愛してるんだけど

沢麻

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大輔(万恵パパ)③

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 その日から保育園に行く度に、大輔はクラスの子供達に「いつアイスを食べに行くんだ」だの「うちのママにもちゃんと約束してくれるのか」だの言われるようになってしまった。子供達のアイスへの執念、園外で友達と遊ぶことへの執念をなめていた。申し出てくる子達全員とアイスを食べに行くのは相当ハードルが高い。クラスのママ達全員と友達のように気楽にライン出来るかと言われると、フレンドリーが服を着て歩いているような大輔でもイエスとは言えない。更に騒動は大輔で止まらず、なんと愛子にも派生してしまった。保育園への迎えは愛子が担当しているが、子供達は容赦なく愛子にも同様にアイスを要求するようになった。愛子は何も言わないが、万恵が教えてくれた。しまった。愛子は絶対大輔の無責任な言動にうんざりしている。この分だと美穂ちゃんにも余波がいっている可能性大だ。
 《お疲れ様ー。なんか、保育園の子達が俺たちが遊んだときのことみんな知ってて、みんなアイス食べに行こうって言い出したんだけど美穂ちゃんにも迷惑かけてない? どうしたらいいかな》
 大輔は昼休みに思いつきでラインしたが、まったく意味のわからない文面になってしまった。一体自分が何をしたいのかわからない。
 「大輔コーチ、今日四時間目の佐藤駿斗君休みの連絡入りました」
 事務の女の子が話しかけてきた。駿斗。そういえば最近保育園で見かけない。風邪だろうか。
 「どうしたとか言ってた?」
 「熱が続いてるって」
 「熱か」
 沙織ちゃんにも子供達の対処について相談したかったが、それどころではなさそうだ。
 ラインを確認すると、美穂ちゃんから返事がきていた。
 《大丈夫ですよー》
 《別件で相談したいことあるんですが、今度の日曜日は忙しいですか?》
 え。
 なんだか違った展開になってきた。日曜日は家族でピクニックにでも行こうかと思っていた。どうしよう。こんなに頻繁に結ちゃんと遊ぶのもどうなんだろう。
 《帰って予定みてみるね》
 愛子に相談しよう。愛子は結ちゃんと遊ぶこと自体は、嫌ではないよな? ママ友付き合いとは、こういう意味で面倒なのか。他との調整が生じすぎる。愛子がはなからそれを投げていたのは、まさかこういう面倒を避けてのことだったのか。
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