49 / 108
第八話 クラス会の賜物は元恋人の従妹だった
⑤翌日、二人は滋賀県の琵琶湖までドライブした
しおりを挟む
翌日、小高は好美が二カ月間借りているマンスリー・マンションへ彼女を迎えに行って滋賀県の琵琶湖までドライブした。
彼は先ず鴨川を渡って東山方面へ車を走らせ、古都京都のシンボルである清水寺で琵琶湖ドライブの安全を祈願した。朝が幾分早かった所為か、観光客は少なめだった。音羽山の断崖に立つ本堂からは京都の全景が見渡せた。
「うわ~っ、将に絶景のビューだわね」
早速に好美が感嘆の声を挙げた。
北白川から山越えで三十分ほど走ると比叡山ドライブウエイの「田の谷峠ゲート」が見えて来た。比叡山の自然と京都や大津、琵琶湖の絶景を楽しめる観光道路へのインである。
ドライブウエイの沿道には木々が立ち並び、まるで人間が自然の中へ溶け込んで行く回廊のようだった。
ゲートインから五分足らずで「夢見が丘」に着いた二人は車を降りて雄大な琵琶湖の眺望と新鮮な空気を満喫した。サイクルモノレールやエキサイティングなスーパースライダーなどの遊具が有って、多くの家族連れで賑わっていた。
好美が頬を綻ばせて言った。
「これは子供達には絶好の遊び場ね」
「あのスーパースライダーは高低差三十五米の斜面に造られているんだって」
バーベキューコーナーでは早くも昼食の準備をする家族も何組か見受けられた。
「夢見が丘」から五分足らずで「比叡山延暦寺」に着いた。
歴史と文化の香に満ちた清澄な空間が広がる中で、二人は自然溢れる山々と荘厳な雰囲気に圧倒され、日本の仏教文化のルーツを実感した。
延暦寺は天台宗の総本山で、東塔と西塔それに横川の三地域から成り、京都と滋賀の県境に跨る比叡山全体がその寺域であった。西塔の本堂である転法輪堂に参拝しながら小高が言った。
「この釈迦堂は延暦寺に現存する建築の中で最も古いものらしいよ」
「そうかも、ね。相当の古相だもんね」
有名な“横川の紅葉”には未だ少し早かったが、毎年、十一月の中旬から下旬に「比叡のもみじ」と言う行事が行われるとのことだった。
ぶらぶらと銀杏の下を散策した先に、十年かけての大改修工事が行われている国宝の根本中道と重要文化財の廻廊が見えて来た。近づいて見上げると、本堂の銅板葺きと廻廊のとち葺きを葺き直し、全体に塗装彩色を施すのが主な修理内容のようであった。
「これだけの工事をしながらでも参拝が出来るなんて凄いわね」
「次の世代へ文化財と共に祈りと伝統が継承されるように、という強い思いの表れだろうね、きっと」
「見て、見て!何?今のあの作業?あんな作業、普段滅多に見られるものじゃ無いわよね」
「将に国宝や重要文化財の改修ならではの作業なのだろうね」
延暦寺には毎年「比叡山から発信する言葉」と言うものが有り、今年のそれは「憶和敬」~和して敬うを憶う~だった。世の全てが掛け替えの無い存在だと憶い至る時、尊敬の念で心が充たされる、という意味だと修行僧に教わった。
「自分の心を穏やかに慎み深く保って、相手を敬いなさい、と言うことなのね」
「こんな今の世の中だからこそ、いつも心に留めておきたい言葉だね」
比叡山の頂上には陶板に再現された絵画と季節の花が咲き誇る 「ガーデンミュージアム比叡」が在った。車から降り立ったその瞬間に二人の心は解きほぐされた。
彼は先ず鴨川を渡って東山方面へ車を走らせ、古都京都のシンボルである清水寺で琵琶湖ドライブの安全を祈願した。朝が幾分早かった所為か、観光客は少なめだった。音羽山の断崖に立つ本堂からは京都の全景が見渡せた。
「うわ~っ、将に絶景のビューだわね」
早速に好美が感嘆の声を挙げた。
北白川から山越えで三十分ほど走ると比叡山ドライブウエイの「田の谷峠ゲート」が見えて来た。比叡山の自然と京都や大津、琵琶湖の絶景を楽しめる観光道路へのインである。
ドライブウエイの沿道には木々が立ち並び、まるで人間が自然の中へ溶け込んで行く回廊のようだった。
ゲートインから五分足らずで「夢見が丘」に着いた二人は車を降りて雄大な琵琶湖の眺望と新鮮な空気を満喫した。サイクルモノレールやエキサイティングなスーパースライダーなどの遊具が有って、多くの家族連れで賑わっていた。
好美が頬を綻ばせて言った。
「これは子供達には絶好の遊び場ね」
「あのスーパースライダーは高低差三十五米の斜面に造られているんだって」
バーベキューコーナーでは早くも昼食の準備をする家族も何組か見受けられた。
「夢見が丘」から五分足らずで「比叡山延暦寺」に着いた。
歴史と文化の香に満ちた清澄な空間が広がる中で、二人は自然溢れる山々と荘厳な雰囲気に圧倒され、日本の仏教文化のルーツを実感した。
延暦寺は天台宗の総本山で、東塔と西塔それに横川の三地域から成り、京都と滋賀の県境に跨る比叡山全体がその寺域であった。西塔の本堂である転法輪堂に参拝しながら小高が言った。
「この釈迦堂は延暦寺に現存する建築の中で最も古いものらしいよ」
「そうかも、ね。相当の古相だもんね」
有名な“横川の紅葉”には未だ少し早かったが、毎年、十一月の中旬から下旬に「比叡のもみじ」と言う行事が行われるとのことだった。
ぶらぶらと銀杏の下を散策した先に、十年かけての大改修工事が行われている国宝の根本中道と重要文化財の廻廊が見えて来た。近づいて見上げると、本堂の銅板葺きと廻廊のとち葺きを葺き直し、全体に塗装彩色を施すのが主な修理内容のようであった。
「これだけの工事をしながらでも参拝が出来るなんて凄いわね」
「次の世代へ文化財と共に祈りと伝統が継承されるように、という強い思いの表れだろうね、きっと」
「見て、見て!何?今のあの作業?あんな作業、普段滅多に見られるものじゃ無いわよね」
「将に国宝や重要文化財の改修ならではの作業なのだろうね」
延暦寺には毎年「比叡山から発信する言葉」と言うものが有り、今年のそれは「憶和敬」~和して敬うを憶う~だった。世の全てが掛け替えの無い存在だと憶い至る時、尊敬の念で心が充たされる、という意味だと修行僧に教わった。
「自分の心を穏やかに慎み深く保って、相手を敬いなさい、と言うことなのね」
「こんな今の世の中だからこそ、いつも心に留めておきたい言葉だね」
比叡山の頂上には陶板に再現された絵画と季節の花が咲き誇る 「ガーデンミュージアム比叡」が在った。車から降り立ったその瞬間に二人の心は解きほぐされた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる