魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第２２章 勇者大下の冒険

第１０５９話 エナリシアの旅 会議場

　そこは、暗い洞窟のようであり、その…すごいいびつでもある、直線の崖の通路の先にはまるで魔王の会議室みたいな長テーブルと、座椅子がある。そして、その少し高い所に
・・・玉座があり、そこには例のドランが座っていた。その玉座は、…ただ長い背もたれのついた椅子に見えるが…そしてその周囲は崖であり、その向こうに巨大な松明が煌々と
この謎会議場を照らしていた。
「どうじゃ？」
「…えっと、ここは何なんですの？」
「…ここは会議場じゃな。ダンジョンマスター間では会議をして交渉する事が多いんじゃ、そこで箱みたいな寂しい部屋じゃ困るんじゃ。そこでの。いっちょかっこいいダンジョン作るんじゃという事で。じゃの。」
　その顔は、エナリシアからしても、凄いこっちの反応を楽しみにしている少女そのものだが…
「第一会議場とか意味が分かりませんの。」
「神は言っています。落ちると…どうなるんですか？」
「この明り、熱くないのはいいけど、この火、何処から来てるの？」
「無駄に広いので…何の意味があるんですか？ここ。」
「…うっわ、評判わる。」
　ドランもさすがの酷評にしょげた。
「確かに雰囲気で作ったがのぉ、でも…ここまで酷評されるとはのぉ。」
「…誠に強大な主に言うのは何なんですが…ここ、妙に寒いんですよ。特に谷底からの風で。なので…それもあって怖いのですわ。落ち着きませんわ。」
「ま、仕方ないのぉ、改造して後でバトルフィールドで使うのじゃ。ま、座るのじゃ、意見か聞けたからのぉ、ちゃんと報酬は払うのじゃ。」
　そしてドランは玉座ではなく、会議用のテーブルの上座に座った。全員もそれに合わせて適当に座った。
「うむ、早速始めようかのぉ。お主たちは強くなりたいんじゃな。」
「そうでござる。」
　大下の顔はまじめだった。
「わしは…言っては悪いが、そこまで強くないと思っておる。それは覚えておいて欲しいのじゃ。その上で…講義するのじゃ。エナリシアも聞いていくがいい。」
　今までのふざけた感じとは違う…真剣なまなざしだった。

「まず、強さに欲しいのは…計画と投資、知識じゃ。」
「どういう意味ですの？」
「まず、お主に聞く、強くなるって何なのじゃ？」
「え、僕？」
　パオメイが驚いて自分を指す。
「そうだね…早く動けて…で、力が強い事かな？」
「うむ、ではお主は？」
　指さされたのはメイロードだった。
「私は、確かに速く走れて…そして動ければいいのですけど…魔法の火力が上がる方が効率がいいですわ。」
「そうじゃの。そうじゃろ。このようにまず…強くなる道は一つではないのじゃ。儂はダンジョンマスターでもあるが…最初はそれは苦戦した物じゃ。での、いくつもの持論があるのじゃ。」
　そう言っていると、玉座の後ろから、女性が飲み物と、お菓子をテーブルに置いていく。
「わしは最低でも、強くなるとは何なのか、理解しておらんものは…強くならんのじゃ。具体的な”どうなりたい”がない者は弱いんじゃ。」
「どうなりたい・・ですの？」
「この世界のレベルシステムはすべて…何をしても上がるんじゃ、ただし…”同じ事の繰り返しでは上がりにくい”んじゃ。当然そう言う覆す”回数系”もあるのじゃ。が、それよりもあがき苦しみ・・・そして努力する者に…栄誉は与えられるのじゃ。」
　その言葉に全員、今までの事を思い浮かべる。
「だからこそ、修練は常に目標を持って、そこに、自分で考えた修練を試してそして…足していくんじゃ。その為に欲しいのが…計画じゃ。」