凛とした君に重ねる。

まさつもち

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Find the truth

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「僕はね、山科くんと相川くんが睨む先に何があるのかを知りたいんだ」

「…睨む先?」

ロワさんは困ったように首を傾げて笑う。

「山科くんや相川くんの身の回りで、不思議な話をきいたことはない?」

不思議な、話。
あの2人は不思議だらけでなにか、なんていわれてもわからない。 

困惑したまま、ロワさんを見上げるとヘラッと笑う。

「僕が出した封筒の中に、僕のIDがあるから連絡してもらえるかな?」

もらった白い封筒を取り出し、あるところに目がいった。

前は気づかなかったけど…

「差出人の欄に書いている文字、脱字ですか?」

指さして尋ねると、ロワさんは目を見開いて封筒を食い入るように見た。

「あなた、が、しりたい、を、教え、ましょう」

読み上げていくも、ロワさんは眉間に皺を寄せる。

「僕はどこを間違えてしまったのかな?」

「え?この貴女が知りたいを、のところ…
書くなら知りたいことを、とかじゃないですか?」

ハッとめを見開いたまま固まったロワさんは両手で頭をかかえた。

「日本語の文字は難しいネ」

恥ずかしそうにコホン、と咳をしてみせるロワさんに私の疑問が膨らむ。

「ロワさんは外人さんなんですか?」

「そうだよ、日系フランス人で在日歴5年かな」

「5年!!?」

5年で、日本人よりも難しい日本語を扱うフランス人…
すごすぎる。

「相川くんにも言われるんだ、『何で勉強したのかはわからないけど、今の日本人じゃ使わないキザ用語を使っていて気持ち悪い』って…」

しくしくとなくふりをみせるロワさんに同情した。

ひどい。
それはひどいよ、相川くん…。






「瑞穂ちゃんおはよう、今日は鯛の煮付けだよ」

ふわり、と柔らかく笑む相川くんはいつもと変わらない。

「おはよう、ございます」

ついつい改まって返してしまった。
目をパチクリと丸めた相川さんはふ、と口角を上げた。

「どうしたの?8回目だよ、敬語」

「あ、わすれてた」

しばらく、相川くんに敬語を使っていなかったから忘れていた。

「おはよ、」

スーツ姿の山科さんは藍くんを抱えてリビングに入ってきた。

「おはよ~」

眠い目を擦って、藍くんは笑う。

ロワさんの話をきいた後に、この光景を見るのは不思議。
関係性が異様だ。

「…そういえば、なんで山科さんは相川くんのごはんを食べに毎朝きてるんですか?」

私の問いに、一瞬固まった2人は顔を見合わせる。

「いつの間にか当たり前になってたや…なんで?」

「…相川の料理が美味いから」

確かに、相川くんの作る朝食は逸品だけど…
上手くかわされてしまったきがする。

「なんでそんなこと聞くの?」

にこやかなまま、首をかしげる。

「慣れてしまって何も思わなかったけど、よくよく思ったら不思議な光景だなって思って」

「確かにそうだよね、シンパパに大学の先輩1人だし。違和感あるよね」

相川くんは山科さんに顔を向けた。

「先輩、明日から別飯で!」

「送ってやんねーぞ」

「すみませーん」

いつもなら面白いやりとりなのに、
今日はなんか笑えないや。



 


「ごめん瑞穂ちゃん、」

両手を合わせ、相川くんは頭を軽く下げた。

「今から明日のお昼まで藍を預かってもらえないかな?」

とても申し訳なさそうにする相川くんに私は頷いてみせた。

「いいけどどこかにいくの?」

「うん、仕事に」

仕事?
相川くんの仕事が何なのか聞いた事がない私は首を傾げた。

「ほら、初めて会ったときにいたおじさんたちいたでしょう?」

「おじさんたち……あ!!」

医学研究会、の人たちだ。

「それと、藍を預かってもらうことは山科先輩には内緒だよ。うるさいから」

あれ、おかしいな。

山科さんに医学研究会を辞めるように言った人が、
医学研究会に何しに行くの?

ーー「医学会に体を差し出してるから」

相川くんの言葉が脳内に蘇る。

これなの?
ロワさんが知りたがっている不思議なことって。


知りたくて知りたくて生き急ぎそうな高ぶりを必死に抑える。

「…行ってらっしゃい…」

山科さんを医学研究会から追い出した相川くんが、
医学研究会を手伝うなんて

そんなひどい話。


私は聞き逃すことなんてできない。

凛に協力して追い出したってことは、
相川くんは凛の浮気相手だったんじゃないの? 

そんなこと、許せない 


どす黒い感情が、
私を支配する。 
 
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