魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第１７章 ドランの領地視察旅

第６６４話 高級外車で威圧なのじゃ

　ゆっくりとゴーレム車を寄せていくと、そこに並んでいた人たちは数人いたが、道を譲った。それはそうだ、ゴーレム車である、巨大な動物にひかせたように見えるその荷車（革の幌付き）は見た目よりごつい、その御者台には、ドランがたずなを引き、その脇をエルミンが見据えていた。当然門番も武器を構え、門の前に立つ、但し門は閉じられない、中世の門の多くは”門が重すぎて、先ぶれで命令なしに閉じた場合、開けなくなる恐れがある”なので門を閉じることができなかった。
「何用だ。」
「私、エルミン商会という物です、できれば。」
「…許可書とかあるか？」
「東部では普通にいるので…それに事前発行が必要なら、国境の段階で…。　」
「東部か。」
　門番が嫌そうな顔をする、何かあるようだ。
「東部から、かなり上質の渡来物を持ってきた。できれば売れる場所とかあれば…。」
「少しお待ちいただけないだろうか…。」
　門番たちのうち体長らしき数人が、その場を離れ、カチカチに緊張した
『お移動する、東部のゴーレム車持ち商会なんて大物、エルミン商会なんて知っているか？』
『あの顔…前に見た気が…しないでもないが…。』
『偽物だというのか？』
『いやいや、でも…。』
　ドランはじっと聞き耳を立て、伺っている、スキル：検索の特殊な使い方であの兵士の今喋っている内容を”検索”して、自分の耳に聞かせているのだ。こうやってダンジョンバトルでの相手の作戦を”検索”して、対策を立てるのがドラン流の戦闘法だ。
『ちょっと行ってくるわ。脇にどいてもらえ。できないなら…。』
『分かった。早く頼むぞ、』
「ふむ、ゴーレム車にどうもブランドができてろうようじゃの、」
「そうです？」
　こういう、演技しているときのエルミンはちゃんと普通の言葉が喋れるが、そうでない時が抜けて、言葉の一部が抜ける。
「さて、もう少しじゃぞ。」
「すまない、これは？」
　ちらっと脇を見ると、先ほど並んでいた数人が珍しそうに見ている、
「そう言えば、まだ北部で使われていないのですね、これがゴーレム車です、」
「これが噂のか…。」
「そんなにですか？』
「ええ、南部と北部の一部、後…西部で見た限りですね、東部であるのなら、かなり広まっているのでは？」
　どうも、こっちを見てかなり…商売相手として伺っているらしい。…ゴーレム車を導入済みか。いいか悪いか除いて知名度は高い手見ていい。という事は相手はこっちを”大商会”と見ているって事か。大商会って事は当然”貴族”とつながりがあることが多い、
「すまないな、そこの物、少し脇にどいてもらえないか。お前たちの」
「それが、この車、見ての通り、前か後ろが限界なので…。」
「なら、そのままでいいな、お前たちの方から審査を行う、こっちに来てくれ。」
「お嬢さんたち、」
　そう言うと、並んでいた数人たちの、見た感じ商人だろうか。彼らが去っていく、そして、鳥の音が響く…いや、遠目に聞こえる中、儂たちが日向ぼっこをしていると、一人の男性が帰って来た。
「領主様からの命だ。ちゃんと伝える、一応普通の商人として扱う。商人は人頭税銀貨２５枚だ。それはまけられない。」
　ちらっとエルミンが見てくるが、頷いた。実際銀貨の払い出しだけで言うと。村の毛皮３年分にもなる大金を吹っかけてきた。が、ここで払えないというと問題がある、
「では皆様の目の前で置いて、確認の上で出させてもらいます、」
　エルミンは前に出ると、ダークボックスから銀貨を取り出し、慌てて兵士が手を差し出す、普段はこういう事をせずに、すっと出すのだが、大方エルミンからすれば苛立ったのだろう。わざと一枚ずつ置いて２５枚分を払った。
「う、うむ。では通るがいい。」
「では。」
　…面倒だ、確かに今まで村に行くにこれ見よがしにゴーレム車で荷物を運んできたふりをしていたが。こうなるならやめておいても良かったのでは？ここに来ての情報の少なさに自分への苛立ちを感じてしまった。