上 下
966 / 1,264
第21章 薔薇と白い月(ダークファンタジー)

第958話 薔薇と白い月(2) 便利機能は使い方が分からないと機能しない

しおりを挟む
「あれがミニゴブリンじゃ。」
 ドランが指差した先には3体ぐらいの…3歳児の子供の姿だ。その戦闘をマリオネットに歩かせつつ、ミニゴブリンというモンスターがナイフを持っている、
「一応危険ではあるが、それ以上にあの姿…罪悪感しかわかないな。」
「大方人間で教え込めば、あれが可愛いとは感じないだろうな…。」
 実はミラージェも初めてミニゴブリンの姿を見るのだ。その姿は肌が緑色というだけの栄養失調気味の子供と言ったほうが正しい姿だ。それがナイフを持ってよたよた歩くのだ。これは罪悪感がひどい、
「一応、あれも殺さんと行かんのじゃ、ほれ。」
 ドランはポシェットから石を取り出すと、ひとつづつシオリたちに渡す、
「これで投げておけばええ。ここは心を鬼にじゃ。」
ドランは石を投げつけると、マリオネットがその石ではじけ飛び、壁に当たると、そのまま消滅した。
「…むごいね。」
「接近するかのぉ?」
 流石に詩織も…ドランに厳しい目を向ける、
「大方本来はここにおるべきではない…モンスターじゃろう、儂も知らんが。マリオネットもそうじゃろう。儂らに知らんモンスターが多い、その一種じゃと思っておる。じゃが、ここで倒さんとわしらは武器も得られん。」 
「仕方ないわね。」
 シオリはミラージェに地面に下ろしてもらうと、ため息をつきながら野球のピッチングモーションで投げつける。その投球でミニゴブリンの一体が吹き飛んでいく、こっちに走って来るのをミラージェは枝の祝福で棍棒を作り、2体とも殴り飛ばす。
「お主…。」
「こういう時に躊躇するのはだめ。した方が痛いし苦しむ。それ位なら一撃で屠るのが礼儀だ。」
 その言葉にしおりは固まる。
「で、これが武器?」
「そう言ったじゃろ、これが…ナイフじゃ。」
 小さい食器のナイフ程度の大きさのものだ。鋭さもなくむしろ形だけがナイフと言っていい内容だ。が…。ドランはそれをポシェットに入れていく。
「これが欲しかったんじゃ、これがあればこうなるからのぉ、」
 ドランが取り出すとそれは…鋭くなったナイフがあった。
「そうじゃよ、これ、投げナイフに加工できるのじゃ、しかも結構鋭い奴にのぉ、その為の砥石は拾っておいたのじゃ。お主らが投げた石がそうじゃ。」
「あ、これ。」
 結構軽い石だが、よく見ると、川にある丸い石だ。これでもたしかに研げる、水も備蓄で入れてあるし、飲み水作成でもポシェットに注いでおけば水もいくらでも作れる、考えたなこれ。井原は気が付いていないかもしれないが、実際本当にドランが凄いのは慧眼でも、戦闘力でもない、その機転だと思えた。戦闘的本能にある…その機転こそ、このドランの本当の強さだ。知識とその応用幅の広さそれがこのドランを強者足らしめている、。たしかにその辺の石を持って来て砥石にして…モンスターの武具を研ぐとは考えもしなかった。そしてこの素材があれば…矢も作れる、けどこれ…。
「このナイフもしかして…石?」
「じゃろうな、鉄は無いと思うのじゃ。じゃが、石ころを拾うくらいは時間があるのじゃ。これを痛快使いまわせば…。ん?」
「どうしたの?」
「いや、この袋、地味に…マージプロセスという物があるのじゃ、その三つ貸してたもれ。」
 みんながナイフを手渡して、ポシェットに入れると少しして、大型のナイフが現れてきました。
「何かよくわからんが、合成出来るのじゃ。」
「そう言えばそれに…取扱説明書とかある?」
 シオリは何となく言っただけだったが、そう言えばその筈だった。この錬金術システムの最大の欠点。それは”本をそのままぶち込んでレシピ”を登録するのでその本の内容を思い出すことができない時は本当にレシピごと無しになってしまう可能性があるって事だ。
「・・・スマン・・・儂、まったくその辺気が付いておらんかったのじゃ。」
 うん、これはある意味致命的なミスだった。何しろこのポシェットを実際に作ったのは神様であり、何の機能を入れたのか、分からないまま…ドランは受け取ってしまったからだ。
「せめて説明書・・貰ったから使お?」
 シオリの言葉に…ドランもミラージェも突っ伏すしかなかった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

