魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第２３章 それでもやっぱり領地開発したい

第１１０９話 １トラップ３効果設計

「トラップの基礎は見つからず、ひっかけさせる。である。」
　全員を目の前に話を進める。トラップの多くはタンジョンほど厄介だ。
「よく戦国時代にはそう言う罠の知識が多かった。そしてその多くは一か所設置に大体３分だ。」
「そんな？」
　ダンマスというのはトラップを…仰々しく考え過ぎだ。
「地雷にしろ他のトラップにしろ、簡単にすぐに仕掛けられるトラップというのは重要だ。そして、その対策として生まれた装備も多い。罠とは、相手との騙しあいだが…基本はこんなものだ。それを踏まえて、
この部屋にはトラップを二つだけ仕掛けてある。」
　といってもこの知識は当然建築家では必要ない。ＴＲＰＧで設定上罠だらけのトラップマニアとの戦闘のしなりを作る際に罠の勉強をしたところで練り倒したものだ。ついでにこのトラップの類もＴＲＰＧの熟練者になるとうんちくが濃い。粉塵爆破とかそう言うのも普通に使ってくる。だからこそ…罠の知識は対策的な物を含めＧＭのスキルに入ってしまう。
「どこ？」
「もしかしてさっきこけたのは？」
　参加者の一人が私の目の前に手をかざして…。
「あ！」
「よく気が付いたな、そこに一つある。」
　全員が近寄ってみるとそこには…
「えっと、紐が張ってあるだけ？しかも凄い見にくいんですけど。」
「そうだぞ。この洞窟の、かなり石が多めの凹凸はこのトラップの殺傷力を上げて、且つ誤認させるための物だ。その為にこの部屋の湿度も…石がぬめる程度の湿度を維持してある。」
「はあぁ！？」
「しかもその糸に使ってる塗料も吸湿性に優れた黒色を用いてる。普通にやって薄暗い洞窟なら見つかる見込みはない。」
「でも転ぶだけでしょ。意味ないんじゃ？それに、糸でしょ。」
　私はあえてそのトラップの位置に追った紙を置いて、場所を明示する。
「まず忘れている。君たち。ダンジョンにおけるダンジョンの施設は全てダンジョンオブジェクトで、鋼鉄を超える耐久力と不動性があるんだぞ？たとえフルプレートの騎士が走って来ても引っかかって転ばせる自信あるぞ。そして、この石だらけのフィールドでこければ必ず大きな音がする。これによりスポナーのモンスターだろうが気が付いて攻撃に来れる。」
　その言葉にそのトラップを見つめる。
「でもバレたら…。」
「そうだな、そう言う意見はある。トラップは見つかれば意味がないとな。その点で紐だけなら最低でもここで戦闘すれば、相手の足回りを妨害できる。回避できなくなった相手に狙撃はたやすい。しかも重装備なら脚を上げるという行為自体が体力を奪うために十分あるだけで効果を与える。」
　トラップがつらいのではない。トラップによる地形効果が恐ろしいのだ。
「でも魔法主体の今の戦場では意味がないのでは？」
「そうだな。でも、気が付かなければ回避できない魔導士は逃げる事さえ叶わない。」
「先頭の一人だでですよね、意味がないのでは？」
　というか、結構否定的だな。みんな。
「ならトラップは意味がないな。全てな。これにより心理的に警戒させ、ＤＰ収益を上げる目的の方がダンマス的には大きい、そして攻略時間を遅延させ、有利な状況で戦闘させることによりこっちはより低コストのモンスターで戦わせることができる。」
「殺傷という意味では効果がないのでは？」
「殺傷だけなら、そこのダンジョンを閉じて酸欠に持ち込む方が早い。」
　そう、実は前にモンスター討伐数で酸欠死を使って稼ぐ際にある検証をしていた。それが”酸欠にＨＰ”は関係するかって事だ。結果はしなかった。又溺死も関係しない。この事から病気もＨＰがある程度保護膜にはなるが…根治はしない。とみている。これはエナリシアの証言による家族で狩りをしているときに負傷者が…ＨＰが復帰しても腕は治らなかったという話と合致している。また破傷風による腕の壊死においても一緒だった。ＨＰは防ぐ機能があっても治す効果はない。という事だ。
「そして、顔は人間で一番防具のない場所だ。そこを狙えば…ＨＰの減少も多大になる。それだけでも…十分だと思わないか？それにだ。」
「…なんです？」
　数人の女性ダンマスは、どうもトラップが気に食わないようだ。
「これで引っかかって死んでもらう方が問題なんだ。第一自分のモンスターもこれに引っかかるんだぞ？致死トラップを置いた賀ばっかりに自分の配置したモンスターの方が被害がひどいトラップなんて置く方がコストが高くつくぞ。」
　それには全員が思い当たる節があるようだ。
「確かに…最強のトラップですね。でももう一個はどこに？」
「もう一個はここだ。」
　そう言うと立ち上がり、その動見ても何もないはずの場所に紙を折って、置いてみる。
「そんな高い所ですか？」
「通称、馬殺し。戦国時代のトラップで、これを仕掛けてあると騎馬隊が全滅する。その為に馬は森林に入れなくなったと言われている。それ位歴史を変えたトラップだ。動物には効かないが例えばそこの紐に気が付いてジャンプした奴の頭や胴体には当たる位置だ。しかも天井が、それを意識すると引っかかる高さにしてある。」
「頭くらいの高さがですか？」
　全員が感心したようにトラップに地下ずく、これ自体は見にくくないっているが普通の身長だと気が付かない２ｍの高さにしてある。
「背が高いと頭に当たって…歩く限りは引っかからんぞ。だから大抵は気が付かない。ポイントはここを戦場にして、意識させることで、行動を制限させるって事だ。戦闘中にトラップに気を付けて行動できるのは後列の見ているだけの連中位だ。だからこそ…トラップは生きる。これが基本だ。」
　トラップの恐ろしさはどこにあるのかわからず、警戒させて
「ひっかけて単体で人を殺すんじゃない。それで起きる効果自体を利用するんだ。」
「それだと、トラップだけでモンスターや人を倒すことはできないって事？」
　どうもダンジョンバトルで使いたいっぽいな。トラップを。
「まずそれには建築学と、物理学や心理学を極めて作ってくれ。大規模な物は作ろうとすると発動までにタイムラグが生まれる。そして、勇者程のステータスだとそのタイムラグで回避可能だ。そうでない。勇者クラスをひっかけるなら…よっぽど練り込まないと成功しないぞ、むしろこういう単純な物の方がよく引っかかるぞ。」
　トラップのコツでもある。複雑すぎるトラップはその労力と見合わないって事だ。