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第12章 開発再び

第462話 儲かるダンジョンを作るにはダンジョンを知ろう

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 意外とというかやはりメイズは勇者に評判悪いな。でも雨か…。そう言えばもう一つお代があるな。雨のダンジョンマスターらしいダンジョンであることだ。そうなると雨が降っているダンジョンはいいな。それが特色が出ていい。後、ある程度難易度を維持しつつメイズを使わないダンジョン…何かっ無理難題な気がしてい来たぞ。でも難題も固めると解決になる場合もある、固めていこう。となると…。そうなるとやっぱり。後の高難易度ダンジョン”300m垂直飛び(改名しました)”および、その裏ダンジョン”300mピン落下”これは使ってこなかったが強風吹き荒れるダンジョンの穴を暗闇で300m魔法無しで飛び降り、黒塗りの1m×1mの階段に着地成功なら成功でそれ以外はすべて針孔行きの死亡という。ごく普通の落とし穴だ。まあ、まともな人間なら飛び込まないし、命綱も風で機能できなくしている。付けていれば風で煽られ岩壁に叩きつけられる、当然ダンジョンバトルでは外壁は”退場”が多くなるように設計されている。その辺には手抜かりなしだが、これがダンマスが楽しめるかというとそうではない。そうなると…。
「思いつかん。」
「まったくだわ。第一ダンジョン慣れした相手にダンジョンで楽しめるもの?数回やればだれでも飽きるし、緊張感も産めないわ。」
「といってもねぇ。第一どっちにも好評なダンジョンなんてぇ。」
 そう、ある意味矛盾が渦巻いている。がそうなると…やっぱりあれか、現場視察しかない。私は立ち上がると、早速王都に向かい、風切り亭を訪れる。
「ん、珍しいわね。」
「「いらっしゃいませー。」」
 最近の風切り亭はどちらかというと中堅の定食飯屋と言っていい。高級は王城近くにある鳥海経営の”シャバランチア”という…一応高級スープ店。そして濃いスープが持ち帰り可能な我がイーハ商会経営の豚骨スープというより牛コツとか、モンスター骨のスープがメインの”骨汁屋”がある。そしてこの風切り亭は値段帯も庶民に寄り添うちょっとお高い贅沢が売りにスイーツなどが味わえる店。そして元は場外の難民がいに数件ある、屋台串焼き肉の店や小麦で焼いたパンで包む”ベントー”なる料理もあるスラム食事がある。あっちは銅貨がメイン通貨だ。
「…少しいいか?」
「何よ?」
 私がカウンターに座ると水を出してくれる。ここでは水がサービスなので、それだけを飲みに来る客もある。但し大抵はいい匂いのする定食に負ける。ただし金を持っていない貧民街の人も来るので、そういう時は足りない金額分”働いて”帰してもらう事で、定食を頼むことができる。その為、ここの正規店員の数は少ない。
「音無と葉隠は?」
「あ、今休憩中。」
「そうか、中に入るぞ。」
 カウンターの水を飲み干すと、休憩室となっている事務所にノックしてから入る。
「…井原さん、珍しいですね。」
「何の御用です?}
「時間空いているか?少し視察に行くから、付き合ってくれないか?閉店後で構わない。」
「いいですけど…閉店後ですか?」
「もしかしてリンシュメルト?」
 乗る気のようだ、一応彼女たちはアルバイト店員ではなく勇者であり、バトルがメインだ。
「奥原たちにも伝えておく。ギルドカードは必須だ。持ってくるように。」
「分かりました。」
 さて、行くとしよう、魔界へ。
「え?ここは?」
「なんですか?」
 慌てるのもわかる。
「久々よね、ここ。」
「………遊び…?」
「魔界のダンジョンを研究する。その為に君たちを呼んだ。」
 実はダンジョンをいくつもはしごで視察したかったのだ。ただ、ダンジョンバトルで他のダンマスに挑めば当然こっちの”手の内”が明らかになる。なので無理だ。そうなるとインスタンスダンジョン回って様々なダンジョンを見たいが、このインスタンスダンジョンは”ダンジョン領域以外”にしか発生しない。となると、大森林南部にもできていそうだがそんなサーチをしていれば…人員の無駄なうえにあの環境だとインスタンスダンジョンができてもダンジョンが餓死する可能性がある。ので参考にならない、ならどこにダンジョンがあるかと言えばここ、魔界しかない。コースは二つあり、前に集中合宿をして確認したところ、浮遊島側でインスタンスダンジョン貸し出しサービス”なるものがあり、インスタンスダンジョンを望みの規模で借りる事ができる、その時に聞いたのが、通常側にあるダンジョン規模の話だ。一つは通称”ランク3”という初心者向けインスタンス。そしてもう一つは”ランク8”と呼ばれる。高難易度ダンジョンだ。これらは、同じダンジョンなら破壊されてもどこかに再生成されるうえに只だ。なので…。このダンジョンに潜りがっつりダンジョンを堪能したい。
「でだ、まずはここで一泊する。でないとまともに体も動かんはずだ。宿に泊まって二日待つ。」
「え?二日?」」
 葉隠たちの目が点になっているが、時間が惜しい。出入口のゲートは浮遊島のほかに。魔界の通りのど真ん中の噴水前に来ている。確か近くに…それなり高級宿があるはずだ。
「まずは寝る。お前ら仕事終わりだろ。このままダンジョンに行ったら死ぬぞ。」
 徹夜明けの辛さは私が一番知っている、設計図を引いた次の日の朝の現場のテンションの辛さは苦いほど知っている。
「まずダンジョン行くんですよね。寝たら終わりじゃあ?」
「宿についてからってどこに行くの?」
「そこだ、前の宴会やったホテルだ。」
 この魔界でのホテルは中世ファンタジー的にいう高級宿で”ギルド直営店”だ。まあ、大都市がここにしかないためか。宿屋があるだけだ。後はシオバニラとか言う都市があり、そこは観光都市だ。ここの売りはホップの効いていないエールと、モンスター肉の丸焼きが売りだ。ついでにここにした理由は…大浴場が併設されているからだ。これ重要。
「いいんですか?」
「いいのよ、でも井原、期限は?」
「最近販売されたこれを使った。安いらしいが、結構高くてな。」
 取り出したのは…テストパターンという事で貰った。”魔界ハープパスポート”という、6時間チケットだ。これでもこっちでの120時間(五日)なので、一日二日寝ても十分向こうの始業時間に間に合う。どうも魔界の利用数がチケットの販売に反比例して少ないらしく、てこ入れを考えているらしい。そう言えば、周回する必要があったな。クラウドドラゴン。
「5日だ。但し前二日。後一日は休暇に使う。実質一泊二日ダンジョンだ。二日以内に準備しておけ。」
「…えっと明日も開店ですよね?」
「うん、まあ、後で説明するわ。」
 奥原が諦めながらも全員で宿に入り…風呂も堪能した。ついでにダンジョン以外だと、風呂の概念はまだ広がっていない。というのも温泉の発見も無ければ、”風呂容器”の発明もない。ので風呂は一般的ではない。ついでにマルワール帝国でも、リンシュメルト…あそこはアパートに風呂が常設されているが地方都市にはない。陶器の開発や”金属版”の普及が必須なのだ。まだまだ遠いな。

