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I'm a housewife
③
しおりを挟む相川さんからはいろんな話を聞いた。
相川さんも私と同じ21歳で
医者を目指すべく医大に通っていて
医学会は研究対象として繋がりがあるそうだ。
何を研究されているかは話してくれなかったけど。
仲良く話す私たちを睨んでいたのが嫌味の女性…ヒカリさんだった。
「相川くん、彼女ねー子持ち主婦なのよ? 大変よね、家計のためにキャバクラで働かなきゃいけないなんて!」
店内が、静まり返る。
えっと、確かキャバクラでお客さんに子供はまだしも旦那がいる話はしちゃダメだってさっき店長が…
店長に目を向けると、逸らされた。
「ほんと、大変だね。こんな店にこなきゃいけなくなるくらい追い詰められて…」
相川さんはご苦労様、と私の頭をポンポンと撫でる。
「子供は男の子?」
「え?はい…」
「俺もね、2歳の息子がいるんだ」
その言葉に、ちょっと残念な気持ちが込み上げた。
そりゃこんなかっこよかったら奥さんぐらいいるよね…。
「結婚なさってたんですか…」
「んーん!未婚だよ。子供だけもらったの」
え?どういう状況だろうかそれは…。
「あ、そうだミホちゃん。俺が大学行ってる間さ、家事とか息子みてくれない?」
「えぇ!?」
いきなりの話に私は困惑した。
「こんなバカがいっぱいいる店より割良く出すよ。日給5万でどう?なんならミホちゃんの息子ちゃんも連れてきていいし」
「5!?えぇ!?お酒の席のでたらめとかじゃ …」
「本気だよ。番号交換いい?」
携帯を取り出した相川さんは私の差し出したケータイを手にしてテキパキと操作した。
あれ?なんで私のパスコードがわかったんだろ…
「はい、ミホちゃん着替えてきて。今から案内するから」
「え?今からですか!?」
「そうだよ。それともこんな店で働きたい?」
相川さんの問いかけに、私は首を振って応えた。
急いで着替えのあるメイクルームへ走った。
「はい店長さん。彼女の時給用意しておいてくださいね?あなたの不手際に不信感を抱いていなくなるんだから」
相川さん、かなりお強いです。
着替え終わり、フロアに出ると相川さんが手招きしてくれた。
「理事長すみません、お先に失礼しますね」
「はい、気をつけて帰ってくださいね」
店長から3時間分の給料を受け取り、 相川さんの手に引かれるまま店を出た。
店を出てすぐの駐車場に停めてあった大きな車…ワンボックスカーに誘導された。
「相川さん、お酒…」
「飲んでないよ?」
あ、そう言われてみたら確かに。
相川さんはずっとお茶を飲んでいたような気がする。
「さ、いくよ」
車に揺られながら運転する相川さんは私に話しかけ続けた。
「ミホちゃん本名は?」
「瑞穂です」
「可愛い名前だね。旦那さんはどうしてるの?」
「……たぶん女のところへ」
「はー?浮気?なんで怒らないの?」
「怒ったら殴られちゃうので…」
「はぁ?」
相川さんの声のトーンが下がる。
「なんでそんな男と別れないの?」
「別れたい……けど……別れてくれないんです」
何度もしている別れ話。
その度にボコボコにされ、子供に手を出される。
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