魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第24章 ドラゴニックエスタ トライアル

第１１６９話 みんな、酒場でどうやって情報ゲットできるの？

 私はユリアを連れて取った宿の近くの酒場に入る。
「そう言えば、よく物語で酒場で情報収集とか言うじゃんか、そう言うの憧れてたんだよ。」
「ハズレもあるぞ、それにここは通り道だ、期待してない。がここが一番情報収集しやすいんだ。」
　店に入ると数人の男女が楽しそうに食事をしている。私は周囲を見渡し、適度な位置に座る。当然ユリアもその相席に座る。
「いらっしゃい。」
ここでも棒読み店員だ。がめげない。意外とこれはこれでえぐる物があるな。
「銀貨5枚までで、適度な食事と後安全な飲み物を頼む、」
「あいよ。」
　そう言うと、店員は去っていく。
「んでんで。どうやってやるんだよ。」
「…ここで聞き耳たてるだけだ。」
「は？」
「当たりハズレがあると言っただろ？それに現代ではその辺の警戒感がＳＮＳとかでさらされると思って言わないだろ？この頃はそんなものがないから、
『首都で勇者召喚したらしいが失敗したらしいぜ。』
『貴族の奴魔王とか言うけど、子供祭って何が楽しいんだか。』
『それでも一回やる毎に予算がかかるんだろ？国王もいいが減にしてほしいぜ。』
「あいよ、今日のおすすめ。後、料理だ下から先払いでいい？適度に持ってくるけどさ。」
「じゃあ頼んだ。」
　私は銀貨5枚を先に渡す。
「まいどありー。」
「食べるぞ。ただし、ゆっくりだ。」
「どういうことだ？」
「食べ物があるうちはお客だ。無ければ冷やかしだが、残しておけ。しっかりかんでで食えよ。」
　意外とせこい手だが、変に料理を並べると目立つ。昔一度酒場で情報収集のロールプレイをして遊んだことがある。この時が協議の結果この形式に落ちついた。
「んで情報とか集まるのか？」
『最近首都と半島の独立国家との航路がつながったから、ここヤバくないか？』
『どこの貴族だよ。ここすっ飛ばすと、王族の侯爵キレるぞ。』
『後貴族が最近海運に手を出して、投資してるんだと。ここも仕事来るかもしれんぞ？』
『ジャガイモとか売れるかな？買いたたいた方がいいか？』
「その時の運だな。いい情報が眠っているときもある。実際。」
　私は店員が置いていったデキャンタから水を木のコップに注ぐとゆっくりと飲みながら…決して首を動かさず目をつぶる。
『でもさ、小麦とかジャガイモとかって安い所は安いからな。商人が商品開発すれば高くなるかもしれん。』
『村長とかに言えばいいのか？』
『ダメだ。村長じゃなくて、王都に行ってそこを治める貴族に言わないと昔これで重罪人になった奴がいる。』
「ほらな。」
「結構大声でしゃべるのな？」
「酒場には大声でないと聞こえないという…感覚がある。だからうるさい環境に慣れると声が自然と大きくなるんだ。まあ、秘密となった風習とか聞くにはもっと
細かい事が欲しいがな。」
　実際建築の際に…この辺の地方の建築の癖を聞き出して来いと言う無茶な依頼を社員の頃にされたことがある。その時は一週間ぐらい店に通って…わざと捜索する。そして成果を得られない顔で、飲み物とかを頼んで‥・探ってこればその辺を聞き出す。時々あるんだ。神社の謂れとか水害対策とか。その話を直接聞いて…それから工事が終わるまでは一週間に一回はその店で飲み食いする。これだけで、一回でない時は警戒感があっても聞き出せる。ただし大したことが無いという、パターンもあるが、変にオカルトいう人もいる。だがその因習を守る限り変に反対されないし。それに反対されているときは大工事の際に…近くの飲食店が使えないとこっちの出費が食事の取り寄せで増大し、しかも…大抵旨くないので、大工さんの不満も上がる。よく山奥の工事の現場監督とかさせられたから。いい思い出ない。その辺には。
「へぇ…。」
　聞き出すのは単に聞いて回るだけではない。そう言う細かい配慮が…必要な時もあるんだ。