魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第１９章 VS飛鳥

第７７３話 当事者が何も話さないまま踊る舞踏会

　その日の夜にこの宿屋に…イツキ、ドルカス、南の馬車と、ザガートン王都最小の乗った馬車が付いた。突然だったので、驚いて、平服はした。アランも分かっていたらしく、頭を下げてくれてよかった。
「この者が？」
　どうも上座がないので椅子に座ってもらっていた。
「そうよ、３賢者最後の一人、井原よ。千鳥万花の懐刀と呼ばれる人物よ。」
「まあな、でもなんで…。」
「住まねえ、あんたの業態を説明してここで魔法使用許可と取る必要が出たんだが…ドルカスも含め説明して欲しい。後…北部にも支店があるんだって？」
「は。」
　ここで声を上げてはいけない。上げたた無礼討ちの可能性がある、忘れてはいけない、こういう国では腐った貴族という話もあるが、大抵は”無礼討ち”が可能だ。気に入らない、グサッて事だ。それが法的に守られた相手なのだ。
「よくわからんな、そのゴーレム車を走らせることは我々もしていた筈だ、どこに問題がある？」
「大方…これ…でもどう…。」
「いや、タクシーとか正気か？」
「だからさ、説明してくれてねえか、井原？」
「というか、人員はどうするのよ？」
「人数とか、どうするんだよ？」
「そのタクシーとやらは？」
　目の前で相談しているが、私たちは一切声を上げていない、実は水木にも聞いているが、基礎的な貴族の礼儀作法を水木とアランは習っている、ここで話す事はできない。
「金を払って人を載せるんだよ。」
「まあな。おやっさん。」
「でも宿場をつなぐのって、どうなのよ、法的に。」
　思いっきり目の前で論争しているな。

　それから、なぜか２時間ほど会議をして、私は一言も発さないまま、なぜか納得して帰っていった。来た意味は何だったのか？しかもこっちの旅篭バイパス法については一切聞かないまま、お帰りだ。そっちの許可も貰えるならそっちも展開させる、人流というＤＰを逃さないためだ。
「何だったんだあれは？」
　夜も遅くなったので、討論を聞いていただけの、アランが唖然としていた。水木は頭の下げ過ぎで頭が痛そうだった。
「私も意味が分からん。ああいう時に”話す許可”なくして話すのは儀礼的にダメだ。がそれに全員が気が付いていない風だった。そしてお互い呟いた内容で納得したようだった。しかも、こっちのやりたいことは全く理解してないな。」
「そうなのか？」
「よく考えてみろ、馬車を待つに本来は一時間一本とか、短い区間にしないと使い物にならない」
　長距離深夜バスを思いだすと分かりやすい。後で聞いた話だが、ギルドにも確かに物流サービスはあった。が、発注だ。頼んでから護衛を雇い送り迎えする…

　コンコン。

　ん？
「すまないが、一泊頼めるかね。クックック、」
「…説明聞きに来た、分からん。」
　ネルさんか。やっとまともな人が来た気がするな。