上 下
2 / 33

2.ダンジョンキー

しおりを挟む
「よお、ダンジョンシーカーさん」

「「ギャハハハ」」

 教室戻ってきて早々、ゲオルクに冷やかされる。
 
 はあ。
 まぁこれは馬鹿にもされるわ。

 ダンジョンって言ったらどう考えても7迷宮のことだよなあ。
 他にダンジョンなんてないし。

 7迷宮っていうのは、この世界に点在する7個のダンジョンの総称。

 それぞれの最深部には、神器っていうステータスを上げる武器とか装飾品が隠されてる。

 ただ攻略難易度はめちゃくちゃ高くて、ベテランの最上位職でも、一番簡単な第一迷宮すらクリアできない人が大勢。

 今のところ最高記録が第五迷宮までらしい。

 最弱ステータスの俺の職業が、そんなエリート中のエリートが挑戦するダンジョンの探索者とか…。
 自殺志願者かよ。

「とりあえず卒業と成人おめでとう。君たちは……」

 考え事してたら、いつの間にか戻ってきてた先生の話が始まってた。
 そのまま五分くらい、大して意味のない話が続く。

「最後に、多分ここにいるほとんどの人が冒険者志望だと思うから言うけど、もう来月には冒険者登録試験があります。これ逃すと半年後までないからね。今日分かった自分のスキルとかしっかり試しておいて下さい。以上、解散」

 まあ正直俺とクルトには関係ないね。

 登録試験はそんなに難しくないって言われてるけど、あくまで戦闘職での話。

 普通戦闘職でも平均ステータスは200越えだから、俺たちとの差は20倍以上。
 そいつらの一ヶ月分が俺たちにとっては20ヶ月分。
 
 二年間ガチで修行すれば一応冒険者にはなれるかもしれないけど、だったら普通に自分の職業にあったことした方が全然稼げる。

 ただ問題は俺の職業が何にも使えないこと。
 さっき言ったように、ダンジョン探索なんてできるわけない。
 
「クルトはこれからどうする?」

「んー、とりあえず島出て料理修行しようかと思ってるよ」

「だよなあ…」

 鑑定で分かったクルトの職業は料理人だった。
 料理人みたいな、やる事はっきりしてて生産系とか商業系の職業だったら、非戦闘職でも結構対等に扱ってもらいやすい。

 逆に俺みたいなよく分からない職業の奴はどこ行っても除け者扱い。

 はあ、マジでこれからどうしよ。
 
 とりあえず家でゆっくり考えるか。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 帰ってきて自分のベットに寝転がりながら、さっき分かった「鑑定」のスキルで自分のステータスを見る。


『ステータス』
 
《名前》 テオ=シェーファー 
《レベル》1 
《職業》 ダンジョン探索者
 
《HP》 10/10
《MP》 10/10
《物攻》 10
《物防》 10
《魔攻》 10
《魔防》 10

《経験値》 0/50

《スキル》ダンジョンキー 
     疲労無効
     鑑定
     アイテムボックス


 上の方は別にもうどうでもいい。
 気になるのはやっぱりスキル。

 てことで、スキルの鑑定をする。


『疲労無効』 疲労が蓄積されない。

『鑑定』 物質のステータスを見ることができる

『アイテムボックス』 異次元に無生物を収納する

 
 まあ鑑定とかアイテムボックスは有名なスキルだし、疲労無効も名前のまんま。

 本命は、一番謎で俺の職業に関係してそうなスキル「ダンジョンキー」
 全く聞いたことないし、内容も予想しにくい。

 …よし。

「鑑定」


『ダンジョンキー』 固有スキル。規定の条件を満たすことで島ごとに存在する「隠しダンジョン」の鍵を入手できる。


 …ん?
 隠しダンジョン??

