ハルホール

沢麻

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俺と美代さん③

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 本当は俺は、ブラックタイガーを飼いたいと思っている。対抗意識を燃やしてはいるが、本当はブラックタイガーが可愛くて好きで、穴を開けてみたい。実は美代さんに嫉妬している。美代さんも俺同様、ブラックタイガーになめられていると思う。無条件に食べ物を提供してくるなど、いいカモだ。しかし餌付けという手段によって、自分とブラックタイガーの関係を明確にしている点が羨ましい。俺が毎朝公園に行く本当の理由はきっと、美代さんに便乗してブラックタイガーを自分のものにしたいからだ。
 本当に欲しいものは、きっと手に入らないようにできているんだ。
 そう割りきればいい。それが出来れば俺は夕希を忘れ、前の職場を忘れ、ブラックタイガーを忘れて、新たな一歩を踏み出せる気がする。
 ごちゃごちゃ考えていたら、なんだか自分以外の生きている肉に穴を開けたくなってしまった。午後八時。俺にとっては朝だ。
 俺は久しぶりにスウェット以外の服を出し、身に付けた。一応ブランドものの服だ。髪の根元が黒くて気持ち悪いので帽子を被る。夜なのにサングラスをかけると、俺のお洒落は完了した。いや、変装か。スウェットの俺は夕希に未練たらたらの無職の変態だが、このように着飾ると、とりあえず夕希への未練も無職ということもマスキングされる。
 家を出て、タクシーを拾おうと国道沿いに出た。すると珍しく、こんなところにブラックタイガーがいた。冷たい目で俺を見ている。お前か夕希が俺のものになれば、俺だってこんなことしない。なんだかリサと付き合い出したときのような心境になった。少し後ろめたい気分でタクシーを拾い、俺はタダ肉を求めて繁華街へ向かった。
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