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転校生
⑤
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万夢はとりあえず優吾に言われてベッドに横になった。スマホ依存の女子たちは一旦帰宅して、スマホを持って公園に集合するらしい。万夢は仮病を使ってしまったから、今日は仲間に入れない。
ほんとにこれでよかったのかなぁ、と思った。万夢だったら、みんなに注目されるのは嬉しいが、茉莉沙は違うのか。
「変わった子だよね、マリサ」
「ああ髪色ね」
勝手知ったる優吾は横に座って弟の漫画を読み始めた。ていうか髪色のことじゃないんだけど……。
「なんであの髪なの?」
「知らね。質問したら別にって言われた」
「別に、か」
「あれ口癖なんだな。別に。ベツニちゃん」
「やめなよ変なあだ名」
「明日こそ家を突き止めるぞ」
優吾はそう言うと漫画を置いて立ち上がった。
「公園行くわー」
「漫画片付けてよ」
万夢も公園に行きたい。やっぱりバカなことをしたかもしれない。優吾は最後に「お大事に」と言い残して、家を出ていった。
「ちょっと夕飯の時はスマホしまいなさいよ」
ママに怒られた。しかし帰宅後のこの時間帯からグループラインが盛り上がるのに、持ってこないなんて無理である。とりあえず膝の上に下ろした。
話題は当然茉莉沙のことだった。ユヅキはやはり、あの髪の毛変とか、愛想がないとか書いていて、他の面々もやんわり同意している。万夢も何か書いたほうがいいと思い、《けっこう恥ずかしがり屋かもよ》と書いてみた。書いてからそうだ、恥ずかしいんだ、と納得する。恥ずかしいから注目されたりするのが嫌なんじゃないかな。すると否定的なスタンプの嵐だ。《恥ずかしがり屋であの髪はない》とか。
「あっ万夢またラインしてる」
「やばっ」
弟に見つかった。ママが鬼の形相でやってきて、スマホを取り上げた。
「ちょっと返して」
「返してじゃないでしょ! 食べ終わってからにしなさい」
「他のみんなはスマホ見てるもん! 食事中も見ていいって言ってたもん」
「うちは駄目なの!」
「じゃあそのことグループに書くから返して! 書いたらほんとにしまうから」
必死の訴えも虚しく、スマホは没収された。明日、ママが帰宅するまで戻って来ない。泣きそうになっていたら「夕飯残したらもう二度と返さない」などと追い討ちをかけられ、味なんてまったくわからなくなったがとりあえず食べた。仮病、まだ使っておけばよかった。
スマホがないと何をしていいかわからない。最近まで、どうやって過ごしていたんだっけ。優吾や茉莉沙は、どうやって過ごしているんだろう。
ほんとにこれでよかったのかなぁ、と思った。万夢だったら、みんなに注目されるのは嬉しいが、茉莉沙は違うのか。
「変わった子だよね、マリサ」
「ああ髪色ね」
勝手知ったる優吾は横に座って弟の漫画を読み始めた。ていうか髪色のことじゃないんだけど……。
「なんであの髪なの?」
「知らね。質問したら別にって言われた」
「別に、か」
「あれ口癖なんだな。別に。ベツニちゃん」
「やめなよ変なあだ名」
「明日こそ家を突き止めるぞ」
優吾はそう言うと漫画を置いて立ち上がった。
「公園行くわー」
「漫画片付けてよ」
万夢も公園に行きたい。やっぱりバカなことをしたかもしれない。優吾は最後に「お大事に」と言い残して、家を出ていった。
「ちょっと夕飯の時はスマホしまいなさいよ」
ママに怒られた。しかし帰宅後のこの時間帯からグループラインが盛り上がるのに、持ってこないなんて無理である。とりあえず膝の上に下ろした。
話題は当然茉莉沙のことだった。ユヅキはやはり、あの髪の毛変とか、愛想がないとか書いていて、他の面々もやんわり同意している。万夢も何か書いたほうがいいと思い、《けっこう恥ずかしがり屋かもよ》と書いてみた。書いてからそうだ、恥ずかしいんだ、と納得する。恥ずかしいから注目されたりするのが嫌なんじゃないかな。すると否定的なスタンプの嵐だ。《恥ずかしがり屋であの髪はない》とか。
「あっ万夢またラインしてる」
「やばっ」
弟に見つかった。ママが鬼の形相でやってきて、スマホを取り上げた。
「ちょっと返して」
「返してじゃないでしょ! 食べ終わってからにしなさい」
「他のみんなはスマホ見てるもん! 食事中も見ていいって言ってたもん」
「うちは駄目なの!」
「じゃあそのことグループに書くから返して! 書いたらほんとにしまうから」
必死の訴えも虚しく、スマホは没収された。明日、ママが帰宅するまで戻って来ない。泣きそうになっていたら「夕飯残したらもう二度と返さない」などと追い討ちをかけられ、味なんてまったくわからなくなったがとりあえず食べた。仮病、まだ使っておけばよかった。
スマホがないと何をしていいかわからない。最近まで、どうやって過ごしていたんだっけ。優吾や茉莉沙は、どうやって過ごしているんだろう。
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