魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第24章 ドラゴニックエスタ トライアル

第１２５２話 暇なはずだが、仕事を探してしまうワーカーホリック

　そして、首都マントルシュに帰ると、不動産屋を紹介しこっちしばらく建て替える事で…言えをレンタルしてもらった。その時に分かったのが…地味にこの不動産システムがかなりのゲームナイズドだ。というのも、住宅の規模を言って…予算が決まると首都内部に家が”生成”される。今回は勇者のリント君とメイドさん。そしてドランが一緒に暮らすために…郊外の一軒家を選択。そうした所…なんとニャオ君の隣にあるはずのない一軒家が生成された。これはびっくりだった。余りにあっさり、だったので、違和感に気が付かなかった。そして…。
「頼みたいことがある。」
　不動産確認後、ほぼニャオと一緒の間取りであることを確認した直後にドランが…頭を下げていた。
「何だ？」
「家具を一式注文したい。」
「何言ってるんです？防具屋でしょ？」
「いや？」
「構わんが、システム上の家具で使えないならという条件が付くぞ。」
「どういう事じゃ？」
「家具もこのゲームだとシステムになっている。例えば豪華さの数値アップとか。そういう数値が付くことになっている、ゲームシステムに家具が全部紐ついている。」
「椅子もか？」
　流石に…勇者君も挟んできた。
「そう思われるって事だ。システムに合わせた制作をしないと…システムに合わせた恩恵を受けれない。私がその類を持っているか…。」
「そういう事なら…。」
　なんかドランの笑みが、深く、悪だくみの顔になってきたぞ。
「恩恵突き家具の依頼をするのじゃ。」
「何でだ？」
「これもゲームの家じゃ。当然。システム的にできるようになっておるじゃろ。だがそこにお主は到達しておらん。という意味と見た。」
　そう言えばそうだ。ゲームの世界なら、その道理に合わせた制作方法があるはずだ。
「それを探ってみるのも面白いものではないのか？」
「ああ、分かった。それでいいぞ。」
「後で正式な依頼をギルドに指名で出しておくのじゃ。頼む。」
「ただし…その中に風呂は含まれないがいいな？」
　その時…交渉の空気が凍ったのが感覚的にわかった。
「どういう事じゃ！なんで風呂がないのじゃ！？」
「いや、それがどういう事か分かってるのか！？」
　勇者と二人で血相変えなくても。
「落ち着いてください。リント様。」
　メイドさんは気が付いていないようだな。
「いやあ、さっき言っていた仕事の話がそれだからだ。こっちに風呂の概念が無く、風呂屋もサウナもない。井戸から水を汲んできて体を洗うのが歳での習わしだ。」
「坊ちゃま、水浴びがしたいのでございますか？」
「あ…ああ…ああー！」
　勇者も気が付いたようだ。
「私も家を借りた際に家具を見に行った。が無くてな。それで自作したんだ。」
「例えば？」
「ハンキングチェアとか、後ハンモック。とかだな。」
「詐欺じゃの！」
「いやそれは…。」
「無いなら作れば売れると思わないか？」
「でも…。」
　ただ、そう、現代社会における快適な家というのは地味に…職人たちの絶え間ない工夫の産物である。ゆりかごみたいな椅子や程よい角の取られた机。その多くは・・・。
「この方の職業は何でございますか？何屋さんと呼べばよろしいので？」
「ああ、こいつは建築家じゃ。家関連のスペシャリストじゃ。じゃから簡単だと思っていたわい。じゃがそうなると、この家…井戸はあるが水道はないし。中世じゃがかなり…なんか気疲れしてきたのじゃ。」
　力が抜けたようにドランは椅子にもたれていた。分からんでもないが。
「まあ２か月の暇つぶしではちょうどいい。後でうちに来い。後、せめて作って欲しい家具のスケッチを上げておけ。それを基に作るからな。その間に私は調べ物をしておく。」
　これは、新しい、イベントの予感だ。