魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

第１５章 オペレーション：ハッピードライブ

第６０５話 取り込まれるという事。（音無視点）

「やっぱり森林探索苦手。」
「ですね。」
　音無がダークボックスから鉈を取り出し、振り回している、
「偵察隊の見立てだと、この先が開いてるからそこでね。」
　後ろには奥原たちダンマス勢がいた。
「でも本当に懐かしいな。」
「３か月もたってないけど…。」
「………うん…。」
「そだけどさ。」
　少し歩くと、草だけの…草は少し深いが、それでも開けており、空が見える。
「いいぞ、このへんで休憩だ。…野営か？」
「私たちは手を抜いていいから。ここで一泊しましょう。」
　そう言うと、奥原が出てくると、影が広がり…一軒の家が現れる、
「本当に便利ね。それ。」
「みんなのために開発したこれ…。使えたの？」
「それがね…。」
「少し話そう、あまり芳しくない。」
　飯垣の顔は、少し…疲労の色がにじみ出ていた。

　ダンジョンのテスターとして従者を一人付け奥原たちと別れた音無たちは、数件のテストを行い…。その後、リンシュメルトに…監禁に近い形で与えられた居住区で生活していた。
「豪勢な家ではあったんだけどね。」
「パーティの件でな…。」
　音無たちは別れた際に”パーティ”を解散せず、奥原たちをパーティのままにしておいた。
「どうも連中は監視役を付けたいという意見は納得した。が、な…。」
「そうだよ、せっかく奥原ちゃんたちと別れる真似はしたくないから。」
　葉隠も一緒に頷いている、
「パーティは６人となり、誰も入ることができなくなった。」
　音無のパーティは、勇者音無、サモナー葉隠、賢者飯垣、ラクシャーサ、奥原、陽華の６名であり、パーティの最大も６名である、
「それが動もハイエルフ達の怒りを買ったみたいでね…。」
「こっちも知っているからな、向こうからすれば監視員無しで勇者を野放しにするのはだめだそうで、そうなるとパーティに誰も入れられないという、俺達は不味いって事になったらしい。」
「分からないけど…。」
　奥原が家というか、小屋にある、テーブルにパンケーキ（リンゴジャム付）を置いていく。この小屋は、井原が”ダークボックス専用セーフハウス”として開発した”山小屋”というコンセプトで作られた小上がり付きの和風の山小屋だ。靴を脱ぎくつろぐスペースと離れに木の板の五右衛門風呂と匂いがこもらない程度に隔絶可能なトイレを備えた…ただし処理はダークボックスに入れた後に個別に捨てる必要がある、という、ひたすら重さを削った建築だ。欠点はそれでも２２０ｋｇという重さ。６人が緊急避難的に休める程度の”一部屋（布団付）”というプライバシーのない部屋である。が、その分ダークボックスで２２０ＭＰで運搬可能で外壁もそれなりに固い上に施錠可能で、夜営を立てなくていいというのが、利点だ。
「これも一回使ったきりだな…。」
「そうなんだ。」
「だから…。ちょっとね。」
「今でも監視が？」
「それもあるが…。今回の事件が何なのか、把握してない。」
「説明したほうがいいかな…今回の件は…。」
「ちょっとパジャマパーティとか…。」
「私は　仕方ない、壁を向いて寝るとしよう。」
　女性５名が和気あいあいと話す中…。飯垣一人が、申し訳なさそうにそっぽを向く。
「ごめんね。」
「いいって事だ。久々だからな、みんなは。」