 いまいち内容が理解できない。

 …まぁ使ってみるか。

「ダンジョンキー」

 スキル名を声に出す。
 すると、


『入手条件(サブル島)』

《スライム討伐》 0/150


 って画面が出てきた。
 サブル島ってのは今俺がいる島の名前。
 
 …てことは、この島にも隠しダンジョンがあるってことか?
 スライム150体倒せば入れると…。

「やってみるか…」

 本当にダンジョンがある確証はないけど、俺には他に出来ることがない。
 これに賭けるしかないのだ。

 短剣と食料をアイテムボックスに詰めて早速家を出る。
 
 
 ◇ ◇ ◇ ◇


 途中で薬草を大量に買ってから、村を出て魔物が出る区域にやって来た。

 まぁ魔物って言っても、この島にいるのはスライムだけなんだけどね。

 それでも子供のうちは戦闘が禁止されてたから、これが初戦闘。
 しかもスライムも非戦闘職からしたらなかなかの強敵だから気は抜いてられない。

 周囲に気を配りながら歩いていると、右前方に何か動いてる物を発見。

 多分スライムだろうけど、遠くてよく見えないから鑑定を使う。


『ステータス』
 
《種族》 スライム
 
《HP》 10/10
《MP》 10/10
《物攻》 10
《物防》 10
《魔攻》 10
《魔防》 10

《スキル》弱酸


 やっぱりスライムだった。

 …あれ、ステータス俺と変わんなくない?
 思った以上に強い。

 ていうかスキルが攻撃系な分、俺より強いんじゃ…。

 …まぁやるしかないか。

 覚悟を決めてスライムに近づく。

 すると、向こうも気づいたようで、にらみ合った形になる。


 先に動いたのはスライムの方だった。

 丸い体に一つだけ空いた、多分口であろう楕円形の穴から、透明の液体が飛び出してきた。

 咄嗟にかわすと、その液体が落ちた地面がジュワジュワ言い出す。

 酸か。

 相手は遠距離攻撃あるんじゃ、距離を取ってても、ただこっちが不利になるだけだな。

 意を決して間合いに踏み込み、持ってきた短剣を下のスライム目掛けて振る。

 ぬちゃっ。

 おお、当たった。
 感触は切った感じじゃないけど、ダメージは与えられてるはず。


《HP》 8/10
     

 よし、しっかり効いてる。

 もう一回だ。
 さっきと同じように短剣を振る。

 スカッ。

 今度はかわされた。
 そのまま方向転換して突進してくる。

 ドンッ。

 痛っ。
 俺のHPが2減る。

 ステータス一緒だから、受けるダメージも同じだった。
 攻撃多く当てた方の勝ちってことか。

 体勢を立て直して、スライムにまた向かっていった。


 ◇ ◇ ◇ ◇


《スライムの討伐を確認しました》

 討伐を告げる電子音が頭の中に流れてくる。

  はあ、はあ。

 何とか一体目を倒した。
 本当にギリギリ。
 
 俺のHPも2しか残ってない。
 薬草を使って回復する。

 …ふう。

 で、さっきの電子音は何だ?

 魔物倒した時に電子音が聞こえてくるなんて聞いたことない。
 
 そうなるとやっぱりダンジョンキー関係だよな。
 確かめるためにスキルを発動する。


『入手条件(サブル島)』

《スライム討伐》 1/150


 お、ちゃんと1になってる。
 
 これは、本当に隠しダンジョンがあることも考えられるな。

 そう思うと俄然やる気が出てきた。

 よし、こっからどんどん倒していきますか。

 条件達成目指して、またスライムの捜索を始めるのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

モブです。静止画の隅っこの1人なので傍観でいいよね?

紫楼
ファンタジー
 5歳の時、自分が乙女ゲームの世界に転生してることに気がついた。  やり込んだゲームじゃ無いっぽいから最初は焦った。  悪役令嬢とかヒロインなんてめんどくさいから嫌〜!  でも名前が記憶にないキャラだからきっとお取り巻きとかちょい役なはず。  成長して学園に通うようになってヒロインと悪役令嬢と王子様たち逆ハーレム要員を発見!  絶対お近づきになりたくない。  気がついたんだけど、私名前すら出てなかった背景に描かれていたモブ中のモブじゃん。  普通に何もしなければモブ人生満喫出来そう〜。  ブラコンとシスコンの二人の物語。  偏った価値観の世界です。  戦闘シーン、流血描写、死の場面も出ます。  主筋は冒険者のお話では無いので戦闘シーンはあっさり、流し気味です。  ふんわり設定、見切り発車です。  カクヨム様にも掲載しています。 24話まで少し改稿、誤字修正しました。 大筋は変わってませんので読み返されなくとも大丈夫なはず。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

天使の住まう都から

星ノ雫
ファンタジー
夜勤帰りの朝、いじめで川に落とされた女子中学生を助けるも代わりに命を落としてしまったおっさんが異世界で第二の人生を歩む物語です。高見沢 慶太は異世界へ転生させてもらえる代わりに、女神様から異世界でもとある少女を一人助けて欲しいと頼まれてしまいます。それを了承し転生した場所は、魔王侵攻を阻む天使が興した国の都でした。慶太はその都で冒険者として生きていく事になるのですが、果たして少女と出会う事ができるのでしょうか。初めての小説です。よろしければ読んでみてください。この作品は小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも掲載しています。 ※第12回ネット小説大賞(ネトコン12)の一次選考を通過しました!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...