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無自覚天然男子の悩み事

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僕の幼なじみのはるちゃん。
小学3年生のとき、初めての席替えで班長さんだったはるちゃんが、同じ班のおっちょこちょいの僕を色々気にかけてくれた時からずっと一緒。

はるちゃんはたくさん本を読んでてなんでも知ってて、クラスメイトの前で発表する時も大人と話す時もはきはき堂々としてて、授業中の難しいところを周りの子に教えてまわってくれる優しい子で、クラスの人気者だった。
そんな子と同じ班になれるなんて、しかもたくさん話しかけてくれるなんて本当に嬉しくて嬉しくて、ずっと憧れてた。


何よりも、ダメなことをダメ、嫌なものは嫌ってはっきり言えるのがかっこよかった。

僕のおっちょこちょいは昔から本当に酷くて、1年生の頃とかは特に忘れ物が多くて大変だった。
お母さんと2人で試行錯誤して、何とか減らせるようになったし、宿題も真面目にがんばった。
あとは急に起こる出来事。大きな音とかは本当に苦手でびっくりするとよく物を落としちゃう。
変なとこでコケたりぶつかったり、運動神経悪くてどんくさいから体育も苦手。
でもやっぱり1番は『空気を読む』とか『行間を読む』とか。
今でもずっと苦手で、みんなにからかわれる原因にもなった。

だから周りの子は、バカにしてくるかすごく優しくしてくるかの二極だった。
バカにしてくる子はわざと僕が困るように仕向けてきたりして、結構苦手。
すごく優しくしてくる子も、笑顔で大丈夫だよ~って言ってくれるけどだんだんぎこちなくなってくる。
ああ、無理させちゃってるんだなぁって鈍い僕でもわかるようになってからはすごく申し訳なくなって、やっぱり苦手。

でもはるちゃんだけは違った。
意地悪してくるわけでもなく、大丈夫だよーって流すわけでもなく、怒りながらなんでそうなるのか真剣に一緒に考えてくれる。
イラッときたらそのまま顔に出してどっか行っちゃうけど、しばらくしたら申し訳なさそうに僕のところに来てくれる。
僕をいじめてくる子ははるちゃんがみんな追い返した。



 はるちゃんは本当にかっこよくて、ずっと僕の憧れの人。

だから僕ははるちゃんと一緒にいれるようにがんばった。
はるちゃんは公立中学の最初のテストでクラスで1番を取った。
だから僕も必死に勉強して、次のテストからはずっと上位に入れるようにがんばった。1番だって何回も取った。
はるちゃんの行きたい高校はどうやら県で1番倍率の高い高校らしいから、もっともっと勉強した。
2人して無事合格した高校は、服装も自由、時間割も自由、英語と芸術に強い面白い学校だった。

でもその頃からはるちゃんは元気がなくなっていった。

昔の自信があって、前向きで、キラキラしていたはるちゃんがどんどんなりを潜めて、時々全部の表情が抜け落ちたようなぼーっとした顔をするようになった。

毎日学校に行くのを楽しみにしていたのに、遅刻やサボりが多くなった。
色んなことに興味津々だったのに、いつの間にか本も開かなくなった。

 どうしたんだろう。なにか悩んでるのかな。

目に見えて成績も落ちていって、何とか励ましたくて、僕はますます勉強をがんばった。
悔しいって思ってくれたらまたキラキラしたはるちゃんに戻ると思ったから。

僕が上位をとる度に、はるちゃんの表情は消えていった。
僕が賞をとる度に、はるちゃんは諦めたような顔をするようになった。

ただ、静かにお前はすごいなって、それだけ言ってどこかに行ってしまう。
泣きそうで、すごく苦しそうな顔をしながら。
はるちゃんから戻ってくることはなかった。


さすがの僕にも分かった。はるちゃんは、僕と一緒にいるのが辛いんだって。

原因の僕が、はるちゃんを励ませる訳ない。

 でも僕は知らないふりをした。だって僕は鈍感で鈍臭いから。

はるちゃんが僕に辛く当たる時、はるちゃんはもっと辛そうな顔をする。
僕はただはるちゃんが落ち着くのを待った。
何回も何回も繰り返していくうちに、またはるちゃんは申し訳なさそうな顔をして僕のところに戻ってくるようになった。


僕のことが嫌いなら、きっととっくにはるちゃんは僕を切捨てている。
合わない人とは上手く関わらないようにするのがはるちゃんだから。

でもそうじゃないってことは、はるちゃんは僕を嫌っていない。



 はるちゃんの辛そうな原因は話してもらわないと分からない。

だから話してもらえるように、僕はまた

交友関係が広いように見えて実は自分の懐には誰も潜り込ませないはるちゃん。
次の目標はそこに入り込むこと。

はるちゃんの落ち込んだ成績を取り返して、大学受験を手伝った。
志望校が同じになるように誘導した。
はるちゃんのお母さんに、2人で上京してルームシェアできるように根回しした。

はるちゃんの1番近いところで、いやでも目に入るところで、僕は自分を磨き続ける。
はるちゃんの1番近いところで、たくさんたくさん話をする。

そうして、僕から離れられないようにしよう。


敵じゃないよ、僕を見て、何を考えてるの?


僕との生活が当たり前になったその時、きっと話してくれるよね。

 
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