上 下
692 / 1,264
第17章 ドランの領地視察旅

第686話 ちょっと実力見せてみたのじゃ

しおりを挟む
「という事は…我々は今…海からの商人。大森林…大森林の傍にいるダンマス勢、人間。…そして私たちという、一個の国としてはあり得ないぐらいの敵の数となりますな…。」
 ガースが丁寧に受け答えつつ…現状を確認していた。情報の遅い徒歩の口伝えでは限界
が生まれるのも事実だ。
「と言っても、民衆に何も影響はないのじゃ、第一考えてみい、輸送に一年半もかかる…いやもっとかかるじゃろ。」
「確かに、小麦屋はそう言ってましたな。」
「そんなところに物を運ぶ時点でありえないのじゃ。」
 それも平和なうえに平原に敵も賄賂を欲する官僚もい中居ら成り立つ、
「それにじゃ、間の森林やその他にもう紛れておると考えておる、」
 大森林の中心部は恐ろしい、となれば浅層のモンスターたちが肥沃な大地である北部を目指してもおかしくないし、いずれモンスターの巣ができることは明らかだ。そして、それらは山賊化…人間との併合も考えられるが、今の3貴族独占はいずれ崩れ…独立もありうるのだ。そうなる場合儂は徳永と戦わなくてはならない。
「今聞いた話だと、大森林の序盤でてこずっている我々ではありえないほどの巨体な生き物が奥地にいるのなら、そこまで人類が増えるかさえ微妙です。」
「そのうえ、南部は、無限に物資を生む力があるのじゃ、ギルドがなくとも。」
 そう、パンダ同好会は複数のダンマスの寄り合い所帯だ。単体で勝てない敵も複数固まれば勝てる。そう言う理論だ。それが長所でもあり欠点である、ダンマスの強さ、DP生産能力は人口と満足度による。ただパンを食べ、何も考えていない人間は、ダンマス的には何にも美味しくない人間だ。感情が動かないとDPが発生しないからだ。その観点からして、徐々にゴブリンの集落などができ、もはや手遅れに近いだろう、そうなる前に手を打たないといけない。この中で北部は唯一、誰の手も付いていない”狂化可能な土地”だ
「でも…これをあの方に…。」
「無駄じゃろうな。あの馬鹿どもは大方、頭ごなしに否定するわい。直感というが、直観の多くは”経験からできた保守思考”じゃ。目の前のありえない現実を前にして砕かれかねんのじゃ。だからこそ、儂は助けるならお主たちだと思っておる、」
 これも鳥海から聞いた話だ。昔NGO職員だった鳥海からしても、どんな些細な事からしてもこの直感だよりというのは極めて”保守的な志向”を持ちがちで大抵自分の頭にないものを否定する。そして時代から取り残され、死んでいく、そして、それらの改善にはどんな説得よりも”賄賂”の方が高価が出てくる。これを上げるから、私の言うとおりにしてみて。という奴だ。ただ、これは他の国がよくやる手で、自分たちは禁止されている、そうなるとどんな素晴らしい改革案を持って来ても、何処ぞかの国が自分達の全部利益をかっさらう法律に判子が押され…自分たちは撤退せざる負えない。という事も多かったという、それ以来相手の知能を見てから、交渉を行う事にしているという、その知能に合わせた交渉が必要だからだ。
「それに、効果のない通行証などを出して、悦に浸る貴族に力があると思うかの?」
「あ…。」
「ならば、この縁を大切に育てるだけのほうがいいのじゃ、」
「あの方に送るゴーレム車は…。」
「普通のでええじゃろ。後で話が来たら、それなりの物を渡せばええからの。」
「分かりました。このワタクシもあなた様に仕えさせてもらいます。」
「うむ、それでいいのじゃ。」
「でもなんで、バルアリもこの契約に?後で契約書に名前を書かせますが…。」
「あ奴の位置が一番儂の拠点である竜尾山脈に近いからじゃ。お主に連絡する手段がない上に儂も忙しいからの。」
「…できれば一度…。」
「………考えておくのじゃ。ただここのほうが発展しておるぞ。」
 自分のダンジョンを思い出す、全員がドラゴンの住処(土の地面のみ)と後は地下の”レイドモンスター培養エリア”だけであるダンジョン(自発的な居住に任せ、餌として動物を放つだけ)では大した視るものない、それにスタンピードの首謀者だとばれるのもまずい、見せたくない。
「そう…ですか。」
「まあ…。近くの村なら構わんが…。」
「…では出発の…。」
「いや、すぐに行くぞ。」
「どういう…。」
「いでよ!ゲート!」
 そう言うと、虚空からゲートが現れ…その向こうには森林が見えていた。
「行くぞ。」
 これは地味にドランが練習していたテクニックで、まず、自分が同盟ゲートを出したい範囲に連携ダークマター+光魔法の幻影でそこの場所を見えなくした空間を生み出す、その中に同盟ゲートを生み出し、必要まで隠しておく、ここに誰かが着たら終わりだが、そこは体を張って防ぐ、そして、わざとらしいモーションを取って幻覚に演出をさせた後で、解除するという、涙ぐましい努力の上に立った、ワープゲートだった。ついでに同盟ゲートは本来ダンジョン内から同盟の他のダンジョンに入るだけのものだが、その同盟のダンジョンから自分目的地への同盟ゲートを最初のゲートから一mm向こうに作る。そうすることで、二つのゲートが重なりテレポ―としたように見せられるのだ。一回位置を変えるたびに400万DPの資金がかかり、そうそう多い回数は呼べない。そう言う意味でも…涙ぐましいのだ。

