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生涯の覚悟
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見間違いかもしれない。怪我によるただの傷なのかもしれない。最初はそう思うおうとした。
でもそんなことは全て虚しい努力だと分っていた。私は確信してしまったのだ。
ずっと近くで維澄さんを見てきた私だからこそ分ってしまった。
私が見てきた維澄さんの行動、言動、表情から垣間見せる暗い影。その原因が全てあの手首に見えた一本の”線”で繋がってしまった。
なぜ失恋しただけで、こんな田舎に隠れるように暮らす必要があるのか?十代の少女が無責任に仕事を放り投げ出したというだけで、なんであんなに人を怖れるように避け続ける必要があったのか?
仕事を放り出して7年も経つのに、最初の友だちが私ということの違和感。
上條社長と会うことを未だ拒否するという違和感。
その最初の友達である私に見せる異様な独占欲、つまり自分から離れてしまうことへの異常なまでの恐怖心。
その全ての理由があまりの説得力をもって維澄さんの手首の傷に結びついてしまった。
上條社長は、私と最初に会った時にすぐに維澄さんの安否を気にしていた。
おそらく上條さんにはその予感があったのだろう。
リストカット。
維澄さんはかつて”自死”という選択をしたことがある。私は過去の維澄さんの体験を安易に考え過ぎていたことを悔いた。維澄さんが上條社長に突き放された時に感じた体激しい失望と喪失は維澄さんを自死にまで追い込んでいたのだ。
私の維澄さんへの気持ちを”ただただ押し付ける”だけでなんとかなるようなあまい話では到底なかったのだ。この前に辿りついた”私は恋人の称号は要らない”、”ただ維澄さん側にいれればそれでいい”という選択は間違っていなかったことになる。
でも、それでもまだまだ甘すぎた。
私は動揺を悟られまいと、小さく長い息を吐きながら心を落ち着けようと努力した。そして出来る限りの作り笑顔で維澄さんの姿を見続けた。
でもそんな笑顔を作っても気を許せば今にも涙がこぼれそうになった。
維澄さんがブレスレットを見て嬉しそうな顔をすればするほどに……
私達は会計を終えて、昼食をとるためにレストラン街のある1Fへ向かった。その途中、私は維澄さんの手を握るために維澄さんの”左手”に手を伸ばした。
「え?なに?檸檬!?」
維澄さんはちょっと驚いたように、また恥ずかしそうに手を引っ込めようとしたが、私は強引にその手を追いかけ、その手を強く強く握りしめてしまった。
「いや、さっき私の手を握り締めてくれたのでそのお返しですよ」
私はことさら笑顔でそう言うと維澄さんは、少し照れながらも直ぐに自分の左手を私に委ねてくれた。
もしかしたら維澄さんをあの世につれて行ってしまったかもしれない左手首の傷。私はそのすぐ近くにある左の掌で彼女の”心の痛み”を少しでも感じたかった。
もう私だけの気持ちを優先するべきではない。私はもっともっと維澄さんのことをちゃんと分ってあげなければいけなかった。
そして、私は”ある覚悟”を決めなければいけないことに気付いていた。
間違いのないことがある。
それは……
万が一、私が維澄さんから去るようなことがあれば……
維澄さんはきっと……
だから、私は命がけで維澄さんの側に一生いる覚悟を決めなければならない。
もちろんいままでだってそのつもりだった。
でも今なら分かる。
”檸檬はきっとこれからも素敵な人にたくさんあう。檸檬のことだから、またすぐに好きになってしまう”
維澄さんがファミリーレストランで目に涙をためて叫ぶように言ったことことがあった。維澄さんは、頭で明確に意識していた訳ではないと思うけど……
きっとこの言葉の裏には『檸檬は私を一生愛し続ける保証なんてどこにないでしょう!』という維澄さんの魂が叫んでいたに違いない。
だから私は今一度覚悟を決めた。もう絶対に維澄さんの側を離れない。一生だ。一生かけてでも維澄さんの傷を癒していく覚悟をしなければならないんだ。
クリスマスという聖なる日に、私ははからずも生涯の決意をすることになった。
でもそんなことは全て虚しい努力だと分っていた。私は確信してしまったのだ。
ずっと近くで維澄さんを見てきた私だからこそ分ってしまった。
私が見てきた維澄さんの行動、言動、表情から垣間見せる暗い影。その原因が全てあの手首に見えた一本の”線”で繋がってしまった。
なぜ失恋しただけで、こんな田舎に隠れるように暮らす必要があるのか?十代の少女が無責任に仕事を放り投げ出したというだけで、なんであんなに人を怖れるように避け続ける必要があったのか?
