上 下
21 / 25
成長期の二人

パパ様は思うのでした。

しおりを挟む


「僕の天使、それは、これは、どう言うことかな」

「あ、パッパッ様…」




(噛んだ、パッパッ様ってなんだ)




 一人心の中でツッコミを入れていないと、これはもう心がもたない。
 頑張ってこのお嬢様人生を乗り越えていこうとしたのに、色々お転婆でもママ様は許してくれていたけど、でもーー
 これはもう無理かもしれない。


「クライエル伯爵、先程僕が申し上げた通りです。僕はラティファナ嬢に恋をしています」



(あ、パパ様の後ろに侯爵もいらっしゃる…色々詰んだな)



「ラニエル殿…それは本当かな?」

「はい、嘘偽りなく僕の本心です」

「先程の…その、肌が触れ合うという、その表現の、その」

「はい!僕たちは既に体の関係にあります」

「エル!?」


ーーバタン!


「旦那様!」

「クライエル卿!」

「パパ様!?」



 状況としてはもうどうしようもないほどに、どうしようもない。文法おかしかろうが気にしてる場合でもない。
 ラニエルの言葉を聞いた瞬間パパ様は硬直し、意識を手放した。そしてそのまま後ろへと倒れてしまったのだ。
 常日頃から"天使"と呼ばれていたわたしは、これから"痴女"というレッテルを貼られたまま生きていかないといけないのかもしれない。

 そんなパパ様にみんながみんな駆け寄る中で、ママ様が彼の体をよく整えられた芝生の上からすくい上げていた。
 そんな態勢なもんだから目を少し覚ましたパパ様はイキナリのママ様のお顔とお胸がアップなもんで、顔をスゥと赤らめてしまっていた。



(わー!この状況でも揺るがない母への愛に感服です!)



 状況を一旦忘れて自分の妻にデレっとしてみせるクライエル伯爵。これは侯爵様にはどのように写っているのやら…ちょいと恐ろしくて聞けやしない。

 というか、この瞬間を使って逃げていいですか?
















 目を覚ました瞬間、あぁさっきのは夢だったんだな、と妻の美しい顔を見て思った。でもそれは一瞬のことで、侯爵の声とともにまた現実へと引き戻された。


「クライエル卿大丈夫ですか」

「あ、あっ」



(そんなうまい話なんてないよな…うん、知ってる)



「こ、侯爵、これは、誠になんて言えばいいか、とんだ醜態を…」

「いえ、どちらかと言えば…これは私の方が…」


 どちらも大人だと言うのに、なんと歯切れの悪い会話だろうか。 
 先程までは確か領地運営についてお互いにアイディアを出し合い、補足とアドバイスなど有意義な会話をしていた気がする。
 それが今はどうだろうーー



(だって仕方ないんだ、僕の天使がと言うなにかをーー)



「ワーーーーー!!」

「パパ様!?」

「旦那様!?」




(自由ってなに?え、なに?教育方針だけど、え?なに?体の関係って…え?なに?)



「ラニエル殿!うちとの天使とはどこまで進んじゃったのかな!!」

「いきなり何言い出した!この父親は!」



 天使が何かを横から殴りかかるように発してきたけど、そんなの気にしていられない。だって体の関係ってあれだよ!大人になってやっと迎えられる、あのファンファーレのような素晴らしい、アレだよ!?
 10代の時に僕がミレンダにどれほどのアプローチをして迎えられたと!!













「パパ様…」

「旦那様…」



(こいつ…涙流しながら鼻血とヨダレを垂らしておる…大丈夫か?)



 意識がどこかに飛んでいってるーー見目麗しいこのパパ様(成人男性)にあるまじき醜態を、今まさに崖っぷち状態のクライエル伯全体と、あとジファーソン卿とエルの(クソ)野郎はただ黙ってじっと見ているしか出来なかった。






(え?続くの?この状態のまま話は続くの!?嘘でしょ!?)





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

【R18】悪役令嬢を犯して罪を償わせ性奴隷にしたが、それは冤罪でヒロインが黒幕なので犯して改心させることにした。

白濁壺
恋愛
悪役令嬢であるベラロルカの数々の悪行の罪を償わせようとロミリオは単身公爵家にむかう。警備の目を潜り抜け、寝室に入ったロミリオはベラロルカを犯すが……。

巨根王宮騎士の妻となりまして

天災
恋愛
 巨根王宮騎士の妻となりまして

運命の歯車が壊れるとき

和泉鷹央
恋愛
 戦争に行くから、君とは結婚できない。  恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。    他の投稿サイトでも掲載しております。

処理中です...