魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第２０章 それは柴崎エナリシア

第８８５話 エナリシアの旅 やっかい

　エナリシアたちは登録をすますと、ギルドカードの機能で、ギルドが把握しているダンジョンの位置を検索し、それから不戦条約をしたダンジョンの記録を抜いていく、
この時は霊体の方を柴崎が行い、エナリシアが歩く。その間に趣味でもある。
「おいおいおい、ガキじゃねえか。」
　エナリシアの前に現れたのは３人ぐらいの男達であり、ここは往来の真ん中である、
「…。」
「こんなところでそんな田舎臭い格好とは何とも臭そうだ。」
その言葉に全員が大声でわらう。
『おおー！定番の辛味って奴ですね！』
　柴崎の声がエナリシアの頭に響く、
「・・・。」
「おいおい、そんな顔するなよ、剣闘士３勝の俺がこの町を案内してやろうか？」
「…。」
　エナリシアは無言で脇を抜けようとする。
「何か言えよ！」
　エナリシアは速足で去ろうとするが、野次馬に止められてしまう。背中に槍を背負っておりそれが邪魔になった形だ。
「…。」
「おいおい、怖い顔するなよ、お前みたいなやつを構ってくれているだけ優しいだろ、俺は何という優しくて力持ちで、かっこいいんだ！」
「…。」
『どうします？』
「来いよ！」
　無理矢理大男がエナリシアの腕を取ろうとしたところをいなし、引き倒す。そして背中の槍を引き抜きその大男の頭につきつける、
「…邪魔。」
「てめえ！」
　後の二人が襲ってくるのを見てエナリシアは相手を力を籠め、睨みつける、これが”鬼迫”である。威圧にも似ているが、相手を自分の力で押さえつける。鬼系専用スキルである。慣れると他の威圧とは違う威圧を掛け、筋力を増すことが可能になる。二人は睨みに気圧されたじろぐ。
『おおー』
「…ぐ…。」
「じゃ。」
　　そう言うと足を放し…。
「ほう、面白い、この俺剣闘士１２勝の優勝経験を持つ俺様バンドロが相手になってやるか。」
　３勝と粋がった男たちがその１２勝の男を見て慌てて逃げていく。
「…。」
　エナリシアが呆れて去ろうとするが。それを…またも野次馬が止める。
「抜け。俺が、この俺様が稽古をつけやると言ってるんだ！」
　男は腰から剣を抜くが、エナリシアは興味なさそうに野次馬を押しのけようとする。が、押しのけようとした先にも人だかりができている、
『何これ！』
「こっち向け！」
　バンドロが剣を振りかぶると、軽くジャンプして振り向き、相手の懐に入ると、あごを狙い掌底を当てる、
　パァーーン！
「…邪魔。」
　顎を当てられた相手はそのまま気絶し、倒れ込む。これはエナリシアは鬼の技である”鬼拍子”の一つ、”掌底”を当てたのだ。相手の顔で拍手をする技でもある、いくつもの技があるが、鬼拍子の多くは古流日本武術につながる古の技である。
『流石。』
「どいて。」
　エナリシアはここから去ろうとするが、今度はバンドロが倒れた事で、周囲のやじ馬が混乱している、そして…エナリシアはその群衆に睨みつける、
「どいて。」
　そこの言葉に全員が押し黙り、道を開けた。が、声は屋根の上から来た。
「よくわからないが、貴様、市民を脅すとは！そんな不埒者は勇者が成敗してくれるでござる！」
　…なんか…厄介なことになった。