「…ここは?」
「開拓村じゃな、な?」
「はい、」
 そこまで一言も言葉を発しなかった。エルミンが頷く。
「そのすぐそばの森じゃ。閉じるぞ。」
 そう言うと、ゲートを行きと同じ方法で閉じた。
「…これは…。」
「これがダンマスの力じゃ。魔力があり、その魔法でこうして距離も無視できるのじゃ。」
「…馬鹿な…。」
「疑っておったじゃろ。証拠を見せんとの。ただしの、これは秘密じゃ。後これもじゃ、」
 そう言うとダークボックスから、2台目のゴーレム車と、閉まっておいたゴーレムを取り出す、このゴーレムは魔力を入れて、キーワードを言えば勝手にゴーレム化する”充電魔石型ゴーレム”という物だ。が、ペルオリもバルアリも…唖然としていた。
「でもこれって何なんですか?何かいろいろついてますけ―?」
「これは、イーハ商会専用”行商標準パック”じゃ。行商で各地を訪れて、その度に同じものを要求されるのでの。これに追加でいくつか商品を入れればゴーレム車の行商人の出来上がりじゃ、」
「この旗が?」
「そうじゃ。そいつがイーハ商会のマークじゃ。こいつがの。ただ、引っ込めるがの。」
 そう言うと、その旗を取り去る、そして、ダークボックスから取り出した…いらないと言われている家具や、向こうの貧困対策で不味くても買い上げた肉の加工品などを入れていく、
「今回は、肉のスープじゃの。後で村長に分けるか。」
「・・・あ、あの、これは?」
 流石にゴーレム車をポッと出すとは思われなかったのか。
「この辺なら安物じゃ。ただ金貨・・・20枚から35枚じゃったかの。このセットで。ああ、当然仕入れ値じゃからの。向こうではこの改良品が売られておってこのゴーレム車タイプは人気ないのじゃ。」
 最近は魔法に規制が入り始めたのと、魔法使いの絶対数が少ないので魔法を使わないゴーレム車に人気が出始めてきた。そこで生まれたのが”リアカー”だ。大八車とも言うが、そこに手すりがある分が違う、マルワール帝国はダンジョン化した際に街道も整備したので、路面が平坦化した。その為車輪を使った輸送が簡単になった。そこで生まれたのが少ない人数で引く、重い者はゴーレム車でいいから軽い物資用のリアカーがフェルミィの手によって開発された。これが人気となり、ダンジョンへの物資運搬の基礎となっていた。但し亜人同盟にはこれは販売していない。
「これで人気ないんですー?」
「うむ、これも実は亜人向けの奴より相当進化した、揺れないゴーレム車じゃ。ま、板バネとかは入っておらんが、ただ、向こうの考えじゃと、板バネが出るよりモンスター素材を極めたほうが、効率良い可能性があるからって事らしいがの。だから現状最高性能じゃよ、だがの、大きさもあるじゃろ、魔法使いが欲しいじゃろ、魔法使いはギルドでも少数じゃ。だからこそ、魔法がいらない、街中専用のゴーレム車…ではないか、リアカーに需要が集まったのじゃ。」
 惜しむらくは動物の楽園かと思われた千鳥万花が実は大森林南部からの特性で”動物がダンジョンから出したもの以外ほぼいない原野”という食べ物的に厳しい土地で、家畜がいないのだ。その為、人力が発展していた。いや、ダンジョンがなければ生きていけないというある意味過酷な世界だ。こっち見たく食料が大量にある…ではない、その為、手軽に使えるリアカーの量産を産業都市で作っており、ゴーレム車の生産は止め、DP生産のみとなった。
「今回は、関係者の顔合わせじゃ、ついてくるがいい。乗れ乗れ。」 
 そう言うと、全員がゴーレム車に乗り、ゴーレム車が動き出す。二人とも余りの事態に驚いていた。ゴーレム車はポンポン出る事ではないし、資産だと思ったら向こうにとって貴重でもない、という感じになったのが、意外だったのだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

