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俺は日曜日の他にも、水曜日も半日休みがある。だいたい買い出しに出かけ、残りの時間は掃除をして終わる。買ったものを冷蔵庫に入れたりそれぞれの場所にしまったりしている時、ティッシュを買い忘れたことに気が付いた。記憶力だけが取り柄だったが、最近忘れっぽい。もう四十代だから仕方ないのかもしれない。もう一度GT-Rの鍵を握ったが、天気がいいことに気付いて歩いて再出発することにした。たまには歩いて買い物も悪くないかもしれないなどと思っていたら、ちょうど息子の同級生のアヤカちゃんのママが庭に出ていた。
「こんにちはー」
アヤカちゃんのママは社交的で、すぐに俺に気付いて挨拶をしてくれた。俺も会釈する。ついでに庭を見ると、庭だと思っていたのは畑で、たいそう作物が実っている。
「家庭菜園ですか」
「ええ。普段日曜日しかできないんですけど、アヤカが今日熱で呼び出されたので、今のうちに収穫しようと思って」
アヤカちゃんのママは大きなボールを手にしており、その中にはトマトやきゅうりといったよくあるものをはじめ、あまり見たことのない葉ものなどもたくさん入っていた。
「すごいですね」
俺は素直にそう思った。
「いやいや、他に楽しみないですからね。庭で金かけずにできることっていったらこのくらい。子供たちも庭でとれた野菜と聞くと食べますしね」
アヤカちゃんのママは気さくに教えてくれた。俺がさっきスーパーで随分な金額をはたいて買ったものが、いくらでもとれそうだった。
「少し持っていきます?」
「えっ?」
俺が返事をする前にアヤカちゃんのママはトマトときゅうりとピーマンをビニール袋に入れてくれた。妻と息子はピーマンが嫌いなのであまり買わないが、俺は本当にありがたくいただいた。
「ママー」
窓からアヤカちゃんが顔を出した。髪はぐちゃぐちゃで顔も赤く、風邪なのだということを思い出す。
「アデノウイルス。コースケ君も気をつけてね」
アヤカちゃんのママはそう言うと家の中に戻っていった。
息子はやたらと感染症に強く滅多に保育園から呼び出されることはないのだが、呼び出された場合俺と妻とどちらが仕事を犠牲にして息子といるかというと実は俺なのである。八割俺が休む。ただ、何か重大な病気が疑われる場合のみ妻が休み病院に連れていく。
アヤカちゃんちは、ママが休んでいる。
やはりうちはおかしいに違いない。平等に子育てに関わろうねという方針はあったが、平等どころか不平等ではないか。俺が非正規雇用で好きでもない仕事をやっているからといって、妻が正規雇用でバリバリ働いているからといって、俺ばかりが家事や育児をするのはやはりおかしいではないか。
「こんにちはー」
アヤカちゃんのママは社交的で、すぐに俺に気付いて挨拶をしてくれた。俺も会釈する。ついでに庭を見ると、庭だと思っていたのは畑で、たいそう作物が実っている。
「家庭菜園ですか」
「ええ。普段日曜日しかできないんですけど、アヤカが今日熱で呼び出されたので、今のうちに収穫しようと思って」
アヤカちゃんのママは大きなボールを手にしており、その中にはトマトやきゅうりといったよくあるものをはじめ、あまり見たことのない葉ものなどもたくさん入っていた。
「すごいですね」
俺は素直にそう思った。
「いやいや、他に楽しみないですからね。庭で金かけずにできることっていったらこのくらい。子供たちも庭でとれた野菜と聞くと食べますしね」
アヤカちゃんのママは気さくに教えてくれた。俺がさっきスーパーで随分な金額をはたいて買ったものが、いくらでもとれそうだった。
「少し持っていきます?」
「えっ?」
俺が返事をする前にアヤカちゃんのママはトマトときゅうりとピーマンをビニール袋に入れてくれた。妻と息子はピーマンが嫌いなのであまり買わないが、俺は本当にありがたくいただいた。
「ママー」
窓からアヤカちゃんが顔を出した。髪はぐちゃぐちゃで顔も赤く、風邪なのだということを思い出す。
「アデノウイルス。コースケ君も気をつけてね」
アヤカちゃんのママはそう言うと家の中に戻っていった。
息子はやたらと感染症に強く滅多に保育園から呼び出されることはないのだが、呼び出された場合俺と妻とどちらが仕事を犠牲にして息子といるかというと実は俺なのである。八割俺が休む。ただ、何か重大な病気が疑われる場合のみ妻が休み病院に連れていく。
アヤカちゃんちは、ママが休んでいる。
やはりうちはおかしいに違いない。平等に子育てに関わろうねという方針はあったが、平等どころか不平等ではないか。俺が非正規雇用で好きでもない仕事をやっているからといって、妻が正規雇用でバリバリ働いているからといって、俺ばかりが家事や育児をするのはやはりおかしいではないか。
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