愛してるんだけど

大輔(万恵パパ)⑤

①

 子供達が元気に入場し、運動会の歌を歌い、体操する。毎年の流れだが、成長が感じられ嬉しい。初年度は台車に乗せられて入場して、泣いていたなぁ。大輔が涙ぐんで動画を撮っている横で、愛子が「駿斗くん、その後何ともなくてよかったよね」と呟いた。腎炎と言うと腰痛を連想しがちだが、子供はうまく症状を伝えることが出来ないし腰痛を伴わないこともよくあるとこの間熱弁していた。愛子のクリニックにも風邪かと思ったら腎盂腎炎という患者がたまに来るらしい。うーん、医者め。
 愛子とはその後、険悪なムードになることもなく普通に過ごしている。とりあえずこの間のりんご公園の解散時に大輔が全員にアイスを奢ったことで、なんとなく子供達のアイス攻撃は落ち着いた。不参加の子供達も「あ、遊べば買ってくれる意思はあるんだ」と思ってくれたのか、はたまた飽きたのかは知らないがおとなしい。もう絶対調子のいいことを言ってその場しのぎはしないぞと大輔は心に決めた。その誠意が伝わったのか。或いは美穂ちゃんとその後遊んでいないからからもしれない。今思えば確かに可愛い子と遊べることに浮かれて、普段より調子に乗っていた。愛子は何も言わないから、こうやって原因を想像して分析、考察するしかない。
 美穂ちゃんとはラインもしていない。勿論送りで会えば喋るが、それで十分だった。一方沙織ちゃんがよく連絡してくるようになった。最初はどうやって今の仕事に就いたのか教えてとかいう内容だったが、ラインしているうちに盛り上がって友情が生まれた。沙織ちゃんは就業に関してはスイミングスクールに落ち着く前の大輔状態だ。ダメダメだ。今ようやくまともになろうと努力をし始めそうなステージにいる。大輔も職が落ち着いたのは運が良かっただけだが、偉そうに仕事を長続きさせるコツなど持論を展開してみた。ついでに彼氏募集中というからうちの後輩の誰かを紹介しようかと持ちかけたら、貧乏は困るとのことで一蹴された。他にもさくらちゃんのお母さんともライン交換した。愛子が交換しないまま解散しようとしたから大輔が一肌脱いだかっこうだ。愛子の人付き合いは本当にもどかしい。とりあえず最近は本当に大輔がママ友担当になっているわけだ。