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【第二章】セレイム王国へ
つかぬ間の癒し
しおりを挟む「毛は柔らかいのだな」
コハクを撫でた感想を述べたセルビオス。
「はい。毛質は猫と変わらないです」
「いや、コハク殿の毛並みは、猫に勝るかもしれんぞ。とても触り心地が良い」
彼は、コハクの毛並みを絶賛する。
「毎日、ブラッシングしているので」
「そうか、そうか。」
セルビオスが楽し気にコハクを愛でていると、
「お父様!フィーリアもその子を撫でたいですっ」
謁見の間に、幼い可愛らしい声が響いた。
「これ、フィーリア。すまない、私の娘だ。挨拶なさい」
「初めまして。フィーリア・スィン・セレイムです」
セルビオスの後ろから現れたのは、プラチナブロンドの髪が緩く巻かれウサギのぬいぐるみを抱えた少女。
彼女の名はフィーリア・スィン・セレイム。セルビオスの娘であり、セレイム王国の王女だ。
ドレスの裾を持ち上げ、挨拶をする姿勢は、幼いながらとても様になっている。
「初めまして。レイです。よろしくね」
レイは彼女と同じ目線になり、挨拶を返した。
「この子お姉ちゃんの、契約獣?」
「ええ」
「あたしも触ってもいい?」
可愛らしく頼むフィーリア。その可愛らしさに、否と言える者は誰もいないだろう。
「大丈夫よ。優しく触ってあげて」
子ども相手だと話し方が少し丸くなるレイ。
「レイ殿は、子どもには優しいのだな」
そんな二人のやり取りを見て、独り言のように呟いたカイン。
……すねている。
「日頃からコハクの相手をしてるからじゃない?それがどうかした?」
「いや、別に?私には冷たかったのに、なんて思ってないが?」
カインは、完全にすねた子供と同じだ。
「子ども扱いしてほしかった?」
「ちがっ!」
「ふふ。冗談よ」
カインを揶揄うほど、レイは彼に慣れたようだ。
そんな二人のやり取りを見ていたフィーリアが、
「二人は、付き合っているの?」
と、純粋な疑問を投げかけた。
「恋仲か?」
セルビオスも会話に入る。
皆の注意がレイとカインに向く。
「へ?違いますよ!そのような関係ではございませんっ」
急いで、カインが弁明する。
「でも、カインいつもと違う」
「フィーリア様、私はいつも通りですよ?」
「ううん。違う。いつもより優しい目、してる」
フィーリィアは鋭いところを突いた。
「気のせいですよ~」
「そう?」
「そうです、そうです。さあ、コハク殿ともう遊ばれないんですか?」
「ん。遊ぶ」
フィーリアは、またコハクと遊び始めた。
「(って、何をこんなに焦っているんだ、俺は)」
自分のことに鈍感なカイン。気づくには、もう少し時間がかかりそうだ。
「(くくっ。やはりこやつ、面白い)」
そんなカインの様子を一人、楽しんでいた者がいたとかいないとか……。
あれからしばらくして、謁見の間を後にしたレイたち。
コハクがフィーリアの遊び相手をしている間に、これからの生活について話し合い諸々決め、来週から学園に通うことになった。
城内を歩く、三人。フェンは、人の姿のままだ。
コハクは、謁見の間を出る時に、黒ヒョウが城内にいると混乱を招くということで、召還陣に戻した。
「少し話し込んだわね」
「ああ」
レイの呟きを拾ったカイン。
「一つ聞きたいんだけど、竜騎士の人たちは治癒が終わったけど、聖竜たちは大丈夫なの?」
「緊急性は低いが、まだ傷が癒えていない聖竜たちがいると聞いている。だが、負傷している聖竜の一頭がとても気を荒立てているらしく、聖竜たちのいる竜舎に入るのに手こずっているそうだ」
「そう。とりあえず様子だけでも見に行けないかしら?」
「案内しよう。危険だと思ったら、迷わず手を引いてくれ」
「ええ。分かったわ」
三人は早急に、聖竜たちのもとへ向かった。
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