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沙織(駿斗ママ)②
⑤
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店は二時頃出た。眼鏡君がタクシーを探している。あれから今までのセックスの話ばかりした。これからホテルに行きそうな空気になっている。
しかしそんな時、電話がきた。エリーだった。
一瞬無視しようかと思ったが、わざわざ電話してくるとは、まさか駿斗のことかと思い、出ることにした。
「サリー、駿斗、熱がすごいよ。うなされてるよ。遊んでないで戻っておいで」
「……まじか」
「母ちゃん、母ちゃん言ってるよ」
そろそろ下がることを期待していたが、思うようにはいかないらしい。沙織は眼鏡君に、帰ることを告げた。
「子供いるの?」
眼鏡君が言った。エリーは声がでかいから、聞こえていたのかもしれない。あぁ、眼鏡君とは縁がなかったんだ。いいじゃないか。眼鏡君は遊び目的だし、今更隠しておく必要はない。
「うん」
「シングルマザーか」
眼鏡君はニヤニヤしていた。子供がいるくせに、男漁りをしているバカな母親。そういう目で見ているのだろうか。事実、そうだ。病気の子供を放っておいて、酷い女だ。でも眼鏡君は沙織にとって、駿斗を放置してセックスしなければいけないような価値はない。
「ごめん」
沙織はエリーの家の方に走った。駿斗。ごめん。
もう眼鏡君は来ないだろう。また一から恋人探しだ。でもその前に、駿斗に元気になってもらわなければ。これは土曜午前に受診したほうがいいだろうか。せっかくスイミングを始めたのに、月曜日までに治らないかもしれない。
エリーの家についた。駿斗の所に行くと、確かにうなされて辛そうだ。
「駿斗、お仕事終わったよ」
沙織は声をかけた。駿斗は薄目を開けて、うっすら笑った。
「どうする? サリーも泊まってく?」
エリーが声をかけてきた。いや、帰ろう。
「ありがとう。でも朝になったら受診するから、帰る。もう熱、四日目なの」
「ほんと? 長くない?」
「そうなの」
四歳にしては、長い。ただの風邪ではない。それなのに沙織は何をしていたのだろう。沙織は駿斗から離れてはいけないのだ。離れるとすぐ母親であることを忘れてしまう。駿斗を守らなければならないことを、決して忘れてはいけないのだ。そう思った。
しかしそんな時、電話がきた。エリーだった。
一瞬無視しようかと思ったが、わざわざ電話してくるとは、まさか駿斗のことかと思い、出ることにした。
「サリー、駿斗、熱がすごいよ。うなされてるよ。遊んでないで戻っておいで」
「……まじか」
「母ちゃん、母ちゃん言ってるよ」
そろそろ下がることを期待していたが、思うようにはいかないらしい。沙織は眼鏡君に、帰ることを告げた。
「子供いるの?」
眼鏡君が言った。エリーは声がでかいから、聞こえていたのかもしれない。あぁ、眼鏡君とは縁がなかったんだ。いいじゃないか。眼鏡君は遊び目的だし、今更隠しておく必要はない。
「うん」
「シングルマザーか」
眼鏡君はニヤニヤしていた。子供がいるくせに、男漁りをしているバカな母親。そういう目で見ているのだろうか。事実、そうだ。病気の子供を放っておいて、酷い女だ。でも眼鏡君は沙織にとって、駿斗を放置してセックスしなければいけないような価値はない。
「ごめん」
沙織はエリーの家の方に走った。駿斗。ごめん。
もう眼鏡君は来ないだろう。また一から恋人探しだ。でもその前に、駿斗に元気になってもらわなければ。これは土曜午前に受診したほうがいいだろうか。せっかくスイミングを始めたのに、月曜日までに治らないかもしれない。
エリーの家についた。駿斗の所に行くと、確かにうなされて辛そうだ。
「駿斗、お仕事終わったよ」
沙織は声をかけた。駿斗は薄目を開けて、うっすら笑った。
「どうする? サリーも泊まってく?」
エリーが声をかけてきた。いや、帰ろう。
「ありがとう。でも朝になったら受診するから、帰る。もう熱、四日目なの」
「ほんと? 長くない?」
「そうなの」
四歳にしては、長い。ただの風邪ではない。それなのに沙織は何をしていたのだろう。沙織は駿斗から離れてはいけないのだ。離れるとすぐ母親であることを忘れてしまう。駿斗を守らなければならないことを、決して忘れてはいけないのだ。そう思った。
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