魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第２２章 勇者大下の冒険

第１０６８話 エナリシアの旅 帰ろう

　大下たちは、リューネ達にダンジョンの深淵について…教えられ…メイロード含め全員が驚いていた。ダンジョンの深淵と、そしてギルドやその他の大陸の事情やそして…群雄割拠に近い情勢であることだ。
「ただ、私の予測だと…ザガートン南部とかの南部以外は戦争は起きにくいとみているわ。そして…そこに商売で食いこんでいるのがギルドよ。但し、フォレスタ南部やザガートン南部は…特にザガートン南部は戦国時代よ。小さい国が乱立し、助けを求める者が溢れているわ。フォレスタは…ギルド未介入で状況が不明なの。その中で、今の君たちの力ならダンマスの上位に挑まない限りは勝てるとみていいわ。但し、上位は、ドラン含め非常に強いダンマスが多いわ。そこは注意して…ギルドにメールを送るとかして、考えて欲しい。こっちに入る勇者は少ないから…。」
「大野は、知っているでござるか？」
「ちょっと待ってね、メール送るから。」
「大野…も勇者じゃな。確か天使降臨を起こしたという…。」
　ドランも呟くが、リューネの言葉が緩慢で…
「あ、帰ってきた。いいみたいね。大野君は…君たちが最初の魔王討伐をする…あの脱出時に…ダンマスの存在に気が付き接触して、深淵を覗いたわ。学校を守るためにね。」
「学校でござるか？」
　それには田中も意外な顔をしていた。
「どういう？」
「まあ、その辺は今はダンマスＳＮＳもあるけど、この辺は秘密にしてあるの。後、私の許可で魔界に入っていいから。その辺も含め…強くなるには、実戦と思考。忘れないでね。」
　そう言い、大下たちはリンシュメルトに帰された。余りに濃い一日だった。そしてエナリシアはついて来ていた。
「あなたは…どうしてついてきたんですの？あれだけ強いのに？」
　メイロードからすれば、上位ダンマスの…言うならラスダンの中ボス的存在のエナリシアが自分たちについてくる理由が分からなかった。
「…命令でもある。が、私は自分で選んだ。」
「え？」
「…私も人の情がある。触れ合う袖も多生の縁。…私は…難民で、国を追われて、ダンジョンのある街に行きついた。そして狩りをして暮らした。そこでは一歩間違えば死ぬし、今知識にあるポーションや、回復魔法もない。狩りは常に一歩間違えば、死ぬか動けなくなるかどちらかしかない。必死だった。だから・・・必死に戦った。死の危険なんていつもだった。最近ようやく…少し安定したくらい。」
　その言葉に全員が言葉を詰まらせた。
「そう言えば、２０人だっけ、向こうでの狩りの単位は。」
　パオメイは思い出したようにつぶやくと、エナリリアは頷いた。
「…そう言う事。その中で必死に…。そしてこうなった。みんなは見ていて、甘えていると私は思っている。が、当然でもある。そんな必死に生きる必要がないなら、そうなる。普通。だから甘えを無くすなら、厳しい場所に行けばいいと言いたい。が…それはレベル的にもないはず。だから…今できる事を考えたほうがいい。今は、今までの経験を使って力を蓄えたほうがいい。修練は嘘つかない。日々の練習は嘘をつかない。もし、出かけるなら…私が必要ならイーハ商会に行けば私に連絡が付く。」
「エナリシアちゃんはどうするの？」
「…事務作業が残ってる。それを処理してから次を考える。こう見えて宮仕え。ただ、大下の事は優先する。していいと…マスターから聞いている。」
「そうでござる、拙者たちの弱点もわかったでござる。それなら、練習のために一度…。」
「私の実家に参りませんか？私はリンシュメルトの…子爵家の娘なので、滞在するに実家なら、面積もありますし、そこで練習など。」
「そうだね、ちょっと練習とか充電しようよ。確かに旅で疲れたよ。」
　パオメイも賛成のようだ。
「それなら、私は…ここで修業します。…このままでは色々足りませんから。」
田中はさっと手を出した。それを、大下は握手する。
「分かったでござる。拙者たちは少し休養して…それから…もう一度冒険に出るでござる。」
「神は言っています。休養は必要で、拙速は怪我の元だと。私も場所もありますか？メイロード様？」
「聖女教の司祭なら歓迎ですわ。」
　そして、ここで改めて…大下たちのパーティは一度解散する事になった。一度休んで、それから旅に出たくなったら出ることにしたのだ。