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第12章 開発再び

第436話 視察は時々するレベルだと顔を忘れられます。

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 久々の流れ者の村の…もう街だろうか、の散歩をしている井原としては、かなり人通りが多くなり、産業が育つさまに…ちょっとした感動を覚えていた。最初は焼き討ちか、逃げ出した廃屋に住む20人という感じだが、今は、見渡して、見渡しきれないほどに建物が、碁盤目状に並び、商店が活気を見せている。マルワール帝国の直轄地では貴族商売制を取っているが、地方ではその貴族の権限のもと、商売や税金の設定は自由となっている。但し国は支援は行わない。直轄地が存在しているものの基本貴族の権利はかなり大きい。辺境公として働くモアレたちはその辺境公として・・。
「やっぱりこう…。」
「お姉ちゃん。引っ張り過ぎ。こっちにも。」
 いやあね。その辺境公姉妹がこうして両腕に張り付いていると、普通のカップルに見えない事もない。
「すまない、二人とも。視線が恥ずかしいから。離れてくれないか?」
「いや、イーハ。それはよくない。まずこうして既成事実をだな。」
「お姉ちゃん、キスは私からって。」
 だめだこれ。ただ寂しいのは理解できる。クラウドドラゴン戦や水木の支援。ドラン関連で村に行く時間もなく、ずっとダンジョンに籠って頭脳作業だったのだ。その間この流れ者の村は彼女たちの手と…ファーミィの手助けで、街というまで成長したのだ。
「まず、体格の問題で歩きにくい。」
「う…。」
「そのうえ、地味に汗かいてないか?湿っぽいぞ、腕が。」
「ぐぐ…。」
「それにだ。両脇固められると、向こうに行きにくい。」
 右方向にある家具工房を指さす。今日は久々に家具の出来から、家のイマジネーションを鍛える日なのだ。この辺りは木が多く、結構大きく太い木が多い。その為無垢材や一本づくりのかなり高品質の家具や、建築用の柱の製作が可能だ。そこでいきなり建築用の柱の切り出しとかは…。工具もないので、まずは黒曜石の工具を作り、一人で製作可能な家具の製作を覚えさせた。飾り彫りや筋交いなど、ある程度の技法を教え…今では村の産業の一つの”皮なめし工房”の横に作ったのだ。これで魔物の革を使ったソファーや革製品。そして防腐処理を行った皮による
革張り家具の製作をさせていた。これらの非常に見栄のいい家具は一本無垢の家具はともかく、端材で作った家具は魔物や動物の革が地味に余るのもあって安く作れて高品質。それが人気で最近では香草肉の村から、家具の村に変わりつつある。
「家具か?」
「お姉ちゃん。そこは嘘でも”え、行きましょう”って。」
「だからな。離れてな。」
「ぐぐぐ。仕方ない。」
 ようやく二人が放すと、街並みを見つつ、家具工房に入っていく。中は職人たちが…職人・・・職人・・・・職人…多いな。
「おおー、魔導士様。どうしました?」
「久々に様子を見に来たんだよ。できれば数点買おうかと思ってな。」
「誰です?」
 村人の弟子らしい数人が訝し気にこっちを見る。最近来てないのと…。最初からいる村人はともかく、そうでない場合、モアレたちの顔は覚えていても私は地味で…。知らない者がほとんどだ。それだけこの村に来た人間が多いって事だ。
「そこにいる今にも切りかかりそうな、領主様の友だ。」
 後ろを見ると、剣に手をかけ顔を赤くしているモアレと、必死にその剣を抜かせまいと、抑え込むポアンの姿があった。
「す!すいませんでした!」
「こっちは構わない。な、領主様。」
「イーハ。それは嫌味か?}
「ま…。」
 何を言おうとしているのか分かったので、鋭い目つきで、無理矢理次の言葉を止めると…。周囲を見渡す。確か前に来た時は弟子が数人いただけで、工場全体に…かなり作業エリアが狭そうだ。
「これは?」
「ああ、魔導士様。各地で有名らしくてな。それで…弟子入りの人間が増えて。で、こうして気に入った人間を育てていますが?」
 工場長は床に座って作業している職人たちに手を挙げ、それにあいさつをしていく。手慣れているようで…いやこれは取引先と勘違いしているな。家具工房は基本的に職人がたくさんいるだけで石造りの硬い床と、道具が置いてあるだけで、ラインとか工業機械はない。分業化も視野に入ったが、それには大量に売れる固定商品が欲しい。この家具工房では私を含め様々な注文が大量に来る。寸法も聞いてからは買って作る感じだ。なので、まだ分業化とか、そう言う段階にこの工場はない。がひしめく職人は事故が起きかねんな。これ。
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