新人神様のまったり天界生活

源 玄輝
ファンタジー
死後、異世界の神に召喚された主人公、長田 壮一郎。 「異世界で勇者をやってほしい」 「お断りします」 「じゃあ代わりに神様やって。これ決定事項」 「・・・え?」 神に頼まれ異世界の勇者として生まれ変わるはずが、どういうわけか異世界の神になることに!? 新人神様ソウとして右も左もわからない神様生活が今始まる! ソウより前に異世界転生した人達のおかげで大きな戦争が無い比較的平和な下界にはなったものの信仰が薄れてしまい、実はピンチな状態。 果たしてソウは新人神様として消滅せずに済むのでしょうか。 一方で異世界の人なので人らしい生活を望み、天使達の住む空間で住民達と交流しながら料理をしたり風呂に入ったり、時にはイチャイチャしたりそんなまったりとした天界生活を満喫します。 まったりゆるい、異世界天界スローライフ神様生活開始です!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

そんなにホイホイ転生させんじゃねえ!転生者達のチートスキルを奪う旅〜好き勝手する転生者に四苦八苦する私〜

Open
ファンタジー
就活浪人生に片足を突っ込みかけている大学生、本田望結のもとに怪しげなスカウトメールが届く。やけになっていた望結は指定された教会に行ってみると・・・ 神様の世界でも異世界転生が流行っていて沢山問題が発生しているから解決するために異世界に行って転生者の体の一部を回収してこい?しかも給料も発生する? 月給30万円、昇給あり。衣食住、必要経費は全負担、残業代は別途支給。etc...etc... 新卒の私にとって魅力的な待遇に即決したけど・・・ とにかくやりたい放題の転生者。 何度も聞いた「俺なんかやっちゃいました?」       「俺は静かに暮らしたいのに・・・」       「まさか・・・手加減でもしているのか・・・?」       「これぐらい出来て普通じゃないのか・・・」 そんな転生者を担ぎ上げる異世界の住民達。 そして転生者に秒で惚れていく異世界の女性達によって形成されるハーレムの数々。 もういい加減にしてくれ!!! 小説家になろうでも掲載しております

異世界なんて救ってやらねぇ

千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部) 想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。 結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。 色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部) 期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。 平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。 果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。 その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部) 【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】 【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

魔力0の俺は王家から追放された挙句なぜか体にドラゴンが棲みついた~伝説のドラゴンの魔力を手に入れた俺はちょっと王家を懲らしめようと思います~

きょろ
ファンタジー
この異世界には人間、動物を始め様々な種族が存在している。 ドラゴン、エルフ、ドワーフにゴブリン…多岐に渡る生物が棲むここは異世界「ソウルエンド」。 この世界で一番権力を持っていると言われる王族の“ロックロス家”は、その千年以上続く歴史の中で過去最大のピンチにぶつかっていた。 「――このロックロス家からこんな奴が生まれるとは…!!この歳まで本当に魔力0とは…貴様なんぞ一族の恥だ!出ていけッ!」 ソウルエンドの王でもある父親にそう言われた青年“レイ・ロックロス”。 十六歳の彼はロックロス家の歴史上……いや、人類が初めて魔力を生み出してから初の“魔力0”の人間だった―。 森羅万象、命ある全てのものに魔力が流れている。その魔力の大きさや強さに変化はあれど魔力0はあり得なかったのだ。 庶民ならいざ知らず、王族の、それもこの異世界トップのロックロス家にとってはあってはならない事態。 レイの父親は、面子も権力も失ってはならぬと極秘に“養子”を迎えた―。 成績優秀、魔力レベルも高い。見捨てた我が子よりも優秀な養子を存分に可愛がった父。 そして――。 魔力“0”と名前の“レイ”を掛けて魔法学校でも馬鹿にされ成績も一番下の“本当の息子”だったはずのレイ・ロックロスは十六歳になったこの日……遂に家から追放された―。 絶望と悲しみに打ちひしがれる……… 事はなく、レイ・ロックロスは清々しい顔で家を出て行った。 「ああ~~~めちゃくちゃいい天気!やっと自由を手に入れたぜ俺は!」 十六年の人生の中で一番解放感を得たこの日。 実はレイには昔から一つ気になっていたことがあった。その真実を探る為レイはある場所へと向かっていたのだが、道中お腹が減ったレイは子供の頃から仲が良い近くの農場でご飯を貰った。 「うめぇ~~!ここの卵かけご飯は最高だぜ!」 しかし、レイが食べたその卵は何と“伝説の古代竜の卵”だった――。 レイの気になっている事とは―? 食べた卵のせいでドラゴンが棲みついた―⁉ 縁を切ったはずのロックロス家に隠された秘密とは―。 全ての真相に辿り着く為、レイとドラゴンはほのぼのダンジョンを攻略するつもりがどんどん仲間が増えて力も手にし異世界を脅かす程の最強パーティになっちゃいました。 あまりに強大な力を手にしたレイ達の前に、最高権力のロックロス家が次々と刺客を送り込む。 様々な展開が繰り広げられるファンタジー物語。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...