仕事を放り出して7年も経つのに、最初の友だちが私ということの違和感。
上條社長と会うことを未だ拒否するという違和感。
その最初の友達である私に見せる異様な独占欲、つまり自分から離れてしまうことへの異常なまでの恐怖心。
その全ての理由があまりの説得力をもって維澄さんの手首の傷に結びついてしまった。
上條社長は、私と最初に会った時にすぐに維澄さんの安否を気にしていた。
おそらく上條さんにはその予感があったのだろう。
リストカット。
維澄さんはかつて”自死”という選択をしたことがある。私は過去の維澄さんの体験を安易に考え過ぎていたことを悔いた。維澄さんが上條社長に突き放された時に感じた体激しい失望と喪失は維澄さんを自死にまで追い込んでいたのだ。
私の維澄さんへの気持ちを”ただただ押し付ける”だけでなんとかなるようなあまい話では到底なかったのだ。この前に辿りついた”私は恋人の称号は要らない”、”ただ維澄さん側にいれればそれでいい”という選択は間違っていなかったことになる。
でも、それでもまだまだ甘すぎた。
私は動揺を悟られまいと、小さく長い息を吐きながら心を落ち着けようと努力した。そして出来る限りの作り笑顔で維澄さんの姿を見続けた。
でもそんな笑顔を作っても気を許せば今にも涙がこぼれそうになった。
維澄さんがブレスレットを見て嬉しそうな顔をすればするほどに……
私達は会計を終えて、昼食をとるためにレストラン街のある1Fへ向かった。その途中、私は維澄さんの手を握るために維澄さんの”左手”に手を伸ばした。
「え?なに?檸檬!?」
維澄さんはちょっと驚いたように、また恥ずかしそうに手を引っ込めようとしたが、私は強引にその手を追いかけ、その手を強く強く握りしめてしまった。
「いや、さっき私の手を握り締めてくれたのでそのお返しですよ」
私はことさら笑顔でそう言うと維澄さんは、少し照れながらも直ぐに自分の左手を私に委ねてくれた。
もしかしたら維澄さんをあの世につれて行ってしまったかもしれない左手首の傷。私はそのすぐ近くにある左の掌で彼女の”心の痛み”を少しでも感じたかった。
もう私だけの気持ちを優先するべきではない。私はもっともっと維澄さんのことをちゃんと分ってあげなければいけなかった。
そして、私は”ある覚悟”を決めなければいけないことに気付いていた。
間違いのないことがある。
それは……
万が一、私が維澄さんから去るようなことがあれば……
維澄さんはきっと……
だから、私は命がけで維澄さんの側に一生いる覚悟を決めなければならない。
もちろんいままでだってそのつもりだった。
でも今なら分かる。
”檸檬はきっとこれからも素敵な人にたくさんあう。檸檬のことだから、またすぐに好きになってしまう”
維澄さんがファミリーレストランで目に涙をためて叫ぶように言ったことことがあった。維澄さんは、頭で明確に意識していた訳ではないと思うけど……
きっとこの言葉の裏には『檸檬は私を一生愛し続ける保証なんてどこにないでしょう!』という維澄さんの魂が叫んでいたに違いない。
だから私は今一度覚悟を決めた。もう絶対に維澄さんの側を離れない。一生だ。一生かけてでも維澄さんの傷を癒していく覚悟をしなければならないんだ。
クリスマスという聖なる日に、私ははからずも生涯の決意をすることになった。
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