36 / 37
【第三章】王都国立学園へ
夜ご飯の準備
しおりを挟む暗闇の森は、栄養分を豊富に蓄えた植物が良く育つ。
回復薬のポーションに使われる薬草も質の良い物が採れる。それ故、木の実やキノコも市場に出回るものよりも栄養価が高く、立派なものが多い。
「レイ!この実、食べごろだよ!」
木登りの得意なルビーラビットが、赤い実が生っている木に登ってレイに伝えた。
彼らにとって、果実の食べ頃を見極めるのは朝飯前だ。
「こっちは、美味しそうなキノコがあるよ!」
セレリスも負けじと、木の根元に生っていたキノコを見つけ、近くを足で掘りながらレイに知らせる。
「二人とも張り切ってるわね。食べ頃のを見つけたら、このかごに入れていって」
そう言い、レイは背負っていたかごを置いた。
「は~い!セレ!どっちが多く集められるか勝負しよう!」
「うん。いいよ」
「じゃあ行くよ~。よ~い、どん!」
そう言うと二匹は木の実、キノコを採りに勢いよく駆けていった。
「離れすぎないでね」
時すでに遅し。レイが声を掛けた頃には、彼らの姿は彼方に消えていた。
「大丈夫かしら?」
レイは、彼らの事を心配しつつ、自身も食材調達を始めた。
採集から、およそ一時間が経った頃。
何事も無く、食材を集め終えたレイたちは、合流場所の湖に一足先に来て釣りをしていた。
「いっぱい取れたね!」
「私も、いつもより頑張った」
2匹が競走して採ってきた木の実やキノコは、かごいっぱいに入っている。
「2人とも、お疲れ、助かったわ。お陰で、今晩はたくさん作れるわ」
「やった!きょうは、何作る~?」
ルビーラビットは、彼女のそばでぴょんぴょんと嬉しそうに飛び跳ねる。
その横で、セレリスはレイの役に立てたと、満足げだ。
「なにがいい?」
レイが、二匹に晩ご飯は何がいいか聞いた。
「んー。あ!クルミのパンケーキたべたい!」
「それは、ご飯食べた後ね」
「は~い」
主食ではないと言われ、パンケーキをメインに食べたかったルビーラビットは肩を落とした。
「デザートに作ってあげるから」
彼の様子を見かねたレイは、慰めの言葉を掛けた。
「うん!」
その言葉を聞いた彼は、耳をピンと立て、元気を取り戻す。
「ねぇ、レイ。あたし、木の実のサラダ食べたい」
セレリスは、少し控えめにサラダを希望した。
「いいわよ。……他は、フェンが捕ってきてくれた後で考えようかしら」
レイがそう呟いた時、森の奥からこちらに向かって来る者の気配がした。
「レイ!今日はいい獲物が取れたぞ!」
森の中から姿を現したのは、黒い血にまみれたフェンだった。
血まみれの原因は彼が咥えている、獲物の返り血だ。その返り血で、もはやフェンなのか誰か分からない。
「暴れたわね」
レイは、フェンの姿を見て呆気にとられながら言葉を溢した。
「なかなかに、しぶとい奴だった。さぞ、こいつは美味いんだろうなぁ」
そう言いながらフェンは、咥えていた獲物をどしんと、降ろした。
獲物は、彼の体の半分ほどの大きさ。上等の大きさだ。
「最高に美味く作ってくれよ、レイ」
「そうね。今日はあえて、塩コショウだけで味付けしたステーキにしようかしらね」
「おお、ステーキか。いいな。ステーキは肉の旨さを直に感じられるから好きだ。今晩が楽しみだ」
フェンは、目を輝かせうきうきとした表情をした。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる