。  ブラコンとシスコンの二人の物語。  偏った価値観の世界です。  戦闘シーン、流血描写、死の場面も出ます。  主筋は冒険者のお話では無いので戦闘シーンはあっさり、流し気味です。  ふんわり設定、見切り発車です。  カクヨム様にも掲載しています。 24話まで少し改稿、誤字修正しました。 大筋は変わってませんので読み返されなくとも大丈夫なはず。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

天使の住まう都から

星ノ雫
ファンタジー
夜勤帰りの朝、いじめで川に落とされた女子中学生を助けるも代わりに命を落としてしまったおっさんが異世界で第二の人生を歩む物語です。高見沢 慶太は異世界へ転生させてもらえる代わりに、女神様から異世界でもとある少女を一人助けて欲しいと頼まれてしまいます。それを了承し転生した場所は、魔王侵攻を阻む天使が興した国の都でした。慶太はその都で冒険者として生きていく事になるのですが、果たして少女と出会う事ができるのでしょうか。初めての小説です。よろしければ読んでみてください。この作品は小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも掲載しています。 ※第12回ネット小説大賞(ネトコン12)の一次選考を通過しました!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...