魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第２２章 勇者大下の冒険

第１０１１話 私は上司を演じているだけだ。

　その間に留守番のワタには私たち３人、中見た感じだと、ほぼミラージェに化けて動いていたらしい。ワタの記憶から…すごい事が起きていたことが分かり、ウルフェのダンジョンに向かう。そこはウルフェダンジョンの…都市側の入り口の反対エリアに…緊急にダンジョンが作った巨大都市の図だった。何と鳥海の奴、こっちに無断でかなりの予算を動かし
人間をかなり数・・・奴隷として購入した一万人を超える…大都市だ。今の所子供たちはダンジョンモンスター・・・主に鳥海のモンスターたちとタミさんのメイドたちが教育を行い、
それ以外は今のところ…３か月後に仕事を与える事、そして食料用の農地の作成を行った。リラシルトは農業大国でしかも結構…村長などのわがままで追放が多いという環境だったため、それが流動的労働者である”奴隷”の発展をさせた。が今回はその奴隷や市民の地位の低さがこの１万人を大きく超える大都市になった。が問題は彼らに…職人などはほとんどおらず鳥海の言う最下層の人間ばかり一万人らしい。だが、鳥海からすれば、こういう連中がいるの事態が…許せなかったらしい。しかも奴隷市場は勇者大陸で…怪我を負った冒険者たちの再雇用の為と言われれば…反対する理由はなかった。だから限界までの反抗である・・・手持ちの現金全ブッパしての水木さんとかに借金をしてでも奴隷を購入したらしい。今は食料を与え徐々に活気を取り戻しつつあるが、奴隷が購入されて三日。かなりの問題だったらしい。
　だが、それ以上の事は…鳥海は全然思いつかない、珍しい突発的な行為の為に…彼らに何をさせたいとかのビジョンがないまま買ってしまった。そこでこっちに全部ぶん投げた。というわけだ。流石にこれを独断で決めるのはワタも出来ず、取りあえずルームから、簡単な市街地のデータからコピーして町を作ったが。はっきり言って…それが立派過ぎたんだ。
その為、委縮している。
「という訳か。」
「疲れたである。」
　今はワタにミラージェの格好をして一緒に来てもらっている。一緒の姿でも実は…細かく見ると偽物か本物かは見破れる。ちょっとした所作が違うからだ。体の重心とかだ。動物系の私たちケルベロスの頭たちは、犬系の特徴である”つま先立ち”で立つ癖がある。がそれがワタには無いとかだ。その辺はいい。部下たちを集め、今後の検証と指示を与えていく。
「まずは彼らにどうしたいのか聞いて欲しい。但し故郷に帰るだけはだめだ。が、どういう土地で生きたいのか。場合によっては農地等の提供が可能だと伝えてくれ。また、リラシルトの農業のやり方を聞きたい。だから数人、農業の詳しい人間を…１０人ほど連れて来てくれ。」
「はっ！」
　部下たちを向かわせ、ダンジョンメニューからこっちにも私の家を作る。目印になる市役所だ。
「あと奴隷だからと言って意思は尊重すると伝えてくれ。ここで判断を間違えれば問題があるからな。後、鳥海に皇帝から難民受け入れに関して聞いてくれ。」
　数人のメイドさんが一礼すると踵を返して去っていく。
「後、ここに住む場合は募集等は行うが基本、彼らの生活は保障する旨を伝えてくれ。」
「マスター。よろしいでしょうか？」
「何だ？ウルフェ。」
「奴隷ですから命令すればいいのでは？』
　ウルフェも直立不動の姿でこっちに質問してくる。礼儀は正しいんだがな。
「まず、奴隷で従わせると。DP利益が低くなる恐れがある。それに反乱とかの可能性もある。それにだ。」
「はあ…。」
「大方命令だけで従わせた場合、忠誠心も芽生えず誰もいう事を聞かなくなるんだ。」
「どういう意味ですか？」
「私の上司がな。そう言う命令ばかりする奴だったんだ。だが命令だけして何もしないそいつを見て。誰もがそいつの事を嫌ったんだ。その部下の一人である先輩はことある毎に
食事やジュースをおごって…で、愚痴とか聞いてくれたから、その部署ではやっていけたんだ。その人は命令はほぼしないで、こっちがあることを支えて助言してくれたんだ。だから
こっちも過密スケジュールにならず…建築研修に各地を飛び回る事が出来たんだ。」
「…そんな事が。」
「そうだ。だから簡単な命令以外はサンテに頼んで、手を出さないのは…自主性が育って、命令に対して自分から物事をやっていくことで…成長すると思ったんだ。ウルフェはまじめだからな。学んで成長してくれるって思ったんだ。」
「マスター。」
「だから命令は、只するんじゃない。お互い利益が出るように言うんだ。そして場合によっては餌で釣ってもいい。嫌がる真似をしたらきっと。すぐに離反するぞ。そいつは。」
「…マスター。私の事をそこまで。」
「私は部下…じゃないな、同志とか思ってる、みんなを。だからこそ、私は上司を演じているだけだ。だから…その辺は覚えておいてくれ。」
「分かりました。マスター。」