そんなにホイホイ転生させんじゃねえ!転生者達のチートスキルを奪う旅〜好き勝手する転生者に四苦八苦する私〜

Open
ファンタジー
就活浪人生に片足を突っ込みかけている大学生、本田望結のもとに怪しげなスカウトメールが届く。やけになっていた望結は指定された教会に行ってみると・・・ 神様の世界でも異世界転生が流行っていて沢山問題が発生しているから解決するために異世界に行って転生者の体の一部を回収してこい?しかも給料も発生する? 月給30万円、昇給あり。衣食住、必要経費は全負担、残業代は別途支給。etc...etc... 新卒の私にとって魅力的な待遇に即決したけど・・・ とにかくやりたい放題の転生者。 何度も聞いた「俺なんかやっちゃいました?」       「俺は静かに暮らしたいのに・・・」       「まさか・・・手加減でもしているのか・・・?」       「これぐらい出来て普通じゃないのか・・・」 そんな転生者を担ぎ上げる異世界の住民達。 そして転生者に秒で惚れていく異世界の女性達によって形成されるハーレムの数々。 もういい加減にしてくれ!!! 小説家になろうでも掲載しております

異世界なんて救ってやらねぇ

千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部) 想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。 結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。 色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部) 期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。 平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。 果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。 その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部) 【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】 【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

魔力0の俺は王家から追放された挙句なぜか体にドラゴンが棲みついた~伝説のドラゴンの魔力を手に入れた俺はちょっと王家を懲らしめようと思います~

きょろ
ファンタジー
この異世界には人間、動物を始め様々な種族が存在している。 ドラゴン、エルフ、ドワーフにゴブリン…多岐に渡る生物が棲むここは異世界「ソウルエンド」。 この世界で一番権力を持っていると言われる王族の“ロックロス家”は、その千年以上続く歴史の中で過去最大のピンチにぶつかっていた。 「――このロックロス家からこんな奴が生まれるとは…!!この歳まで本当に魔力0とは…貴様なんぞ一族の恥だ!出ていけッ!」 ソウルエンドの王でもある父親にそう言われた青年“レイ・ロックロス”。 十六歳の彼はロックロス家の歴史上……いや、人類が初めて魔力を生み出してから初の“魔力0”の人間だった―。 森羅万象、命ある全てのものに魔力が流れている。その魔力の大きさや強さに変化はあれど魔力0はあり得なかったのだ。 庶民ならいざ知らず、王族の、それもこの異世界トップのロックロス家にとってはあってはならない事態。 レイの父親は、面子も権力も失ってはならぬと極秘に“養子”を迎えた―。 成績優秀、魔力レベルも高い。見捨てた我が子よりも優秀な養子を存分に可愛がった父。 そして――。 魔力“0”と名前の“レイ”を掛けて魔法学校でも馬鹿にされ成績も一番下の“本当の息子”だったはずのレイ・ロックロスは十六歳になったこの日……遂に家から追放された―。 絶望と悲しみに打ちひしがれる……… 事はなく、レイ・ロックロスは清々しい顔で家を出て行った。 「ああ~~~めちゃくちゃいい天気!やっと自由を手に入れたぜ俺は!」 十六年の人生の中で一番解放感を得たこの日。 実はレイには昔から一つ気になっていたことがあった。その真実を探る為レイはある場所へと向かっていたのだが、道中お腹が減ったレイは子供の頃から仲が良い近くの農場でご飯を貰った。 「うめぇ~~!ここの卵かけご飯は最高だぜ!」 しかし、レイが食べたその卵は何と“伝説の古代竜の卵”だった――。 レイの気になっている事とは―? 食べた卵のせいでドラゴンが棲みついた―⁉ 縁を切ったはずのロックロス家に隠された秘密とは―。 全ての真相に辿り着く為、レイとドラゴンはほのぼのダンジョンを攻略するつもりがどんどん仲間が増えて力も手にし異世界を脅かす程の最強パーティになっちゃいました。 あまりに強大な力を手にしたレイ達の前に、最高権力のロックロス家が次々と刺客を送り込む。 様々な展開が繰り広げられるファンタジー物語。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...