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成長期の二人
パパ様は思うのでした。
しおりを挟む「僕の天使、それは、これは、どう言うことかな」
「あ、パッパッ様…」
(噛んだ、パッパッ様ってなんだ)
一人心の中でツッコミを入れていないと、これはもう心がもたない。
頑張ってこのお嬢様人生を乗り越えていこうとしたのに、色々お転婆でもママ様は許してくれていたけど、でもーー
これはもう無理かもしれない。
「クライエル伯爵、先程僕が申し上げた通りです。僕はラティファナ嬢に恋をしています」
(あ、パパ様の後ろに侯爵もいらっしゃる…色々詰んだな)
「ラニエル殿…それは本当かな?」
「はい、嘘偽りなく僕の本心です」
「先程の…その、肌が触れ合うという、その表現の、その」
「はい!僕たちは既に体の関係にあります」
「エル!?」
ーーバタン!
「旦那様!」
「クライエル卿!」
「パパ様!?」
状況としてはもうどうしようもないほどに、どうしようもない。文法おかしかろうが気にしてる場合でもない。
ラニエルの言葉を聞いた瞬間パパ様は硬直し、意識を手放した。そしてそのまま後ろへと倒れてしまったのだ。
常日頃から"天使"と呼ばれていたわたしは、これから"痴女"というレッテルを貼られたまま生きていかないといけないのかもしれない。
そんなパパ様にみんながみんな駆け寄る中で、ママ様が彼の体をよく整えられた芝生の上からすくい上げていた。
そんな態勢なもんだから目を少し覚ましたパパ様はイキナリのママ様のお顔とお胸がアップなもんで、顔をスゥと赤らめてしまっていた。
(わー!この状況でも揺るがない母への愛に感服です!)
状況を一旦忘れて自分の妻にデレっとしてみせるクライエル伯爵。これは侯爵様にはどのように写っているのやら…ちょいと恐ろしくて聞けやしない。
というか、この瞬間を使って逃げていいですか?
目を覚ました瞬間、あぁさっきのは夢だったんだな、と妻の美しい顔を見て思った。でもそれは一瞬のことで、侯爵の声とともにまた現実へと引き戻された。
「クライエル卿大丈夫ですか」
「あ、あっ」
(そんなうまい話なんてないよな…うん、知ってる)
「こ、侯爵、これは、誠になんて言えばいいか、とんだ醜態を…」
「いえ、どちらかと言えば…これは私の方が…」
どちらも大人だと言うのに、なんと歯切れの悪い会話だろうか。
先程までは確か領地運営についてお互いにアイディアを出し合い、補足とアドバイスなど有意義な会話をしていた気がする。
それが今はどうだろうーー
(だって仕方ないんだ、僕の天使が体の関係と言うなにかをーー)
「ワーーーーー!!」
「パパ様!?」
「旦那様!?」
(自由ってなに?え、なに?教育方針だけど、え?なに?体の関係って…え?なに?)
「ラニエル殿!うちとの天使とはどこまで進んじゃったのかな!!」
「いきなり何言い出した!この父親は!」
天使が何かを横から殴りかかるように発してきたけど、そんなの気にしていられない。だって体の関係ってあれだよ!大人になってやっと迎えられる、あのファンファーレのような素晴らしい、アレだよ!?
10代の時に僕がミレンダにどれほどのアプローチをして迎えられたと!!
「パパ様…」
「旦那様…」
(こいつ…涙流しながら鼻血とヨダレを垂らしておる…大丈夫か?)
意識がどこかに飛んでいってるーー見目麗しいこのパパ様(成人男性)にあるまじき醜態を、今まさに崖っぷち状態のクライエル伯全体と、あとジファーソン卿とエルの(クソ)野郎はただ黙ってじっと見ているしか出来なかった。
(え?続くの?この状態のまま話は続くの!?嘘でしょ!?)
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