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大魔王
①
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久しぶりの登校中、前をよたよた走っているショートカットが万夢だと気付くまで時間がかかった。髪の毛を切ったと聞いていた。
「おっ。男子かと思ったぞ」
優吾は挨拶代わりに声をかけて、追い越した。万夢はキッと優吾を睨んだ。やはり怒っているらしい。
潤二郎が万夢にコクったのは、どちらからも聞いていた。しかしスパッと決着がついたわけでもなく、万夢は嫌だからと曖昧にはぐらかし、潤二郎は合格してからの返事になるとウキウキしている。潤二郎は他に何人もお気に入りの女子がいるわけだからはっきり断ったっていいと思うのだが、塾で顔を合わせるとか色々今後の生活の支障を考えた万夢は一人無駄に悩んでいて不憫だった。でもここで、お前以外にも好きな子いるから大丈夫だぞー、と言ったらむしろバカにされたとキレるのは目に見えている。難しいもんだ。
万夢は、一條が好きなんだと思うよ。
関口の言葉が甦った。やっぱりそうなんだろうか。だからってどうすりゃいいんだ。他の男にコクられたことを怒るような、そんな感情は正直沸かなかったのだが。
校門近くまで走ったら今度は関口がいた。髪の毛が黒い。でもリュックでわかった。
「おい! 遅刻遅刻! 走るんだ!」
こっちにもおはよう代わりに声をかけた。振り向いた関口があまりに可愛くて、優吾は思わずガン見した。
「一條、よくなったんだ。おはよう」
「あぁ、熱なんて何日もねぇよ。でもほら、インフルは日数のあれがあるから」
「そっか。元気そうでよかったよ」
二人で下駄箱で靴を履き替えた。言いたくなったから、言ってみる。
「……髪の毛黒いの、似合うな」
なんだかすごく幼くなった。守ってあげたくなるような、可愛い外見に変わっていた。
「でしょ。でもね、みんなまだ魔王って呼ぶよ。今や全然魔王じゃないのにね」
関口は笑った。劇をきっかけに、関口はみんなの輪に入れるようになっていた。魔王になって、本当によかった。
「あーっ、優吾来たー」
クラスメイトたちに見つかった。久しぶりの学校だ。やっぱり楽しい。家で缶詰めは、きつかった。
優吾以外にも二人、インフルエンザで休んでいた。まぁもう発表会も終わったから、是が非でも出席しなきゃいけない行事はないのだが。これからはあと少しのこのクラスでの時間を大事にしていく段階だ。
「おはよう」
ギリギリで万夢が教室に着いた。前からじっくり見たが、ショートも悪くなかった。潤二郎はこの髪型を見て気に入ってあんなラインをしたらしい。でもやっぱり、体格も相まって、中性的だ。
「おっ。男子かと思ったぞ」
優吾は挨拶代わりに声をかけて、追い越した。万夢はキッと優吾を睨んだ。やはり怒っているらしい。
潤二郎が万夢にコクったのは、どちらからも聞いていた。しかしスパッと決着がついたわけでもなく、万夢は嫌だからと曖昧にはぐらかし、潤二郎は合格してからの返事になるとウキウキしている。潤二郎は他に何人もお気に入りの女子がいるわけだからはっきり断ったっていいと思うのだが、塾で顔を合わせるとか色々今後の生活の支障を考えた万夢は一人無駄に悩んでいて不憫だった。でもここで、お前以外にも好きな子いるから大丈夫だぞー、と言ったらむしろバカにされたとキレるのは目に見えている。難しいもんだ。
万夢は、一條が好きなんだと思うよ。
関口の言葉が甦った。やっぱりそうなんだろうか。だからってどうすりゃいいんだ。他の男にコクられたことを怒るような、そんな感情は正直沸かなかったのだが。
校門近くまで走ったら今度は関口がいた。髪の毛が黒い。でもリュックでわかった。
「おい! 遅刻遅刻! 走るんだ!」
こっちにもおはよう代わりに声をかけた。振り向いた関口があまりに可愛くて、優吾は思わずガン見した。
「一條、よくなったんだ。おはよう」
「あぁ、熱なんて何日もねぇよ。でもほら、インフルは日数のあれがあるから」
「そっか。元気そうでよかったよ」
二人で下駄箱で靴を履き替えた。言いたくなったから、言ってみる。
「……髪の毛黒いの、似合うな」
なんだかすごく幼くなった。守ってあげたくなるような、可愛い外見に変わっていた。
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関口は笑った。劇をきっかけに、関口はみんなの輪に入れるようになっていた。魔王になって、本当によかった。
「あーっ、優吾来たー」
クラスメイトたちに見つかった。久しぶりの学校だ。やっぱり楽しい。家で缶詰めは、きつかった。
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「おはよう」
ギリギリで万夢が教室に着いた。前からじっくり見たが、ショートも悪くなかった。潤二郎はこの髪型を見て気に入ってあんなラインをしたらしい。でもやっぱり、体格も相まって、中性的だ。
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