 次の日にツルテカになった…女性陣はウキウキしながら、魔界都市買い物ツアーに出かけた。字面だけ見ると非常にまがまがしいが、こっちは中世都市。文明もソコソコに発展しているし貯まった給料の使い先の提供としてはちょうどいいのではないかと思う。さて、私はやることがある、当然”ランク8”攻略の情報を聞き出しにここ”冒険者ギルド”にやってきた。
「ふむ…。」
 この冒険者ギルド本部だけは実は”酒場系”ではなく銀行型の受付カウンターだ。ちゃんと受付窓口に…鉄格子のついているタイプで、置かれた待合の木の椅子に座り、木の札を抱えた冒険者が数名舞っている。前も行ったが、カード内でモンスターの格納と販売、依頼受注、達成が全部完結するこの”ギルドカード”でこのカウンターに用があるのは問合せのみだ。床のぴっちり図られた板も込みで。アメリカ開拓時代の銀行を思い出す。
「いらっしゃいませ。こちら冒険者ギルドでございます。」
「すまないが、この周辺でのダンジョン情報を聞きたい。主に大型だ。」
「金カード様…井原様ですね。少々お待ちを…すいませんが、二階に行っていただけますが。」
 指さす先に階段がある。結構頑丈そうな階段だが、前には聞かなかったな。
「分かった。」
 二回に歩いていくと、個室の扉がいくつか見える…ここが”商談室”か。
「こちらに。」
 …ん?ハーリスさん?
「ようこそいらっしゃいました。こちらに。御用を伺います。」
 意外とハーリスさんは神出鬼没だな。誘われるままに中に入る。
「先日はお招きいただき感謝いたします。」
「いえいえ、あの程度でいいのなら。」
 ビジネス的な会話になるが。名刺が無いのが悔しいな。
「先日の魔道具はコピー禁止が付いていたので…。」
 一応あれはダンジョンでコピー時に”売買禁止、コピー禁止”を設定しておいた。
「コピーされると、あの歌声のついた”結晶”の方も取られるのでね。構造はともかくあれくらいなら簡単だからな。」
 一応けん制しておく。実際あのボイスオルゴールはDP生産時に付与したミヨちゃんたちの歌までコピーできたからだ。それに価値はないと思うが、
「確かに、で、今回は?」
「この近くにある”ランク8”の視察を行いたい。」
「…これに関しては二方面から注意をいたします。一つは魔界法則的には一度攻略されると、2回目は必ず強化されます。なので攻略の際には注意を。」
 それは聞いたことがある。
「そしてもう一つ、冒険者ギルド側としてはこのランク8”魔王の巣窟”は実は攻略推奨はしていません。」
「どういう事だ?」
「鋳潰すのを含め、あのダンジョンからは金属装備を付けたゴブリンやオーガ、そして獣人が出ます。その為鉱山的な位置づけで。この国において最重要施設になっています。なので、もし”ダンジョン攻略時”にはこの国から追われる可能性が高いです。なので、行く際には何階に行くのか、又は現在位置を定期的に確認することになっているそうです。」
 食肉ダンジョンと一緒だな。でもコアを破壊…って何かあるのか?
「相手もあほじゃない、隠すだろ?普通?」
「インスタンスダンジョンはそう言う知恵はありません。コアは最後の部屋で正々堂々光って人間の高さに存在します。なので、飼殺す際はその部屋に行かない…が重要なのです。」
「そう言うものか。」
「はい。これは検証した結果です。なので、ギルド側も飼殺して、吐き出させている最中ですね。」
 武器防具ねえ…。確かにゲームにおいてお宝は重要だ。そう言うお宝に胸馳せるのもいいな。ただ予定されたケイブのモンスターには欠点がある。フロアがランダムな事と偏にフロア数の割に弱いモンスターを出すのが嫌いだ。ボーナスゲームではいかんよな…。
「後、その魔王の巣靴に関する情報を買おう。できるだけ出してくれ。チョンボしないためにな。」
「分かりました。少々お待ちを。」
 どうも思ったより複雑な事になっているようだ。
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