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六年後
十二
しおりを挟む「掴まれ」
喜録は蓮嶺の前で背中を差し出すようにしゃがんだ。
「んなフラフラでどこにいくっつーんだよ」
ぎろり、と機嫌の悪そうな蓮嶺は自分の背よりも低い位置にある喜録の顔を睨み下ろす。
「俺の背の中だけでも休め」
「テメェなんかの背で何が休まる」
機嫌が悪そう、ではなく本当に悪いらしい。
刺々しい小さな主の態度にはもう慣れた。
もともと、苛立ちや八つ当たりをぶつける場所なんてないに等しい蓮嶺のこの様子はかなり珍しい。
「あんたのことは、この命に代えても必ず守るから」
それは、この6年で芽生えた強い思いの一つ。
「あんたが殺せというのなら、殺してこよう」
喜録が真っ直ぐ見据えた先にあるのは、蓮嶺の揺れ泳ぐ瞳。
きっと、言ってしまった言葉の刺々しさに傷付いているのは蓮嶺自身で、喜録の言葉に照れてもいるのだろう。
「ーーどうする?」
優しげに放たれた声に、蓮嶺は素直じゃなく悔しげに拗ねたように顔を歪めて喜録を睨んだ。
「乗る」
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