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第19章 VS飛鳥

第840話 レコーディング建築学

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 レコーディング。それはある意味建築学と言っていい。それは音を極める際に最終的に家を建築し、音楽を最大迄有効化させる池の形状に至るのだ。私の顧客にも3名ほどそう言う人がいた。はっきり言って頭おかしい(誉め言葉)という連中だ。地下室を面倒な書類も込みで作る理由もすべて、理想の一曲の為。数百万をそこに叩き込むのだ。そこに金の価値はない。それが最適と考えるまで、全国、全世界をさ迷って最高を作るのだ。それは曲によってさえも違う、音楽という…贅沢の極みだ。彼らの多くは…映像を嫌う。プロジェクタモニターにしても音の反射を阻害するからだ。そこまでした極みに付き合わされて、ある程度は知識がある、…あの時は注文の品物を取り寄せるために、ドイツ語とか翻訳するのがきつかった。あの時の取り寄せるきつさ、覚えてろー!とか言いたくなる、がそれもあって
ある程度…。
「さて、オウルの手伝いが欲しい。頼めるか?」
「ホッホッホ…どういう事で?
「まずは私が下地を引く、」
「そう言えば、私たちはイーハの建築を見たことがないぞ、」
「そうだね、お姉ちゃん。」
「…返す返すもなく、すまない。」
「いや、言い、見せてくれ…と言いたい事だがいいのか?秘密ではないのか?」
「それは録音後に撤去する、構わない。浮遊!」
 まずは部下たち全員を浮かせる、そして、ある程度柔らかい薄引きの黒曜石の上に、更に軽石を引く、
「オウル、柔らかい木をイメージした幕を樹魔法で頼む、部屋全体を包む形でだ。」
「…ちょっと待ってほしいのぉ…。」
 私も浮遊すると、木の膜が…部屋全体を覆う、
「おおー!」
ここから…。
「さらに!」
 そこから壁と天井には深めの凹凸を付けた形に、音の反射を消す形だ。これは通常4層式と呼ばれるものだ、
「…暗くないか?」
「それはこうするつもりだ。」
 後は光魔法で明りを付けた。
「…この部屋は?」
「ああ、アイドル用録音施設”レコーディングルーム”だ。」
「マスター!?」
「アイドルたるもの音の良さは常に売り上げに絡む。最高の音を得るためには、歌唱力だけではなく、歌唱力を引き出す機材や施設が必須だ。この部屋は音の反射を消す工夫をいくつも施した…普通には反射するはずの声がない部屋だ。部屋で生まれる音のブレがないから、全力で声を出しても・・・・そのままにしか聞けない。」
「という事は全力で歌っても。」
「ああ、かまわない。ハウリングが起きないから。ただし…まず10分練習してもらう。そこで聞こえる声を感じてくれ、ちょっと気持ち悪く感じるはずだ。」
 ただ、この部屋は地味に本来のレコーディングルームでは無理な”ドアによる音ブレ”がない。そう言う意味ではより完璧な4層式音響施設である、まずは最初の硬い壁は音を完全に相殺し、外に出さないための物だ。そして次の土・・・できればスカスカのほうがいいというのもあるが、これは俗にいう音の衝撃を和らげてキャッチするための物だ。これは第三層の上に棘の中にも仕込んである、しかも床も地味に…凹凸の激しい柔らかい凹凸がある、しかも柔らかい素材でだ。おッと…そして出来たうえに木。これは柔らかい木をあえて設置することで、快適な”反響”を生むための木だ。ただ、木の種別さえわかっていない私たちは木の品種を設定しての設置はできないので、イメージだけを伝えていた。そしてその上に石綿(アスベスト)を固めた凹凸を設置。一応言っておくと今の建築基準法だと違法だが。之しか土変化で出せる綿が思いつかなかった。これで固めた凹凸壁を設置。これにより地声でしか勝負できない空間となる、ただ、完全無音室みたいなものだと、不味いので程程抑えている、
「なんか、いつもと声が違う。」
「あ、ああ。歌っても反響が無いというか手ごたえが…。」
「ぬるっとした声になってる、」
「怖い…というより不思議…。」
 全員が戦々恐々として、声を出す中、数回声を出しただけでオウルは終わっていた。
「大丈夫なのか?」
「ホッホッホ、羽が似た構造だったからのぉ、」
 そう言えばフクロウは羽とか含め音が出ないという事に主眼を置いた体だ。だから慣れているんだろう。
「そうか、でも…。」
「大声出してもわからん・・ではないが、本当に少ないのぉ、でもマスター何でこれが、アイドル専用?」
「…本来の音は建物とかに反射し、ある程度ぶれるんだ。それが発音とかで取得する際に”ノイズ”となる、後で聞かせるが、二つの音の差は絶大だ。その為レコーディングスタジオの知識とか、様々な物言っている有無の差はアイドルにとって絶大だ。歌う、踊るだけに、命を懸けた存在が、”アイドル”だ。当然資金もな。」
「…本気を出せと…。」
「本気出してもいいが、魔法は撃つなよ、変に騒ぎがあればここのダンマスに怒られるからな。曲は一発撮り、だから後悔するなよ、コンちゃんもな、曲は全演目の曲を一曲ずつ、発音の魔道具に入れ込む。」
「イエス!」
 なんか、みんなの目付きが違う、燃えた何かの目だ。やる気というか、そう言う物に満ち溢れた感じだ。所定の位置についてもらい、ただしマイクはない。さっきの音の理論だと実は”人間の体”はちゃんと音の障害要素だ。本来はマイクを側に歌いやすい範囲で高性能な物を置く、が、今回は曲の一発撮りなので、発音の魔道具を中心に全員が部屋の中央に並んでもらった。これでいいはずだ。え、全員の前に一個ずつ置いて編集すればいい?…いやその編集ができないんだよ。だから一発撮り以外使えない。そう言う意味ではこの辺は魔法のほうが不便だ。そう説明している間に、ミラージェも私も録音用の発声魔道具を量産する、大体20曲分ぐらいあるからだ。
「行くぞ!コンちゃん、」
 私は発音の魔道具に魔力と意志を流す、これが録音方法だ。そして、付与された者が淡い光を放ち、スタートする。

 みんな一緒に踊りましょー。

 みんな一緒に踊れば―。

 みんな一緒に幸せよー

 みんな懐かしいあの頃をー

 みんな思い出すあの踊りの日をー

 みんな歌った祭りの日をー

 みんな騒いだ祭りの夜を―

 みんな思い出して踊るよー

 みんなみんな、踊ろうよー
 
 みんな、幸せにぃ― 踊ろうよー。

 みんな踊ろうよー、楽しく踊どろー

 ふむ…。みんなで踊りながらただ、足音さえ響かない。が曲が終わったと思ったらストップ・・・。
「いい感じだな。」
「はい!」
「さて、全部撮るぞ、それから解除したほうがいい、」
「はい、プロデューサー!」
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