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第22章 勇者大下の冒険

第1034話 エナリシアの旅 殿(しんがり)

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 大下たちも一巡休む中、私達もエナリシアと交代しつつ一回ずつして・・・雪崩のような敵兵の襲撃は2時間が経過しつつあった。人間全力が出せるのは20分程度。そういう話だ。当然分かっている。その為のトラップとして、凸凹を設置して相手を倒しそれでも突っ込んでくる敵兵に踏ませて殺させ、その上にミサイルプロテクションの”下降気流”を浴びせ無理矢理倒させる。そこを休みつつ薙ぎ払う事で敵兵を撃沈。それを”マスター”が見ている事で…ダンジョンによる撤去を無くさせ地形変更を無効化している。相手が正面からしかない土地を選んだ理由が…大方味方を出しやすい袋小路に追い詰めるためだ。それが、私達に防御陣形を作らせ塹壕戦の様相となっていく。後ろの奴隷も商人も商人の部下も何もできない、むしろ、隅っこで座りこちらを応援している。少しでもこっちが油断すれば敵兵が全力で突進してくるのだ。いや、奴隷の一部はゴブリンだけでも倒そうとするが突っ込んで
来る後方のオーガなどがあり、前に出ることをやめた。が2時間たってもまだ敵兵が出続けている。向こうは無尽蔵か…。
「…勇者。」
「何でござる。」
「…撤退を考えるべき。」
「どうやってするのですわ?」
「これを使う。」
 ダークボックスからゴーレムを出してエナリシアに命令をさせる。ゴーレムは頷くと、後ろの壁を叩き始める。本来この行為に意味はない。が…私は賭けていた。もしダンジョンが損害のほうが多いなら。
「ゴーレム!?」
 今作ったとみんなは思ったらしい。但しダンジョンでは土でさえ相手の物なので、普通はダンジョン内でゴーレムは作れない。が今こうしてゴーレムが動いて壁をぶっ叩いてる。そこに…エナリシアを憑依させる。これは最近…ワタさんが調べたというか、知らされたんだけどラクシャーサの特徴に”霊体と非霊体が双頭で一緒にいられる”数少ないモンスターであるという特徴があるらしい。そして水先案内人にスイッチした私はこっちのスキルが使える状態で他のモンスターなどに憑依できる。そしてばれないように憑依して…二人独立する…本来は私の義体用の素体だから、憑依するようにゴーレムを持ち込んでいた。このチタン製軽量ゴーレムはかなり強い素体で私の…鬼系スキル全部使用しての攻撃に耐えてくれる。それが…後方に閉じたドアをぶっ叩く。その衝撃はすさまじく壁が揺れる。これでも割れない!いやこれでいい!
「どういう事!?」
「…壁が破れたら全員逃げて。私もこっちを抑えてから逃げる。」
「でも!」
「…もう限界が全員近い。誰かが抑えないと逃げれない。」
 そうしていると、壁が敗れ、その隙間が空いたと同時に土変化でその傷口に自分の土魔法をねじ込み…開いた出口を固定する。
「早く!」
 その間もエナリシアはオーガ達を薙ぎ払い。敵兵を抑える。
「に、逃げるぞ!」
 言われるまでもなく商人たちが一目散に逃げだす。
「…大丈夫でござるか?」
「…私一人なら庇う必要がなくなって本気が出せる。だから逃げて。いや…私に任せて先に…ではないか…逃げて。」
「行きますわよ!こんなところで死ぬわけにいきませんわ。勇者様!行きましょう!」
「神は言っています。退くべきだと。」
「…いいの。エナリシアちゃん。」
「大丈夫。何とかする。」
 田中さんの声に私は頷く。
「回復魔法お願い、みんな!退くわよ!」
 田中さんが前方を注意し…その間に全員が全力で走り出す。
「私がしんがりで…いえ、お願いね。」
「…大丈夫。生きる。」
「頼むわよ!」
 そう言うと…田中さんは走って逃げていった。大方ダンジョンは…損害が大きくなる”背後の壁の損失”を考えわざと薄くして壊させて…全員を逃がすと思った。が私は逃げる気がない。
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