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13話 最後の企み
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治癒室へと到着し私の治療をアジュダがお願いすると、白魔導士の女性はたいそう驚いた表情を見せた。
「レベリオ様を治療するんですか!?」
「ええ、ちょっと今彼女は解呪の影響で疲れているみたいなの。たいした傷じゃないんだけど治してもらえる?」
白魔導士の女性は少し戸惑いながらも私の傷をすぐに治してくれた。彼女にお礼を告げると私とアジュダは治癒室の奥の部屋へと移動した。
「それで? 話したい事って?」
「実は……」
私は解呪された事を確かめるように首の傷跡を触った。
「服従の契約を結んでいたのはモーファではなくロディ様だったの」
予想に反し、彼女は驚く様子も見せず軽く息を吐いた。
「そうだと思ってた。第一あのモーファが呪具を扱えるわけないもの。でも一体どうしてロディ様はあなたに呪いなんか掛けたの?」
「彼はヴァレントを恨んでいる……」
私は過去に起こった出来事を彼女に伝えた。ロディの妹、ロアーナの死。そしてロディはヴァレントとジュイリア王女の所為で妹が死んだと思っている事。その復讐のために私を利用していた事。そして私はモーファだけでなくロディにも凌辱を受けていた事を彼女に明かした。
「レベリオ……」
アジュダは唖然とした表情で言葉を失っていた。それでも私は溢れ出る言葉を止める事は出来なかった。
「ようやく……ようやく言えた。私は……私はずっとヴァレントを裏切っていた。 彼はそんな私を少しも疑う事はなかった。だから彼が私を怪しむよう仕向けた。でも結局はロディの目論見は叶ってしまった……私は彼の心を傷つけてしまったの!」
ヴァレントの優しく微笑む顔が頭に浮かぶ。私はまるで赤子のように声を上げて泣いた。
「もう大丈夫。もう大丈夫だから」
アジュダが私を抱きしめ頭を撫でた。ようやく私は長い暗闇から抜け出せたような気がした。一頻り泣いた後、私はもうひとつの事実を彼女に伝える事にした。
「それとねアジュダ……実は私は聖女ではないの」
「ん?」
「私の本来の力は死霊魔術。母の死霊を使役していたの」
「はぁっ!? 母って、聖女センシア様って事?」
私が無言で頷くと彼女は額に指を当て考え込んだ。しばらくして彼女は納得の表情を見せた。
「確かにネクロマンサーならそれは可能だわね……」
「ただ……今の私は聖女の力を使えない。母の影の依り代にしていたペンダントをヴァレントに渡したから」
アジュダがわずかに目を見開いて私を見た。
「だからさっきは自分で治せなかったのね……でもどうして?」
「ネクロマンシーには死霊の記憶を見る事が出来る魔法があるの。あのプルジャとかいう子がきっと母の記憶をヴァレントに見せてくれるはず。そうすれば彼ならきっとロディの企みに気づくはず」
「待って! ロディの企みって? まだ何かしようとしているの!?」
「彼は王国を崩壊させようとしている。私の力を使って――」
私がロディの計画を彼女に伝えようとした、まさにその時だった。敵襲を報せる城門の鐘が激しく鳴り響いた。
おれとアンクバートは城門へと急いだ。そこにはすでに馬に跨った騎士団が集まっていた。
「デンデリオ! スタンピードか起きたのか!?」
「おお! ヴァレント様! はい、魔物の大群が北側より押し寄せております。すでに北の砦は突破されたとの事」
「おれとアンクバートも出る! 今すぐ全ての城門を閉じろ!」
おれ達が門の外に出ようとした時、突然大きな影が足元に射した。上空を見上げるとそこには巨大な竜が悠然と空を舞っていた。
「あれは……エンシェントドラゴン……」
アンクバートが生唾をゴクリと飲み込んだ。そしてゆっくりと羽ばたくその古代竜が大きな口を開け、王城に向かって炎を噴いた。
「レベリオ様を治療するんですか!?」
「ええ、ちょっと今彼女は解呪の影響で疲れているみたいなの。たいした傷じゃないんだけど治してもらえる?」
白魔導士の女性は少し戸惑いながらも私の傷をすぐに治してくれた。彼女にお礼を告げると私とアジュダは治癒室の奥の部屋へと移動した。
「それで? 話したい事って?」
「実は……」
私は解呪された事を確かめるように首の傷跡を触った。
「服従の契約を結んでいたのはモーファではなくロディ様だったの」
予想に反し、彼女は驚く様子も見せず軽く息を吐いた。
「そうだと思ってた。第一あのモーファが呪具を扱えるわけないもの。でも一体どうしてロディ様はあなたに呪いなんか掛けたの?」
「彼はヴァレントを恨んでいる……」
私は過去に起こった出来事を彼女に伝えた。ロディの妹、ロアーナの死。そしてロディはヴァレントとジュイリア王女の所為で妹が死んだと思っている事。その復讐のために私を利用していた事。そして私はモーファだけでなくロディにも凌辱を受けていた事を彼女に明かした。
「レベリオ……」
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「ようやく……ようやく言えた。私は……私はずっとヴァレントを裏切っていた。 彼はそんな私を少しも疑う事はなかった。だから彼が私を怪しむよう仕向けた。でも結局はロディの目論見は叶ってしまった……私は彼の心を傷つけてしまったの!」
ヴァレントの優しく微笑む顔が頭に浮かぶ。私はまるで赤子のように声を上げて泣いた。
「もう大丈夫。もう大丈夫だから」
アジュダが私を抱きしめ頭を撫でた。ようやく私は長い暗闇から抜け出せたような気がした。一頻り泣いた後、私はもうひとつの事実を彼女に伝える事にした。
「それとねアジュダ……実は私は聖女ではないの」
「ん?」
「私の本来の力は死霊魔術。母の死霊を使役していたの」
「はぁっ!? 母って、聖女センシア様って事?」
私が無言で頷くと彼女は額に指を当て考え込んだ。しばらくして彼女は納得の表情を見せた。
「確かにネクロマンサーならそれは可能だわね……」
「ただ……今の私は聖女の力を使えない。母の影の依り代にしていたペンダントをヴァレントに渡したから」
アジュダがわずかに目を見開いて私を見た。
「だからさっきは自分で治せなかったのね……でもどうして?」
「ネクロマンシーには死霊の記憶を見る事が出来る魔法があるの。あのプルジャとかいう子がきっと母の記憶をヴァレントに見せてくれるはず。そうすれば彼ならきっとロディの企みに気づくはず」
「待って! ロディの企みって? まだ何かしようとしているの!?」
「彼は王国を崩壊させようとしている。私の力を使って――」
私がロディの計画を彼女に伝えようとした、まさにその時だった。敵襲を報せる城門の鐘が激しく鳴り響いた。
おれとアンクバートは城門へと急いだ。そこにはすでに馬に跨った騎士団が集まっていた。
「デンデリオ! スタンピードか起きたのか!?」
「おお! ヴァレント様! はい、魔物の大群が北側より押し寄せております。すでに北の砦は突破されたとの事」
「おれとアンクバートも出る! 今すぐ全ての城門を閉じろ!」
おれ達が門の外に出ようとした時、突然大きな影が足元に射した。上空を見上げるとそこには巨大な竜が悠然と空を舞っていた。
「あれは……エンシェントドラゴン……」
アンクバートが生唾をゴクリと飲み込んだ。そしてゆっくりと羽ばたくその古代竜が大きな口を開け、王城に向かって炎を噴いた。
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