上 下
767 / 1,232
第19章 VS飛鳥

第760話 素手でもできる事をする道具が世界を変える事はよくある事。

しおりを挟む
 ミヨちゃん達がリンシュメルトに向かって二日後、ギルドからの打診がついに訪れた。来たのは女性のハイエルフだった。ただネルの部下らしく。商業ギルドの受付員との事だった。
「一応…こちらが、制作予定の動力源”送風モーター”になります。」
 出されたのは一つの筒だった。
「これは?」
「実は、この動力源を開発する前に、スキュラ側にどうやって進んでいるのか聞きました。それ次第ではこれの価値が変わるからです。」
 それは理解できた、
「そうした所、かなり原始的な事だと発覚しました。」
「は?」
「まず帆船は風を受けて航行します。そして帆船以外では可動部分を上下させ、バタ足の要領で航行します。」
「え?」
「ですので、今回の件はどんな動力源を出して問題が発生すると判断されました。」
「まず聞いていいか?そんな原始的なのか?」
「最悪、船の下からオールを出して、船員が漕いでいたそうです。そうなると、どんな魔道具の動力源を出しても…利益幅が絶大だと判断されました。」
 そりゃそうだろうな。原始的以下だから船にモーター付けた近代型に直すって事だ。
「それなので、こちらを見ていただいて、いいなら、これを巨大化して作成します。」
「で、これは?」
「送風の魔法を”フィン”に取り付けつつの外側に”結合魔法陣”をいれて、それが回転するようになっています。進行方向は魔法で固定されている為かなりスマートにできたと思います。」
「分かったが、それならなんで、」
「これの価値及び能力的に…実は扱いがぞんざいになっていまして…それでネル様にお伺いを立てた後に、あなた方に価値について聞いてくるように言われました。正確には私にはこれが世紀の発明に見えるのですが…。」
「その通りだ、これは世紀の発明だ。魔力が動力になるんだからな。」
「ただ、上層部の価値的には”扇風機”程度なのですが…。」
「…分からんでもない。異世界人的にはそれも度でもないがよく考えてみて…その通りだ。」
 送風は風魔法のレベル1でそよ風を送る程度の魔法だ。使ってみると手からそよ―って感じの風が吹くだけで。価値も薄い、がこの魔法、地味にミヨちゃん含め愛好家が多いのだ。というのも風魔法の癖に”風を出す”魔法は勇逸これだけで、これ以降だと”ボルテックスエア”と呼ばれるレベル7くらいまでは風を出すだけの魔法がない。その上威力がレベルで上がり、MPを籠めれば暴風も起こせるという、最初にして始原と呼ばれる風魔法だ、これと跳ねるさえあれば何もいらないという魔法使いも多い。…ただ前に見た埃払いの魔法に大量の魔力をぶち込んであふれ出るオーラごっこをしているミヨちゃんが、地味にアホ可愛いだと思った。ただ、これにより魔法が動力に代わるというのはかなり大きい。が、これを渡していいのかは別だ。がこの価値を認めない…。
「製作者は何と言っている?」
「このくらいなら素手のほうがいい結果が出ると。」
「…これの特徴は”魔法を知らん一般人”が使える事だ。まず魔道具の基礎を学んで来いと伝えてくれ。価値に関しては、革命がおこるレベルだとな、こうなるとこっちが動力の開発をしないといけないか?」」
「…分かりました。お伝えした後、再度会議にかけてみます。」
「よろしく頼んだ。」
 …こうして帰っていくハイエルフを見て思った。私に見せたのが運の尽きだったな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

アホ王子が王宮の中心で婚約破棄を叫ぶ! ~もう取り消しできませんよ?断罪させて頂きます!!

アキヨシ
ファンタジー
貴族学院の卒業パーティが開かれた王宮の大広間に、今、第二王子の大声が響いた。 「マリアージェ・レネ=リズボーン! 性悪なおまえとの婚約をこの場で破棄する!」 王子の傍らには小動物系の可愛らしい男爵令嬢が纏わりついていた。……なんてテンプレ。 背後に控える愚か者どもと合わせて『四馬鹿次男ズwithビッチ』が、意気揚々と筆頭公爵家令嬢たるわたしを断罪するという。 受け立ってやろうじゃない。すべては予定調和の茶番劇。断罪返しだ! そしてこの舞台裏では、王位簒奪を企てた派閥の粛清の嵐が吹き荒れていた! すべての真相を知ったと思ったら……えっ、お兄様、なんでそんなに近いかな!? ※設定はゆるいです。暖かい目でお読みください。 ※主人公の心の声は罵詈雑言、口が悪いです。気分を害した方は申し訳ありませんがブラウザバックで。 ※小説家になろう・カクヨム様にも投稿しています。

前回は断頭台で首を落とされましたが、今回はお父様と協力して貴方達を断頭台に招待します。

夢見 歩
ファンタジー
長年、義母と義弟に虐げられた末に無実の罪で断頭台に立たされたステラ。 陛下は父親に「同じ子を持つ親としての最後の温情だ」と断頭台の刃を落とす合図を出すように命令を下した。 「お父様!助けてください! 私は決してネヴィルの名に恥じるような事はしておりません! お父様ッ!!!!!」 ステラが断頭台の上でいくら泣き叫び、手を必死で伸ばしながら助けを求めても父親がステラを見ることは無かった。 ステラは断頭台の窪みに首を押さえつけられ、ステラの父親の上げた手が勢いよく振り下ろされると同時に頭上から鋭い刃によって首がはねられた。 しかし死んだはずのステラが目を開けると十歳まで時間が巻き戻っていて…? 娘と父親による人生のやり直しという名の復讐劇が今ここに始まる。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 全力で執筆中です!お気に入り登録して頂けるとやる気に繋がりますのでぜひよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)

婚約破棄はいいですが、あなた学院に届け出てる仕事と違いませんか?

来住野つかさ
恋愛
侯爵令嬢オリヴィア・マルティネスの現在の状況を端的に表すならば、絶体絶命と言える。何故なら今は王立学院卒業式の記念パーティの真っ最中。華々しいこの催しの中で、婚約者のシェルドン第三王子殿下に婚約破棄と断罪を言い渡されているからだ。 パン屋で働く苦学生・平民のミナを隣において、シェルドン殿下と側近候補達に断罪される段になって、オリヴィアは先手を打つ。「ミナさん、あなた学院に提出している『就業許可申請書』に書いた勤務内容に偽りがありますわよね?」―― よくある婚約破棄ものです。R15は保険です。あからさまな表現はないはずです。 ※この作品は『カクヨム』『小説家になろう』にも掲載しています。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」

サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――

処理中です...